カウンセラーのコラム

山梨県甲府市でカウンセリングルームを開業している心理カウンセラーの雑文です。

南アルプス子どもの村小学校

2011年02月20日 | 日記 ・ 雑文
山梨県甲府市に引っ越そうと決意した要因のひとつに息子(6歳)の教育問題がある。正直に告白すれば、私という人は世のいわゆる“教育ママたち”と比べたら「それほど教育熱心なタイプではない」と思うが、しかしまあ、最低限の希望として「条件が許すなら、できるだけ良質な教育環境を与えたい」という平凡な親心は持っている。
詳細に言えば紆余曲折がまったくなかったわけではないが、息子は4月から「南アルプス子どもの村小学校」という名称のかなりユニークな(?)小学校に入学することになった。そこでこの機会に“この小学校”を紹介しておこうと思う。

下にリンクを貼ったが、ホームページを見てもらえばわかるように、この学校は教育理念として「自己決定・個性尊重・体験学習」を3つの柱としている。これを初めて見たとき、私は思わず苦笑してしまった。なぜならこの理念は、私が長年取り組んできた“カウンセリングの世界”において実現しようと目指しているものとまったく同じだったからだ(笑)。
この3つを現実化してゆくための手段として(私の場合はそれが“カウンセリング”になるわけだが)、この学校では“プロジェクト”と称するユニークな取り組みを行なっている。カリキュラム(1週間の時間割)を見ればわかるが、一般的な教科学習ではなく、この“プロジェクト”が中心に置かれているのである。
“プロジェクト”の時間は、縦割りの2クラスに分かれてそれぞれの活動を行なう。ひとつは建築や木工を行なう“クラフトセンター”、もうひとクラスは料理や農業を行なう“おいしいものをつくる会”で、生徒はどちらかのクラスを自由に選択できるという仕組みだ。
例えば校庭に“にわとり小屋”があるのだが、この小屋は生徒たちが手作りした作品であり、飼われている鶏が産んだ卵は料理に使われる……という具合だ。このように記せば「この学校が普通の小学校と比べていかにユニークか?」が少しは伝わるだろうか。
こういう学校というのは、日本では“フリースクール”というカテゴリーに分類され「文部科学省からの認可を得ていない学校である」という意味でマイナスイメージが付随しがちであるが、この学校は文科省の認可を得ている。よって法的な尺度から言えば「フリースクールではない」となるだろうか? ま、今後は法的に定義されている“フリースクール”の多くが文科省からの認可を得られる方向に行くだろうと想像するので、現時点で「認可か?無認可か?」という点はあまり気にする必要がないのかもしれない。

話を元に戻そう。ホームページを見て、この学校の教育理念に関心を持った私は「ぜひ、この目で確かめてみたい!」という気になった。どれほど意味と価値のある言葉が理念として掲げられていたとしても、それをそのまま鵜呑みにはできない。「実際にどの程度、理念と一致した教育活動が行なわれているか?」という点について、私はこの分野(=人間の成長と発展を援助する分野)における専門家として、専門家の視点から、この目で確かめなければならなかった。
この学校を訪問する機会は二度あった。一度目は校長先生の講演会が開催されたときで、二度目は息子が体験入学した(親なしで学校に一泊した)ときだった。機会はそれだけだったが、それで十分だった。なぜなら、最初の訪問時にすぐに気づいたのだが、「生徒たちの顔が輝いていた」からである。
校長先生の講演はほとんど聴かなかったし、体験入学時にビデオを視聴しながらいろいろな説明も受けたが、それらの情報は私には不要だった。この学校の教育理念である「自己決定・個性尊重・体験学習が、いったいどの程度現実化されているか?」という私の疑問に対する答えは、先生たちの話の中にではなく、生徒たちの“顔”に現われていたのである。
もっとも、このような確かめ方ができたのは、私が長年この分野で活動してきた専門家だったがゆえに、いわば「そういう“目”が養われていた」からなんだろうなあ……とは思うが。

