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【165】愛らしさ

〈愛らしいもの〉は依存性の高さから取り締まりの対象となっており、ほとんどが医師の処方でしか手に入らない。なかでも〈かわいいもの〉は特に効能が強く、医師を通じて入手するにも十歳になるまで待たねばならない。製薬会社は誰にでも訪れる生い(おい)のおかげで、ぬいぐるみや戯画化した薬剤によって多くの収益を得ているが、闇ルートでは子供から取り上げた〈かわいいもの〉を大人相手に売りさばいており、廃人同然の中毒者を増やしつつある。また、〈野生のかわいいもの〉【173】は、相手の判断力を無化して怪我を負わせたり騙したりするため危険だという。
 平べったく丸い形状のヒヨコ【17】は、愛らしさの程度がさほど強くないため食品として購買できるが、ケーブルテレビ【154】で紹介されるときにはモザイクがかけられるので四角い物体に見えてしまう。これこそが出荷時に円化ナトリウム【13】を注入される前の真実の姿なので、テレビには何も隠せねえや、と養鶏場のマラコス氏は口癖のように言うのだった。

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【153】猫・ある種のプロセス【17】成長の早いヒヨコ

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