エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

岩宿の発見

2009-09-30 | エッセイ
【岩宿の発見 表見返し】

今朝の朝刊の一面に「日本最古の旧石器か」と載っていた。島根の砂原遺跡の12万年前の地層から発見されたという。まさしく刃に加工したような小石の写真だ。専門家によると、石器か自然石かの可能性は半々らしい。

 相沢忠洋著の「岩宿の発見」を思い出した。そして、拙著のエッセイ集を開いた。20年も前の秋の深まったころに岩宿遺跡を訪ねたときの一文だ。そう言えば、そのころ発掘ねつ造事件で大騒ぎだったことが浮かんできた。

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念願の岩宿遺跡を訪ねる
 北西の赤城下ろしが吹き始めた頃、念願の岩宿遺跡を訪ねた。戦後まもなくの頃、相沢青年がそれまで未知の地層であった関東ローム層から石器を発見した。これは日本にも旧石器時代があったことを示す一大発見であった。静まりかえる丘陵の切り通しの石器発見場所に立ち落ち葉を踏みしめた。そして二、三万年の昔、ここで石器をつくり狩猟に明け暮れた家族を思い、その団らんに思いをはせた。相沢青年が赤土の崖面から発見した黒曜石の槍先形の石器は、いまなお美しく神秘的に輝いている。
 小旅行から戻り、学生時代の感動を求めて三十数年ぶりに「岩宿の発見」を読み返した。恵まれない生い立ちの一青年の、考古学への豊かなひたむきな情熱が新鮮に蘇ってきた。と同時に、最近の旧石器発掘ねつ造問題の取り返しのつかない罪を思った。この耐えられなくつらい出来事を知ったら、今は亡き相沢さんは何と嘆いたであろうか。  (2001.11)          *************************************
        
ふたたび、10万年も前に石器をつくり狩猟に明け暮れたであろう家族を思い、その団らんに思いをはせた。


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