カウンセラーのコラム

山梨県甲府市でカウンセリングルームを開業している心理カウンセラーの雑文です。

よくしゃべる機械

2007年09月11日 | 日記 ・ 雑文
お風呂の給湯器が故障したので、つい先日、新品に交換した。機能や性能はほとんど変わらないが、これがよくしゃべるので驚いている。
例えば、残り湯を排水すると自動的に配管内に残っている古い水を排出する機能が付いているのだが、ここで、
「オフロノ配管クリーンヲシマス」と、カン高い人工的な音声で言う。栓をしてふろ自動ボタンを押すと、
「オ湯ハリヲシマス」と言い、沸き上がりが近づくと、
「モウスグオフロガ沸キマス」、そして沸き上がると、
「オフロガ沸キマシタ」とまあ、こんな具合だ。
ここまではまあいいが、ちょっとぬるいと感じて浴槽内の温度を上げるボタンを押すと、
「オフロノ温度ヲ41度ニ変更シマシタ」とくる。さすがにこれにはウンザリした。「そんなことまでしゃべらなくていい! 温度は見ればわかるぞ!」とツッコミたくなるのだ。
メーカーとしては、「便利さや親切さをユーザーに提供しよう」ということで“おしゃべり機能”を付けているのだろうが、ここまでやられると“不快感”を感じてしまう。
そしてこの私に生じた“不快感”について、「ひょっとするとこれは、人間が本来持っている“正常な感覚”ではなかろうか?」と、ふと思ったのだった。

確か『荘子』だったと思うが、「便利さ・快適さを求めてそれに依存してしまうと、人間が本来持っている全心身の働きが失われて、機能しなくなってしまう」という主旨の話があったと思う。(いや、記憶があいまいなうえに、ものすごく“自己流”に解釈しているので、これは客観的で正確な情報だとは思わないでほしいのだが……)。

この『荘子』の思想に符合する体験的事実が思い浮かんだ。それはカーナビだ。
私がクルマの免許を取って運転し始めたのは30歳頃だが、運転に自信がなかったので、最初のクルマには購入と同時にカーナビを付けた。その後、何台ものクルマに乗っているが、カーナビを外したことは一度もない。ということはつまり、私は“カーナビ無しのクルマ”は、ほとんどまったく運転した経験がないわけだ。
そのせいだと思うが、私はクルマを運転する際に“道を覚えること”が、ほとんどと言っていいくらいできない。何度も通っている道なのに、「アレ? ここを曲がっていいのかな?」というような思いが、度々脳裏をかすめるのだ。
カーナビを使えば(頼れば)、道を覚えなくて済む。機械が自動的に「100メートル先の交差点を右折してください」などと指示してくれるからだ。
私の脳の重要な働きの一つである“記憶力”は、(“道を覚える”ということに関しては)すっかり衰えてしまっている。もはや“機能不全”と言ってもいいくらいに。ま、実際脳を“使わない”のだから、そうなってしまうのは当然だろう。が、よくよく考えてみると、“この事実”は、“ものすごく恐ろしいこと”にも思えてくる。

話はここで一転して、“カウンセラーの成長ということ”について取り上げてみたい。
いろいろな細かいプロセスを省いて結論だけ述べると、結局最終的には「そういう人になるしかない!」というところに至る……というのは前回書いた。ここで「そういう人になるためには、どうすればいいのか?」という問いは愚問である。答えは「なるしかない!」のだから……。
しかしまあ、一歩譲って“何らかの道のりがある”と仮定するならば、それは“行ずる”ということになるだろうか? しかし、“行ずる”と言ってみたところで、それが具体的にどんな行為なのかよくわからない。
“修行”という言葉を聞くと、私の頭には即座に“座禅”とか“滝に打たれる”とかのイメージが浮かんでしまう。なんとまあ、貧弱な発想しかできない頭だろうか!? そんなものを思い浮かべたところで、「まあ自分には無理だな」と尻込みするのが関の山なのに……。

そこで発想を変えてみた。上述したことと結びつくのだが、
「そうか! 科学技術(便利・快適が得られるモノ)に依存しない生き方、在り方を探求・実践していくことも、“行ずる”に当たるのではないか?」と、ふと思ったのである。
そしてそう思ってみると、カウンセリングから農業へと転じた友田先生の心中が、ほんの少しだけわかってくるような気がする。すなわち、「友田先生は、全心身が機能する人間になるための“行”として、農業(もちろん機械も化学肥料も農薬も使わない)に取り組んだのではないか?」という思い方が、私の中で生まれたのだった。

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