カキぴー

春が来た

パタゴニアと 「明日に向かって撃て」(1)

2010年05月12日 | 小説

南アメリカ大陸の南緯39度以南に広がる荒涼たる大地 ,「パタゴニア」。 強風吹きすさぶ乾いた台地と、太平洋岸の大氷河を特徴とするこの地は、「地の果て」の代名詞として久しく西洋人の想像力をかき立ててきた。

このパタゴニアを 「文学的に旅したトラベル・ライター」が、ブルース・チャトウイン。 彼は珍種の動植物だけでなく、文学作品に登場する土地や文学的連想にも、興味をそそられる。 そんなわけで、パタゴニアにまつわる文学作品も多く、さらに流浪者たちの境遇にも心惹かれる。 チャトウインは言う、もし明日、全世界が吹っ飛んだとしても、パタゴニアさえ残っていれば、世界中の民族を集めた一大縮図が見られるはずだ。 流浪者たちはみな、この「流れ者の行き着く岬」に吹き寄せられた者ばかり。

チャトウインが興味を抱いたのは、元モルモン教徒のロバート・リーロイ・パーカー。 狙った獲物は必ず手に入れる銀行、列車強盗団の首領で、アメリカ1のお尋ね者。 彼が「3人家族」と呼んでいるのは、パーカー本人と相棒のハリー・ロンガボー、それにハリーの妻でデンバー出身の美人教師、エタ・プレイスとの「3角関係」を指している。

ここまで読んだら昔観た映画を思い出した。 1970年のアメリカ映画 「明日に向かって撃て」で、実在の銀行強盗プッチ・キャシディーとサンダース・キッドの物語だ。 この2人を演じたのがポール・ニューマンとロバート・レッドフォード、そして美人教師は、僕のご贔屓だったキャサリン・ロス。 ラストシーンの「ストップモーション」は、映画史に残る屈指の名シーン。 この映画はアメリカ国立フィルム登録簿に登録され、永久保存されている。

チャトウインの著書「パタゴニア」に、サンダース・キッドと妻エタ・プレイスの写真が載っている。 1902年ごろに撮ったモノクロだが、立派な髭をはやした彼は、フロックコートを着て山高帽を右手に持ち、知的なエタは黒のロングドレスを着て、彼に寄り添っている。 さらにキッドがエタのために、ティファニーで買った金時計もエタの胸にみえる。 実はこの写真から探偵社は彼を探し出し、彼は射殺されるのだが。 


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