登記もろもろ覚え書

司法書士の覚え書き

不動産の売買契約書や領収書は大切に保管しよう

2012-09-24 | Weblog

所有している不動産の売買契約書が大切なのは当然ですが
そういう問題とは別に
売却時にその売買契約書や領収書が大きな意味を持ってきます。




不動産を譲渡したときに譲渡益(もうけ)があると
譲渡所得税が課税される。

譲渡所得の金額は、
土地や建物を売った金額から
取得費や譲渡費用等を差し引いて計算する。

※取得費
土地:買い入れたときの購入代金や購入手数料などの合計額。
建物:購入代金などの合計額から減価償却費相当額を差し引いた額。



実際は、購入時の売買契約書、領収書等をもって
「取得費」を証明することになる。


取得費を証明できないときは、
例外として売却代金の5%を「取得費」と
することができる(概算取得費)。


というか、
5%しか認めてもらえない!
売買代金の95%に所得税、住民税が課税されてしまうことになる。

つまり
取得費をこちらで証明できない場合は、
譲渡益のあるなしにかかわらず、
買値の20倍の価額で売れたものとして
税金を納めなければならなくなる、のである。


たとえば
3500万円で購入した土地を
3000万円で売却した場合、
実際は損して売っているにもかかわらず
2850万円の譲渡所得があるものとして
課税しようというのである。


だから、売買契約書やもろもろの領収書は
その不動産を手放すまで
絶対に処分してはいけない。



もっとも、自分の買った不動産の売買契約書を
処分する人はあまりいないと思われる。

では、不動産を相続したり、相続時精算課税制度などを利用して
贈与を受けた場合はどうだろうか?

他人の契約書だと思って不要なものと考えてしまうのではないか?


不動産を贈与や相続によって取得した場合は、
その「取得費」は、
死亡した人や贈与した人がその土地建物を買い入れたときの購入代金や
購入手数料などを基に計算する。


つまり、贈与者や被相続人(故人)のもっていた売買契約書や
領収書がそれを証明することになる


したがって、
故人の遺品を整理する際に
不動産の売買契約書や不動産に関する領収書を見つけたときは、
相続登記完了後の登記識別情報(権利証)と一緒に
保管しておくことをおすすめします。



※マイホーム(居住用財産)を売ったときは、
所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで
控除ができる特例がある(H24.4.1現在)。

※取得費が不明な場合に、概算取得費によらず
「市街地価格指数」や「着工建物構造別単価」をもとに
取得費を算定するという方法もなくはないようである。




合筆の条件

2012-09-19 | Weblog

土地家屋調査士の職域になるのだが、
合筆したい、という相談が時々ある。



たとえば
区分けして売るつもりもないのに
なぜか自分の敷地が3筆に分かれていたりすると、
登記記録を調査するにしても
登記事項証明書をとるにしても
3物件分の印紙を支払わなければならない。

抹消登記をするにしても
1筆なら1000円ですむところ
3筆あると3000円になってしまう。
司法書士手数料も高くなってしまったりする。

それなら一筆にまとめてもらったほうが
いいんじゃないか、ということである。



自分の土地なんだから
くっつけるのも切り離すのも自由だろう
とお思いの方もあろうが

実は、合筆できる場面は意外に限られているのである。


【不動産登記法41条】

1 相互に接続していない土地は合筆できない

2 地目、地番区域が相互に異なる土地は合筆できない

3 表題部所有者、所有権登記名義人が同一でなければ合筆できない

4 表題部所有者、所有権登記名義人の持分が異なっていたら合筆できない

5 所有権登記のある土地とない土地とは合筆できない

6 所有権の登記以外の権利の登記がある場合は合筆できない

例外

たとえば、抵当権、質権、先取特権につき
登記内容や受付番号が全く同一であれば合筆できる。



結論を単純に考えると、
登記簿の記載のうち「地番」と「地積」以外の内容が異なっていたら
合筆は難しい、ということになる。



しかし、逆に言えば

・地目が異なっていたら、地目変更すれば合筆できる

・所有者の住所が異なる場合は、名変をすれば合筆できる

・所有者が異なっていたら所有権移転登記をすれば合筆できる
→所有権の取得原因が異なっていても(売買、贈与など)合筆できる

・所有者の持分が異なっていたら持分移転(更正)すれば合筆できる
→所有権取得の経緯が異なっていても合筆できる

・追加担保の場合は合筆できない
・借換をすれば合筆できる


ということになると思われ、
実は合筆の問題は司法書士の職域にも密に関連してくるのである。