カウンセラーのコラム

山梨県甲府市でカウンセリングルームを開業している心理カウンセラーの雑文です。

クライエントを理解する?

2007年07月13日 | 日記 ・ 雑文
これといったネタがないので、最近気になっていることを整理してみたい。

先日のカウンセリング講座(日本カウンセリング・センター主催の講座。私は世話人として参加している)での一場面であるが、参加者の一人が「カウンセラーはクライエントを理解することが大切だと私は思う」という内容の発言があった。
こういう考え方や思い方を含んだ発言に接するのは稀ではないが、その度に僕は首を傾げずにはいられない。その場面でも僕は「そういう考え方、捉え方は間違ってると思いますよ」という意味の応答をし、アプローチしようと試みたのであるが……。

ロジャーズは「基本的仮説」として、こう述べている。
『効果的なカウンセリングは、クライエントをして、自分の新しい方向をめざして積極的に歩み出すことができる程度にまで、自分というものについての理解を達成できるようにする、明確に構成された許容的な関係によって成立するものである。』と。(ロジャーズ全集2・カウンセリング p.20)

これをいったいどのように読めば、「カウンセラーはクライエントを理解することが大切だ」と読めるのであろうか?
あるいはひょっとすると、この「基本的仮説」それ自体が“仮説として”受け入れられない人もいるかもしれない。が、その場合にはさっさとロジャーズに見切りを付けて、他の学派に転向したほうが身のためだろう。なぜなら、この「基本的仮説」を“仮説として”保持できない限り、ロジャーズ流のカウンセリングをやっていくことなど所詮は無理である……と断言したいからである。

「カウンセラーがクライエントを理解してない(理解できてない)」証拠を挙げたらキリがない。例えば、

カウンセラー:そうですねえ、さて、昨日は、わたくしたちが話し合いを進めてゆけるかどうかを、いろいろの面から話し合ったわけで、わたくしにはわかりませんが、あなたの心にかかっていることがどのようなことなのか、わたくしはできるだけはっきりさせたいのですが、もっとわたくしに話してくださいませんかね。
クライエント:そうですねえ……(以下略)

という逐語記録がある。(ロジャーズ全集9・カウンセリングの技術 p.7)
カウンセラーがいかにクライエントを“理解してないか”が、非常にはっきりと示されているではないか。

僕に言わせれば「クライエントを理解することなど、到底不可能である」としか言いようがない。カウンセラーにできることといえば、所詮は「クライエントを理解しようと“努力すること”」ぐらいのものだろう。
もし仮に「カウンセラーはクライエントを理解しなければならない。そうしないとカウンセリングは成立しない」という事実が判明したなら、僕はカウンセラーを廃業するしかない。そんなこと、僕の力では絶対に不可能だからである。
もし仮に「私はクライエントを理解している」というカウンセラーがいたなら、そんな話はまったく信じられないだけでなく、「思い上がりもはなはだしい! お前は神様か!」と憤怒するだろう。

そもそも“カウンセリング”というのは、カウンセラーとクライエントがお互いに「何らかの努力をし続けていくプロセスそれ自体」を指しているのではないのか? 基本的には「理解できた」とか「できなかった」とかいうレベルのものではないはずである(少なくとも僕はそう思っている)。

自慢話になるかもしれないが、僕の場合、クライエントを理解しようと「努力すること」は、だいぶできるようになってきた。いやいや、友田先生とかああいうレベルのカウンセラーと比べたら、僕はまだ「ヨチヨチ歩き」のカウンセラーだが、それでもカウンセラーとしての“自分の成長”は感じている。それは“喜び”ではあるが、一方で“慢心”につながりやしないか? という危惧も抱いているのだが。

結局最終的には「努力する」の一語に尽きるのであろうが、この「努力する」がクセモノである。ロジャーズや友田が行なった「努力する」は、いったいどのような類の「努力する」なのか? あるいは彼らの「努力する」が、自分はどの程度できているのか? 自分は自分が思うところの「努力する」をやっていけば、それで構わないのか?
このあたりが“カウンセリングというもの”における最大の問題点であり、焦点であり、課題なのだろうと思い定めている。

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1 コメント

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カウンセラーに向いていないと思います (なべっち)
2017-03-23 06:24:17
クライアントを全く理解しようとしない人間に相談なんかできるわけないだろう。また、クライアントが抱えている問題をわかっていな人間が、解決策を提示することはできない。

カウンセラーを廃業して他の業種へ転職した方がいいと思います。
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