澎湖島のニガウリ日誌

Nigauri Diary in Penghoo Islands 澎湖島のニガウリを育て、その成長過程を記録します。

「霧のカレリア」(Karelia)の原曲を見つけた!

2012年02月11日 21時18分51秒 | 音楽・映画

 1965年、スウェーデンのインストルメンタル・グループ「ザ・スプートニクス」(The Spotnicks)がヒットさせた「霧のカレリア」という曲を覚えている人もまだ多いはず。
 この曲は、メインのメロディーの他に、間奏部分でロシア民謡「トロイカ」が挿入される。「トロイカ」は有名な曲なので、ここで採り上げるのは、メインのメロディーについて。

 映画「カサブランカ」(1942)の酒場のシーン。よく知られる映像だが、そのバックにはこの「霧のカレリア」のメロディーが流れる。第二次世界大戦中に「反ファシズム」をテーマに作られた、ある種のプロパガンダ映画であるから、流れる音楽にもそれなりの意味が込められているはずだと思った。実際、オーケストラが演奏する「カサブランカ組曲」では、フランス国歌「ラ・マルセエーズ」が挿入されている。反ファシストのフランス・レジスタンス運動を取り扱った映画なのだから、これは当然のこと。酒場の音楽は、当然、年代から考えて「霧のカレリア」の原曲ということになる。

 米国映画「カサブランカ」(1942年)

 ネットはやはり便利だ。長年、気になっていたこのことが、一気に氷解した。
 まず、「霧のカレリア 原曲」で検索すると、「ロシアの声 ハバロフスク局制作番組」※に辿り着き、「スプートニクスでお馴染み「霧のカレリア」の原曲は「馭者よ馬を駆らないで」っていうことも知りました」という記述を見つけた。
※ http://members.jcom.home.ne.jp/dialkid/vericard41.htm

 さらに「馭者よ馬を駆らないで」を検索すると、「女性合唱団 チャイカ」というHP※へ。

※ http://sea.ap.teacup.com/chaika/341.html

 ここには次のような解説があった。

哀愁を帯びたロマンスの名曲!
御者よ、馬を急かすな!
Ямщик, не гони лошадей            

       
♪ はるか道遠く
  夜霧につつまれ
  わびしい鈴の音
  胸せまる夜よ
   馬を急かすな御者
   静かにかけゆけ
   愛する人去り
   私はひとり
                 (木内宏治詞)


ロシアで大変有名なロマンス『御者よ、馬を急かすな!Ямщик,не гони лошадей!』です。日本ではほとんど知られていません。わずかに北海道合唱団が取り上げていると思われます。上に挙げたのは同合唱団発行の曲集『北方圏のうたを訪ねて』に『御者よ』のタイトルで収録されているもの。同曲集ではロシア民謡となっていますが、作られた時期も新しく、正しくはロマンスです。作詞はニコラーイ・リーッテルНиколай Риттер、作曲はヤーコフ・フェーリドマンЯков Фельдман

♪ あたりは何と寂しげで、陰鬱なことか
  わが行く道はやるせなく、憂鬱だ
  過ぎし日は夢のごとく
  傷ついた心胸を苦しめる

  御者よ 馬を急かすな
  私にはもう急いで行く所はない
  私にはもう愛する人はいない
  御者よ 馬を急かすな
                  (中島章利訳)


面白いのはこの曲は「御者よ、急げ!」という曲に対する返答歌として書かれたということです。次回はこの曲のエピソードをご紹介していきましょう。

画像/作曲者ヤーコフ・フェーリドマン。彼は20世紀初頭に生きたユダヤ人です。 『御者よ、馬を急かすな!』の曲集表紙
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《ドミートリィ・フヴォロストーフスキィ》   (「女性合唱団 チャイカ」より引用)


 この「女性合唱団 チャイカ」の記事には、「御者よ、馬を急がすな」を歌う映像が添付されているので、「霧のカレリア」の原曲が、この曲であることを確認することが出来た。ただし、この記事を書いた人は
、「日本ではほとんど知られていません」と書いているから、1965年に「霧のカレリア」として大ヒットしたことは知らないようだ。
 YouTubeを検索すると、赤軍合唱団がこの曲を歌った映像を見つけた。これは、映像を貼り付けられなかったが、下記のアドレスにアクセスすれば見ることが出来る。
 
 何故、映画「カサブランカ」の中にこの曲が流れていたのか、これで疑問が氷解した。「反ファシズム」という一点においては、あのとき米国とソ連の利害は一致していたから、わざわざロシア民謡を挿入したのだった。
 それにしても、「カレリア」は、本来フィンランドの領土だったカレリア地方のこと
シベリウスの管弦楽作品には「カレリア組曲」があることはよく知られる。この地方を武力侵略して略奪したのが、ソ連のスターリンだった。北方領土と同様、カレリア地方は今なお、ロシア領土とされたままだ。
 ソ連(ロシア)の民謡にわざわざ「カレリア」というタイトルを付けたのは、プロテストのような意味があったのだろうか。それとも、何か他に深慮遠謀が…?

※ 赤軍合唱団「御者よ、馬を急がすな」 Red Russian Army Choir -Coachman Don't Spur On The Horse →→
http://www.youtube.com/watch?v=d5S2CK_uda8

ザ・スプートニクス「霧のカレリア」

 



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