12/31(木) 16:00配信
THE PAGE
[画像]「感染状況」と「医療提供体制」の分析結果。7つの指標すべてが悪化した(東京都モニタリング会議資料より)
新型コロナウイルスの流行は新しい局面に――。感染拡大に歯止めがかからない中、英国や南アフリカからの変異株が国内で検出されるなど、これまでにない規模で広がり続ける第3波に対し、東京都のモニタリング会議は危機感をあらわにした。今年最後の会議となった30日には「感染状況」「医療提供体制」ともに4段階で最高の警戒レベルを維持したが、小池百合子知事は年末年始で感染拡大を食い止められるよう、これまでより強い呼びかけを都民に行った。
【会見動画】小池知事、若者に「コロナ甘く見ないで」 緊急事態宣言“要請の可能性”も言及
「緊急事態宣言」発出の要請にも言及
「経験したことのない状況だと思っている。怖い状況を迎えている。この寒さは脅威だし、変異株がどういう振る舞いをするか本当に心配している。(医療)現場は身構えている。4月と同じような心境でいる」
モニタリング会議後に行われた臨時会見で、国立国際医療研究センターの大曲貴夫(のりお)国際感染症センター長は、新規陽性者数の最多を連日更新する都内のコロナ感染状況の今後を危惧した。
小池知事の発言にも、春の第1波の流行を思わせるような危機的な言葉が並んだ。
「東京は厳しい状況。かつてない大きさの第3波が襲いかかっている。いつ感染爆発が起きてもおかしくない。誰が感染していてもおかしくない状況にある」
「年末年始のここで感染を抑えなければますます厳しい局面に直面する。『緊急事態宣言』の発出を(政府に)要請せざを得なくなる。こういった事態を何としても回避しなければいけない」
ひっ迫する都内の医療提供体制の状況を説明した東京都医師会の猪口(いのくち)正孝副会長の危機感は具体的だった。
「医療提供体制はひっ迫した危機的状況に直面している。このままの(感染拡大)状況で行くと破綻の危機に瀕する可能性が高い」
「変異株」の出現と初めての「冬の寒さ」
小池知事は現在の流行拡大は「『2つの未知』に直面している」と強調した。
大曲氏が触れたように、一つ目は従来より感染力が強いとされる「変異株」の出現、二つ目はコロナ禍で初めて経験する「冬の寒さ」で、「未知の課題で最大級の警戒・備えをする必要がある」とした。
その上で、これまでの年末年始に向けた呼びかけよりも強い危機感をにじませながら、「人流を抑える」「人と人との接触を避ける」といった感染対策の徹底を都民に求めた。
「この年末年始は命を優先してください。お祝い事や楽しみがたくさんあるはずですが、今回はどうぞ諦めてください」
「家族でステイホームをぜひ徹底してほしい。友達を呼んでのホームパーティや親族が集まっての飲み会はお避けください」
米国でサンクスギビング(感謝祭)の際、親族が家に集合して感染が急増した事例を紹介し、「お正月におせちを召し上がる際もいつもの家族のメンバーにして」と訴えた。
高齢者や持病のある人と同居する家族には「家でもマスク着用をお願いします」。さらに「忘年会・新年会は、今回は『なし』。会食・飲食は感染拡大リスクが高まる。絶対に『なし』です」。続けて「帰省も『なし』。初詣でも感染状況が落ち着くまでお控えください」と述べた。
企業や官庁、学校などに対しても「飲み会は『なし』と呼びかけて」とした。
こうした呼びかけのポイントは、感染経路で約半数を占める「家庭内感染」の拡大を防ぐために、会食や飲食によって家庭内にウイルスを持ち込まないということだ。
全指標が悪化「20代、30代の割合が増加」
[グラフ]新規陽性者数の推移(東京都モニタリング会議資料より)
小池知事は、感染しても軽症や無症状で終わることの多い若い世代に対しても「コロナを甘く見ないでほしい」と訴えた。新型コロナは発症の2日前から感染性を発揮するため、飲み会などに参加することで無自覚に感染を拡大させることにつながるからだ。
都内の新規陽性者(7日間平均)は12月29日時点で751.0人と前週の616.7人より大幅に増加。過去最大を記録し、3週連続で急増した。
大曲氏は、その中でも「20、30代の割合が増加してきた」と指摘する。20代は26.9%、30代は20.3%でこの世代だけで半数近くを占める。
さらに新規陽性者がこのままのペースで続くと、2週間後に都の確保病床が埋まると警告した。今週の新規陽性者の増加比は約123%で、これが2週間続けば約1.5倍になり、1日あたりの新規陽性者は約1136人出る計算だ。都内では現状約25%が入院するので、この比率がそのままであれば「2週間後を待たずに確保した4000床を超える入院患者が出る可能性がある」という。
[グラフ]検査陽性率の推移(東京都モニタリング会議資料より)
PCRなどの検査陽性率の上昇も気になる指標だ。政府の分科会が提示した4段階のステージの指標では陽性率10%以上が「ステージ3」「ステージ4」に該当する。都内の今週の陽性率は8.4%と前週の7.4%からさらに上昇し、10%に近づいている。
検査人数(7日平均)は前週の7817.7人から今週は8085.3人と8000人を越えた。猪口氏は「陽性率の増加はまだ分析が進んでいないが、きちんと検査が届いてるのかも心配だし、それ以外の要素もあるのではないかと分析していくことが大事」だと語った。
今週のモニタリング会議では、7つの指標すべてが悪化している。
過去に効果あった対策が効かない?変異株
しかし、専門家からとりわけ注視されるのが変異株の今後だ。国立感染症研究所のレポートによると、英国で感染が広がっている変異株は、実効再生産数を0.4以上増加させ、伝播のしやすさが最大で70%アップすると推定されるように「今までの流行株よりも感染性が高い」とみられる。南アフリカでもそれとは別系統の変異株の増加が確認されているが、これについては現時点では「感染性の増加や重篤な症状との関連は不明」だという。
小池知事は「東京iCDC」に変異株の発生状況を把握するための新たな検討チームを立ち上げたと明らかにした。同専門家ボード座長の賀来満夫・東北医科薬科大特任教授は「これが広がってくると、イギリスでも南アフリカでもかなり防ぎにくいことが分かっている」、小池知事も「英国の専門家によると、極めて危険な段階に突入する。過去に効果のあった対策では効かないことを意味する」とそれぞれ懸念を示した。
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