夭折の詩人に強い思い入れがあった徹は、「自分は21歳くらいまで生きればいいかな」と考えていた。
若くして死ぬことに根拠があるわけではない。
それは青春の感傷のようなもであっただろうか。
心に秘めていた中田静江に、意を決して手紙を書いた。
大学に入学し、ガイダンスの日に偶然、彼女と講堂の席を隣合せた。
高校生のころに恋した芸術大学講師の娘に面影が似ていた。
その娘は当時、徹とは3歳違いの中学3年生であった。
世の中には似た人がいるものだと徹の胸は高鳴る。
そこで、「私は北島徹、よろしく」と挨拶をした。
相手は、警戒することもなく「私は中田静江」と名乗った。
その後、徹は彼女と接近する機会がなかった。
なぜなら、彼女の脇には常に浜田英子がいたからだ。
2年後、同期生から徹は嫌な噂を聞いた。
「あの二人、同性愛らしいよ」
福島の白川出身の岡野英治は徹の彼女への思慕を知っていた。
「北島、女は多い。中田静江に拘るな。気持ちは分かるが、時間の無駄になる」
徹は、時間の無駄でもいいと、彼女への手紙を書く。
----------------------------------
中田静江様へ
突然の手紙で貴女は驚くかもしれませんが、私の率直な思いを伝えます。
大学生活もあと2か月、卒業です。
心惜しくも貴女とお別れですね。
ですが4年間、親しくさせていただく機会がありませんでしたね。
そのことがとても心残りです。
卒業しても時々お会いできないでしょうか。
不躾なお願いです。
できればお返事をお待ちしています。
北島徹
北島徹様へ
お手紙、何度も何度も読み返しました。
今、とても複雑な気持ちなの。もつたいないような、気恥ずかしいような・・・
私の気持ち整理できません。
2週間くらい、お時間くださいね。
中田静江
だが、その2週間後、徹は思わぬ手紙を中田静江から届けられ愕然とした。
北島徹様へ
ご返事、遅れてごめんなさい。私の親友の浜田英子さんをご存じね。
彼女が北島さんの悪い噂を知っていました。
北島さん堕落しているのですか?
辛辣なことも書きますが、
浜田さんの鋭い感性があなたを判定したのです。悪しからず。
今も、私の気持ちはとてもとても複雑です。
では、さようなら・・・。
中田静江
若くして死ぬことに根拠があるわけではない。
それは青春の感傷のようなもであっただろうか。
心に秘めていた中田静江に、意を決して手紙を書いた。
大学に入学し、ガイダンスの日に偶然、彼女と講堂の席を隣合せた。
高校生のころに恋した芸術大学講師の娘に面影が似ていた。
その娘は当時、徹とは3歳違いの中学3年生であった。
世の中には似た人がいるものだと徹の胸は高鳴る。
そこで、「私は北島徹、よろしく」と挨拶をした。
相手は、警戒することもなく「私は中田静江」と名乗った。
その後、徹は彼女と接近する機会がなかった。
なぜなら、彼女の脇には常に浜田英子がいたからだ。
2年後、同期生から徹は嫌な噂を聞いた。
「あの二人、同性愛らしいよ」
福島の白川出身の岡野英治は徹の彼女への思慕を知っていた。
「北島、女は多い。中田静江に拘るな。気持ちは分かるが、時間の無駄になる」
徹は、時間の無駄でもいいと、彼女への手紙を書く。
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中田静江様へ
突然の手紙で貴女は驚くかもしれませんが、私の率直な思いを伝えます。
大学生活もあと2か月、卒業です。
心惜しくも貴女とお別れですね。
ですが4年間、親しくさせていただく機会がありませんでしたね。
そのことがとても心残りです。
卒業しても時々お会いできないでしょうか。
不躾なお願いです。
できればお返事をお待ちしています。
北島徹
北島徹様へ
お手紙、何度も何度も読み返しました。
今、とても複雑な気持ちなの。もつたいないような、気恥ずかしいような・・・
私の気持ち整理できません。
2週間くらい、お時間くださいね。
中田静江
だが、その2週間後、徹は思わぬ手紙を中田静江から届けられ愕然とした。
北島徹様へ
ご返事、遅れてごめんなさい。私の親友の浜田英子さんをご存じね。
彼女が北島さんの悪い噂を知っていました。
北島さん堕落しているのですか?
辛辣なことも書きますが、
浜田さんの鋭い感性があなたを判定したのです。悪しからず。
今も、私の気持ちはとてもとても複雑です。
では、さようなら・・・。
中田静江
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