君嶋徹は二つの顔を持っていた。
厳密には、三つの顔と言えたかもしれない。
一つはギャンブル依存症でり、アルコール依存症である。
サラ金の借金は、親に肩代わりしてもらったことが、4度もあった。
200万円もの金額が4度も。
さらに、妻に泣きついたことが2度であり、これもともに200万円であった。
総額は?
実におろかである。
最悪なのは、親の遺産も浪費した。
当時、仕事柄で接待されることが多かった。
主に銀座、赤坂のナイトクラブであった。
帰りは、ハイヤーで取手の賃貸アパートまで送られた。
相手の業者は別れ際に、車代として徹に3万円を渡していた。
赤坂から取手までのハイヤーは無論、無料、つまり業者が負担。
ナイトクラブのホステスたちは、接待客の素性は知らないだろうが、徹を金持ちと思い込んだのだろう。
「今夜これから、どう? 愛しあわない」と微笑み自宅マンションに徹を招くのである。