注釈の注釈による超現実詩小説
棺詰工場のシーラカンス
【167】あやふやな言波や観念が淘汰
ジョージア嬢【36】は、初心者向けの憑依文字であるTシャツを身にまとい、ケーブルテレビ【154】を楽しんでいた。活字【23】は新聞【152】の購読者【28】の中からローテーションで召集されるというのだが、友達によると、それも憑依体質があってのことなのだという。このまえ食べた煮魚【七八】で知ったのは、普段から簡単な憑依文字を身にまとい、少しずつ複雑な柄に着替えていくという方法だ。年がら年中ケーブルテレビを見続けるのもいいらしい。
「まったく、あたしくらいじゃない。活字になって一度も紙面【32】を闊歩したことないなんて。よし、明日はYシャツを着てみよう。パパなら持ってるかしら」
父親のワードローブを開けてシャツを探したが、変な覆面【222】が出てきただけだった。
「やあねえ、パパったら、こんなもの何に使うのかしら。いったいどこにあるのよう、Yシャツ。あら、もうこんな時間。〈デスマスク【175】〉がはじまっちゃう」
ジョージア嬢は慌ててテレビの前に座った。〈デスマスク〉は今最も人気がある視聴者参加番組なのだが、オーガスト夫人は娘にこれを禁じ、ペテローレ御大【72】を小人の置物の中に隠した(〈デスマスク〉が発する視線は馬並みなので、気つけ薬のペテローレ御大が欠かせないのだ)。
その後帰宅したオーガスト夫人は、テレビの前で気絶したまま倒れているジョージア嬢を発見し、そのまま気絶した。仕事から帰ってきたオーガスト先生【34】は歓喜の声をあげた。おまえたち、私を喜ばせようと、こんなにぐったりして、でかしたぞ、でかしたぞ、でかしたぞ!
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【154】ケーブルテレビ・クレイメーション
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