登記もろもろ覚え書

司法書士の覚え書き

弁済後も放置していた抵当権の抹消

2011-10-27 | Weblog
抵当権は、債務の消滅と同時に消滅する(附従性)

債務を完済すると抵当権の登記も効力を失う

しかし、抹消登記を申請しないと、登記の記録は消えない

担保付きという外観が残っているので、売却や新規借入が困難

遅かれ早かれ、抵当権の登記は抹消しないわけにはいかない



完済後、抹消登記を放置してしまった場合(銀行等、金融機関の場合)


1 金融機関から渡された書類がない場合

金融機関に相談して、必要書類を再発行してもらうしかない。



2 金融機関から渡された書類が残っている場合

・設定契約書(=抵当権の登記済証)
・解除証書、弁済証書等
・金融機関の委任状
・委任状に押印された代表者の資格証明書


問題になるのは、委任状に押印している代表者である。

1)当該代表者に現在も代表権限がある場合

→現在の資格証明書(代表者事項証明書等)を添付すればよい。


2)当該代表者の代表権限が既に消滅している場合

現在の代表者による委任状等を再交付してもらえば問題ないが、
古い書類を使って抹消登記をすることもできる。



→当該代表者が代表権を有していた時期及び代表権限が消滅していることを
退任の記載のある閉鎖登記簿謄本、履歴事項証明書等で証明する必要がある。
この証明書は、作成後3ヶ月を経過しているものでもよい。


※なお、登記義務者として申請書に記載するのは、現在の代表者であり、
よって、現在の代表者事項証明書等も添付するようである。



(参考)

登記申請の代理権が消滅していない場合の
申請書の添付書類について
(平成6年1月14日法務省民三第366号通知)

※委任による登記申請の代理人の権限は、
本人の死亡、本人たる法人の合併による消滅、
本人たる受託者の信託の任務の終了又は
法定代理人の死亡若しくは代理権の変更又は
消滅によっても消滅しない(不登17)





休眠抵当権の抹消(抵当権者:個人の場合)

2011-10-11 | Weblog
休眠抵当権の抹消
(昭和63年7月1日民三第3499号依命通知より)

→抵当権者の行方が知れない古い抵当権を、所有者だけで抹消する方法


事例
抵当権設定
明治32年1月25日登記
【原因】 明治32年1月25日金円借用証書により設定
【債権額】 金30円
【利息】 年1割2分
【抵当権者】 個人



調査1 抵当権者の行方を捜す...

抵当権者の登記簿上住所に、配達証明付き郵便で
受領を催告する手紙を出す。

到達しない場合は、手紙が戻ってくる。

登記義務者の行方不明を証する書面となる。



1.抵当権者が存在する場合

抵当権者との間で、弁済や解除などを原因として抹消登記をする。

2.抵当権者が死亡している場合

(相続が生じた後に弁済をしたのであれば)
相続を原因とする抵当権移転を経て抹消登記をする。
移転登記により登記識別情報を提供できるので本人確認情報不要。



3.抵当権者が行方不明の場合 (依命通知の事例)

被担保債権の弁済期から20年を経過していれば
20年経過後に、債権・利息・損害金の全額を供託して
所有者が単独で、抵当権を抹消することができる



調査2 弁済期はいつか

昭和39年法律第18号による改正前の不動産登記法に基づいて設定された抵当権の場合、もともと弁済期が登記されていたにもかかわらず、その後の移記、転写により省略されてしまっている。
→移記、転写前の閉鎖登記簿謄本を提出する。

※閉鎖登記簿謄本に弁済期の記載がない=弁済期の定めがない
→債権成立日(登記簿上明らかでない場合には担保権設定の日)を債権の弁済期とする。


移記、転写前の閉鎖登記簿謄本が廃棄済となっている場合は、債務者の申述書(印鑑証明書つき)等を提出して証明する。

昭和39年改正法施行後に設定された抵当権の場合
→登記簿から、弁済期を確認する余地がないため、債務者の申述書(印鑑証明書つき)等を提出して証明する。





調査3 供託金はいくらか

債権、弁済期までの利息及び弁済期の翌日から供託日までの損害金の全額を供託しなければならない。
(第4号様式(第13条第1項関係)その他の金銭供託の供託書)


※債権とは、登記簿に記載されている債権である。

①登記に利息、損害金の定めがない場合
→年6分の割合による利息及び損害金に相当する金銭を供託する。

②登記に利息の定めだけがある場合
→その利率による利息及び損害金に相当する金銭を供託する

③登記に損害金の定めだけがある場合
→年6分の割合による利息および定められた利率による損害金に相当する金銭を供託する。


※供託金額は、このプログラムを使わせて頂きました。
http://www5.wind.ne.jp/simiz/sihou/paso01.htm

なお、供託所でも金額を計算してくれますが、結果はピタリでした。
利息損害金は、小数点以下4桁まで出すそうです。




供託手続き

【供託者の住所氏名】
【被供託者の住所氏名】登記簿上住所=配達証明付き郵便の住所
【供託金額】今回の事例では436円
【法令条項】民法494条
【供託の原因たる事実】省略
【供託により消滅すべき質権又は抵当権】供託の原因たる事実中に記載した抵当権
【備考】通貨の単位及び貨幣の発行に関する法律台3条による。


登記申請手続き

【原 因】 年月日弁済(供託金払込の日)
【権利者】 所有権登記名義人 (所有者)
【義務者】 抵当権の登記名義人(抵当権者)

【添付書面】
登記義務者の行方を証する書面
債権の弁済期を証する書面
債権、利息及び損害金の全額を供託したことを証する書面

※供託書正本を登記原因証明情報とするために、「供託の原因たる事実」欄に、担保権の登記の表示(不動産、債権及び抵当権の各表示)を記載すること。