彼は旅に出るのだ
背中に白いズタ袋を
そして履き慣れた靴を。
どこに向かうのか
見当はついてはいないが
とりあえず歩いてゆこうと想っている
空に鯨が泳ぐ日は
彼にとっては特別な日なのだ
この日は旅立ちに良い日
そう決まっているのである
魚たちが木々の間から顔を出せばさらにいい
まだ魚たちは森の中に現れてはいない
そのうちザワザワと現れるのだ
彼はそんな魚たちをうまくかわしながら
森を抜けて歩いてゆく
そうして向こうに湖が見えたら
その中に入っていこうと考えている
湖の中には光る空が閉じ込められていて
その封印の鍵を
彼が持っているから
とにかく遠くにある湖まで
歩いていこうと考えている