結婚したナナが2年後、足立幸雄を訪ねてきた。
会ったのは帝国ホテルのロビーラウンジであった。
ロビーにありながら、都会的で落ち着いた雰囲気の店内で足立を待つナナは、藤色の和服姿で人妻の雰囲気を醸し出していた。
ミニスカートの当時とはガラリと変貌していていて、ロングの長い髪もアップにしていた。
「あなた、まだ、髭なのね。もう髭を剃ってもいいのよ」ナナはほほ笑む。
ナナの足立への多少の拘り、そして、愛人の大村みどりの関係を未だに断ち切れずにいたのだ。
「もしも、あならが良ければ、みどりと結婚してほしいの」ナナの意外な言葉に、足立はとても複雑な気持ちとなるのだ。
足立はナナへの想いを未だ断ち切れずにいて、心が揺れ動き沈黙するばかりとなる。
足立はみどりと2回、築地のナナのマンションで出会っていた。
みどりはナナより美貌の人でり、行動的なナナとは対照で寡黙な人であった。
彼女は盛岡の生まれで22歳の時に上京し、夜の世界の女となる。
銀座のクラブ「愛園」は、みどりが2軒目に働いた店で、ナナの後輩のホステスとなる。
その時期には、既に足立は「愛園」に行っていない。
足立はナナとは店ではなく、ナナのマンションでの交情となっていた。
「あんないい女と結婚」ナナへの思慕を断ち切るずにいる一方で、ナナの申し入れに、足立は突然にも期待を募らせるのだ。
「その気持ちになったら、私に連絡してね」ナナは夫とホテルで食事の約束をしていて、直ぐに席を立つ。
足立は和服姿のナナの豊かな腰へ視線を向けていた。
2年の歳月でナナはいくらか太っていたのだ。
「わたし、痛いだけで、セックスは好きになれないのね」ナナの言葉にも足立は拘る。
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