符堅と王猛(不世出の名君と臥竜の軍師)読書レビュー

2014年01月30日 | 海外サッカー
作者の好む人物像とは?


久々の毒手レビューです♪ ぁ。読書レビューです。すいません。
毒手は影慶でしたね^^(解る人だけ^^)

中国史は私のライフルーティンでもあります。 いくらでも題材はあるし、その其々の奥深さも興味は尽きません。
今回久しぶりに読みたい小説があり紀伊国屋まで赴きガチ探しで購入しました。


符堅と王猛 著者:小前亮



ここを訪れた皆さんにも是非読んで頂きたいのでネタばれ的な表現や感想は出来るだけ避けますが書きたいことはテンコ盛りです。

先ず、符堅というなかなか日本ではマイナーで彼を題材にした物語や小説が少ない人を主人公に据えて頂いたチャレンジに感謝したいと思います。
マイナーといっても、先のブログでも述べた通り中国といったら一つ覚えの三国志、三国志、たまに楚漢しか称えられず注目しようとしない日本だけのことなのですが・・・ この符堅という皇帝はそれまで殆どの先人が真剣に考え為そうとしなかった中華統一を目指し、しかも特定の民族に偏らないという条件に於いては中国史唯一の志を持って邁進した人物であったと私は考えています。
漢の高祖(劉邦)も中華帝国を築きましたが秦という近き先人の後の仕切り直しみたいなものでしたし、唐、北宋も同じ仕切り直しの感がありますし、その後の統一王朝も民族の縛りからは逸脱できない形で終始したイメージがあります。

比較し得るとすれば、秦の始皇帝であろうか? 奇しくも同じ秦という国家ですね。 あとは思想的にひょっとして後周の世宗も近いのかも知れません。 今度機会があったら世宗も取り上げてみてほしいですね☆

作者、小前氏はこの登場人物の中で誰に傾倒し誰がお好きなんだろう?と考えながら読み進めることができる作品です。
私の場合、時代の流れは知っていて読みましたが、一見登場人物が其々の思惑から動いているのが途中から附かず離れずの絶妙な距離と時間軸でもって史実に組み込んでいくという非常に高難度(私はそう思います)な下ろし方で書かれているのが印象的でした。
(特に最後の方まで読み進まれるとそれがより実感できると断言できます)
一人であるはずの作者が何人もの重要登場人物の目線に入り込み成りきりテンポ良く物語を動かしていくので分厚い単行本でも1日半で一気に読み終えることができる作品です。 

この符堅の国である前秦以降、皇帝など誰でも流れに恵まれれば成れそうな時代が続きます。小人が理念も信念もなく己の欲望や子孫の為だけしか考えない数多の皇帝達は簒奪した前王朝の末裔を殺し、政敵に成り得る武将や同族までも殺し尽くすというのが当たり前な時代へと突入していきます。 そこに一旦終止符をうつのが・・北宋の創始者趙匡胤でしょうか。 それほど符堅という人物はこの中国、いや世界中であってもなかなか現れないタイプの為政者であると思います。
それを全身全霊で助けた軍師であり宰相でもあった王猛。 その王猛が早逝した故に歯車が狂った符堅の理念。見どころたっぷりです。

 


さて、
作者小前氏は一体誰に傾倒し誰を一番大事に思い執筆されたのか?


というところで結びたいと思います。

稀代の軍師王猛か? その能力、孤高さ、内に秘める大きな慈悲、英雄こそ知る英雄の価値。
如何にも武骨で漢に好かれる慕容垂か? その律儀さ、冒頓さ、懐の大きさ、誰しもが命を預けたくなる雰囲気。
大勲ある名将羌(とうきょう)か? その奔放さ実食さ、戦場での頼りになる武功、派閥に属さない素朴さ
弟であり次代を担う補佐役の符融か? その忠誠心、英才教育を施された気品。

どの武将もその視点からの物語を構築し見事に振り分けています。
それ故にどの武将もお好きだろうと思いますが一番ではなさそうな気がします。
無論敵方である恒沖、謝安、謝玄などでもなさそうです。 後に独立する姚萇や劉裕も上手く描いてますが彩りに感じます。

彼らの視点や動きを踏まえて主人公符堅の苦悩や行動が著されていて、ともすれば頼りない人物に思えてくる構想図を強調しているところを鑑みるに、、

やはり。。符堅に一番魅力を感じていられるのではないかと結論づける次第になります。

前漢の高祖曰く、「将に将たる器、」有能な者にしかわからない魅力というものを符堅は備えていたということではないでしょうか。
強さ、誇らしさ、弱さ全てを露わにすることによって1個の人物を語る。
個人的にはこの題材となると前・中・下巻くらいの長い構成で描けると思っています。

森羅万象を知り尽くした大夫達がそれでも魅力を感じ尽くしたいと思わせた名君。
ひとかどの人物でも憧れ追及したくなるその壮大な志をもった君主。

それが符堅その人であったのだと感じます、

著者の作品をもっと追いかけてみたいと思います。



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コメント
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