goo

【324】スワローさんという街娼

 熟まれながらのモデル【114】である彼女は、シワやたるみのない美しい容貌になるまでの困窮した老年生活に耐えきれず、住み込みで働きだした試着室の中で、やりてばばあとして街娼たちの商売に手を貸してしまった。このことが所属事務所にばれるやいなや質入れ【135】され、自らの身請けのために警察【197】手入れ【329】に怯えながら街で客をとるはめになったのだ。彼女が〈靴のウッシェンバッハ【323】〉に行ったのは、四度の出産を経てようやく身につけた美しさ【113】を馴染ませようと、靴を仕立て直してもらうためである。だがそこに立っていたウッシェンバッハは、彼女が妊娠【202】して自らの血肉にする予定の息子だった。靴屋【46】はかかとの磨り減り具合からでも、あらゆることを読み取るという。スワローさんの心臓が――

 

リンク元

【321】鵜

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

【323】靴のウッシェンバッハ

〈靴のウッシェンバッハ〉は、靴屋の看板につられて入ってくる渚【46】に、足のサイズを計ったり靴を合わせるふりをしながら、雄鶏の尾を醗酵させたカクテルなどの酒を靴紐の先から啜らせるバーである。注文されれば靴にカスタードクリームを注入して出すことも厭わない。かつては繁盛していたのだが、常連客であるマスター・ヤクシデ(彼はまだ気づいていないが、今や十三代目の店主である)は、何も知らない客人の馬鹿さ加減にほとほと愛想がつきて、乱暴な接客をするようになった(なにしろ連中は靴屋に入ったくせにバーでくつろいでいることを怪しみもしないのだ)。

 これまで酔っぱらって土下座までしてくれた客(土礼制度の名残であろう)が、頭ひとつ下げないようになった。ユエン家【332】の冷蔵庫から酒類をとってくる際の一悶着【327】や、気味の悪いクラゲ【328】の後始末が面倒になって酒を出すのをやめた。レジとして勘定移入してきた首切り役人【156】の首も干からびた。長年連れ添った妻も、他の男に連れ去られて出会えないままだ。今ではこれまで蓄えてきたおじぎ【163】を、店に入ってきた客を帰らせるためだけにチビリチビリと使う毎日である。

リンク元

 

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

【322】マンボウ

〈鵜飼〉【318】というスポーツが生まれるまでは存在しなかった変種である。尾ひれ【80】のついた話【78】は、なんの工夫もなく鵜【321】から吐き出され続けると膨満状態に陥り、やがては裏返って膨張し、必然的にマンボウへと帰結する。ゆったりと宙に漂うせいで試合は停滞するし、街に流れでたものは交通の妨げになったり建物にめり込んだりするので、動物介護団体【105】も動物なのか静物なのかを決めかねている。漁師にとっては貝類と同じようになんの障害もなく漁のできる数少ない魚のひとつである。ただし、鱗【259】を持たないため味は漠然としており、あまり食されてはいない。

 

リンク元

【318】なんでも鵜呑みにするような連中しか鵜呑みにしない・鵜飼

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )