カウンセラーのコラム

山梨県甲府市でカウンセリングルームを開業している心理カウンセラーの雑文です。

九の段

2012年08月05日 | 日記 ・ 雑文
我が家のトイレには九九表が貼ってある。小学生の息子がやっている進研ゼミ・チャレンジ2年生の付録だ。毎朝便座に座って用を足していると、正面に貼られたその表が自動的に目に入るという仕組みだ。
先日、その九九表を見ながら大発見(たぶん?)をしてしまった。

九の段を下に書いてみよう。
9×1=9
9×2=18
9×3=27
9×4=36
9×5=45
9×6=54
9×7=63
9×8=72
9×9=81

注目してほしいのは、答えの18と81、27と72、36と63、45と54。そう、すべてのペアの数字が逆さまになっているのだ(!?)。
ひょっとすると世の中的にはよく知られている“ネタ”かもしれないが、幸いなことに私は知らなかったので、「自分で発見した!」という喜びと興奮を味わっているところだ。言うまでもなく、その喜びと興奮とが、この日記を記す原動力になっている。

ここで話をカウンセリングに持ってくると、クライエントにとって最も大切なのは、カウンセリング過程においてクライエントが「自分で発見した!」というふうに経験されるところにある……と、私は確信している。
クライエントの99%は「カウンセラーは専門家なんだから、その専門家から教わりたい!」という気持ちでカウンセラーの元を訪れるに違いない。よってカウンセラーからなんとかして有益な情報を引き出そうとする行為は、――もちろん大半のクライエントがそのように行為するわけだが――、むしろ自然な動き方であろう。
しかし、ここのところで(仮にカウンセラーがクライエントの“教わりたい何か”をズバリ教えることが可能だったとして)、もしも教えてしまったなら、カウンセリング過程は一瞬にして崩壊し、すべて台無しになってしまうだろう……と言いたい。
その後はたぶん、カウンセラーが“教える人”、クライエントが“教わる人”、となって展開してゆくのだろうが、そんなプロセスにいったい何の意味と価値があるのだろうか? 「まったく何の意味も価値もない」とまでは言い切れないが。

そもそもの話として、一人の人間である(=神ではない、という意味)カウンセラーが、“クライエントにとっての最重要課題を解決する方法”などという途方もないものを“教える”ことができるのであろうか? あるいは、例えば「自分はこれこれこういうふうな人間に変わりたい!」と訴えるクライエントがいたとして、その人を“変える”ことができるのであろうか?
もしも「できる」と主張するカウンセラーがいたなら、その人物に対して「おこがましいにも程がある!」と言いたい。あえて付言すれば、カウンセラーにできる最大限の行為は“援助”である、と私は思っている。

こういう話をするとカウンセリング理解の浅い人たちは、「カウンセラーってのはノンデレ(ディレクティブしない、指示しない、教えない、という意味)で、ウムウム、ハアハアと相づちを打ちながら、クライエントの話をただ聞いていればいいんだな」となる。こういう理解(理解というよりもとらえ方)となると、もはや開いた口が塞がらなくなる。こんなカウンセリングだったら、“教える”カウンセリングのほうが数百倍もマシだろう。

カウンセラーにとって最も大切なのは、クライエントとともに“取り組む”ことである、と私は確信している。詳細に言えば、クライエントは自分が最も取り組みたいことに取り組み、カウンセラーはカウンセリングに取り組むわけだが、そのようなプロセスが一定程度生じているなら、それはまあ“効果的なカウンセリングである”と言えよう。
……とまあ、言ってしまえば簡単なようだが、これを文字通りに実践するのはじつにじつに難しい。カウンセリングに関わるようになって15年以上になるが、最近になってようやく“カウンセリングの難しさ”がわかってきた……と表現してもいいくらいだ。
でまあ、本稿のテーマに戻れば、「こういう“難しさ”も他の諸々と同様、決して他人に教えることができない類のものなんだろうなあ……」と、あらためて思った次第だ。
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2 コメント

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ああ (平間紀子)
2012-08-05 18:14:22
なんとなく、先生を探していた日があります。
それは忘れましたけど、ある日(あの時の)の先生の「わかり方」・・への憧れ・・

そういう風に聞こえる、聞ける先生の体のなかのありようというものが、あるのか・・

そういうありようがあるなら、真似をしてみたいと思いました。」
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Unknown (tomoken)
2012-08-06 09:46:28
平間さん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

ウーム、……難しいテーマですねえ。カウンセラーの「わかり方」ってのは、私にとっても難問です。
ふと、友田先生が残した「クライエントがお師匠さん」という言葉を思い出しました。
自分の「わかり方」がOKなのか、NGなのか、それは突き詰めるとクライエントさんにしか判別できないのではないでしょうか?

クライエントをお師匠さんにしながら、平間さんは平間さんの探求したいテーマを、私は私の探求したいテーマを、それぞれの歩みで探求していきましょう!
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