といった経緯で、全面的な信頼感と安心を持って、4月から息子をこの学校に通わせることになった。もちろん“人間の世界”が必ずそうであるように、いずれは何らかのトラブルが生じるに違いないだろうが、その際にはきっと「自己決定・個性尊重・体験学習」でもって乗り越えてゆくだろうと信じている。
逆の言い方をすれば、もしも“人間なら誰もが本来所有している資質と能力”に絶対的な信頼が置けないなら、その人は「自己決定・個性尊重・体験学習」というような美しい文句をいくら並べても、結局は“絵に描いた餅”にしかならないだろう。

南アルプス子どもの村小学校ホームページ
http://www.kinokuni.ac.jp/nc_alps/html/htdocs/index.php

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5 コメント

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Unknown (MAY)
2011-09-17 00:43:47
ちょうど雑誌でこの小学校の記事を読んで、きになっています。お子さんが実際入って、どうですか?感想を聞かせていただきたいですが。
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Unknown (管理人)
2011-09-17 12:22:38
MAYさん、コメントありがとうございます。

一般的に言って「教育効果が現われるには相当の長期間を要する」でしょうから、良かったか否かを正確に判定できるのは3年後くらいになるだろうと思っています。
現時点での感想は、ウチの息子の特徴や傾向を考え合わせると「近所の公立小学校よりも良かったかなあ」という気がします。
ただしそれは「問題やトラブルがまったくなかった」という意味ではありません。実際には問題やトラブルが続出しましたが、それらをひとつひとつ乗り越えていったところに息子の成長を実感しているわけです。
もっとも「問題やトラブルがたくさん生じる」という点は、近所の公立小学校に通った場合でもまったく同じでしょうけど(笑)。

よくよく考えてみれば、家庭を含めて「問題やトラブルが存在しない場所」なんて存在しませんから(笑)、真に大切なのは「それらを自力で乗り越えてゆく力を身に付けてゆくこと」にあるのではないでしょうか?
ま、カウンセリングというのは、このあたりが焦点になってくるわけですけど。
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Unknown (Yukari)
2011-09-24 02:33:37
同小学校を最近偶然知りまして、出来たら子供たちを通わせたいなぁと思っています。
今は海外で生活していますが、以前は吉祥寺近くに住んでいました!息子さんの小学校の為に東京から甲府市に移住されたとのことですが、住んでみたご感想はいかがですか?
小学校は南アルプス市ですが、甲府市から毎日通われているのでしょうか?それとも寮生活ですか?
本当に子供達を通わせることになったら、近くに引っ越す必要があると思っていますが、実際東京から移住された方のご感想を聞かせていただけたら嬉しいです。
宜しくお願いします。
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Unknown (管理人)
2011-09-24 21:18:16
Yukariさん、コメントありがとうございます。

私は今年の3月まで三鷹駅近くにおりましたが、それと比べたらかなり不便な生活であることは否めません。「住みやすさ」で言ったら、東京(とくに三鷹・吉祥寺の周辺)より良いところなんて、ほとんど存在しないのではないでしょうか?(笑)
ま、私は生まれも育ちも甲府市なので驚きやショックは何もありませんでしたが、妻は現在の性格環境にたくさんの不満があるようです(苦笑)。
息子はJR身延線というローカル線(単線です)を使って通学していますが、先日の台風で線路が3ヶ所壊れて、現在復旧のメドが立っていない状況です。よって今は、一時的にバスで甲府駅まで行っています。ま、こういうところも妻には大きな不満なのでしょう。

子供をあの学校に通わせるために引っ越してきた家族は私たち以外にもたくさんいます。全員の感想を聞いたわけではありませんが、「すべての面において満足している」なんて人はいないだろうと想像します。もっとも、「都会より田舎暮らしのほうが好き」という人なら話は別ですが。
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Unknown (Yukari)
2011-09-30 01:05:17
質問へのお返事ありがとうございます!
我々家族も、東京からアルゼンチンのブエノスアイレスに引っ越してきて、色々と不便を味わっています。首都とはいえ、日本の便利さに比べると不満に思う所が多いですね(苦笑)。
とはいえ、東京は便利すぎる気がします。長く住んでしまうと、人間に備わっているはずのサバイバル機能が低下してしまうような…。
奥様が早く新しい環境に慣れられるといいですね。

うちの長男はまだ年少クラスの年齢なので、小学校入学まではあと2年ありますが、もしそちらの学校に入ることになったら、その際は宜しくお願い致します。
…ちょっと気が早いですね(笑)。
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