「ありがとう」死刑囚は最後にほほ笑んだ 教誨師が塀の中の経験から思うこと

2021年03月17日 09時14分41秒 | 事件・事故

3/17(水) 7:02配信

47NEWS

府中刑務所で受刑者(手前)に対してミサを行うガラルダさん=2020年8月

 「教誨(きょうかい)師」の活動をご存じだろうか。2018年2月に死去した俳優大杉漣さんの最後の主演映画「教誨師」(18年10月公開)を見た人はお分かりだが、宗教を通じて死刑囚や受刑者と向き合い、心情の安定を図り、罪に向き合うよう促す役割を果たす。教誨師が塀の中で何を経験し、何を思うのかを取材した。(共同通信=今村未生)

元法相だから知る死刑制度の泣き所 弁護士の平岡秀夫さん


東京拘置所の敷地内を歩くガラルダさん=3月15日午前

 ▽死刑直前のミサ

 聖イグナチオ教会協力司祭のスペイン人神父、ハビエル・ガラルダさん(89)は、20年間にわたり、東京拘置所(東京都葛飾区)で教誨師を務める。日本語は堪能で、これまでに6人の死刑囚と向き合ってきた。

 その中で忘れられない記憶は、約10年前、刑執行を直後に控えた死刑囚にミサを執り行ったときのことだと、顔を時折しかめながら振り返った。いつか執行の日が来ると分かっていても、対話を重ねた人物が今まさに死ぬという現実は「ショックだった」と言う。

 その死刑囚は驚くほど落ち着いていた。ガラルダさんが「(刑確定から執行まで)早かったですね」と声を掛けると、ほほ笑んだ。最後に「ありがとうごいました。悪いことをした。申し訳ない。許してほしい」と話し、顔に布をかぶせられ、刑場へ連れて行かれた。約30分後、遺体と対面し、拘置所幹部らと一緒に献花した。

 「旅立つときの心情安定のため」(法務省幹部)との理由で、死刑囚は希望すれば執行直前も教誨を受けられる。ガラルダさんが長年の経験の中でも担当したのはこの1回だけだ。この後も、執行前日に拘置所から来られるかどうかを確認する電話が入ったことがあるが、予定があり断った。執行とは打ち明けられていなかった。別の教誨師に声が掛かったそうだが、ガラルダさんは「すごく残念だった。(執行された)彼は寂しかったでしょう」と話し、悲しい顔を見せた。


取材に応じるガラルダさん=2020年9月

 ▽人間として成長

 ガラルダさんは1958年、宣教師として来日。両親が明治時代、新婚旅行で訪れた日本に縁を感じていた。スペインで出所者の支援などに取り組んだ兄に倣って、教誨師の仕事を引き受けた。

 東京拘置所には2000年から月1回、足を運ぶ。死刑囚と対面するのは6畳ほどのキリスト教専用の教誨室。時間は1人30分。刑務官が立ち会うものの、面会室のように死刑囚との間を仕切るアクリル板はない。

 現在、数人の死刑囚を受け持つ。ガラルダさんが対話の一端を明かした。一人は哲学が好きで「本を読んで感動しても、人と話せないことがつらい」と話す。別の一人は自身を灯台に例え「私の歩んだ道を歩まないよう示すことが、私の生きる道だ」と語る。

 ガラルダさんは「彼らは人間として成長している」と確信する。「死刑囚には考える時間があり、『深いところの自分』と仲良く話すからだ」。ガラルダさんはこれを「充実した沈黙」と表現する。ただ、「浅いところの自分」としか話せない死刑囚は罪と向き合えず、境遇に不満を述べるのだそうだ。

 

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