今年一年で、吉村昭の小説は6冊目になる。
はまってしまったようだ。もちろん、大震災がひとつの契機になったのは確かだが、その文体や、内容の濃さが起因している。
この”破船”も、異色である。
お船様という儀式が、ある村で冬の海がしけている時に、生き抜くために、ひそかに行われていた。
当番で、火をたき、荒れる海に苦しむ船を導くのだが、普通に考えると、灯台ではないが、助ける . . . 本文を読む
”半落ち”で、見直した横山秀夫の”深追い”を読んでみた。
7編からなる短編集だ。
警察の地方署のいろいろな部署に勤務する7人の物語で、面白く読めた。
裏表紙に、骨太な人間ドラマと美しい謎が胸を揺さぶる。とあるが、うまく、表現したものだ。
どれも、それぞれに一味あるのだ。その中から、3編を選んでみた。たとえば、
深追い:主人公は、思いつめると . . . 本文を読む
横山秀夫の代表作の一つの”半落ち”を読んでみた。
横山秀夫の作品は、”陰の季節”に次いで2作目だが、”半落ち”については、素直に楽しめた。傑作だと思う。
ある程度、ストーリーも読めるのだが、わくわくするのだ。
また、終わり方も気持ちの良い終わり方だった。
6人の名前の章がついているのがユニークだ。それぞれに個性のある人 . . . 本文を読む
おもしろいと勧められて、一気に読んでみた。
映画宣伝会社のプロデューサーから執筆活動に入ったが、2006年に他界した北林一光の作品だ。
宮部みゆき氏絶賛の帯が目立つ。
確かに、日本の推理小説としては珍しい作品かも知れない。
動物ものとして自分が読んだ中で思いつくのは、モルグ街の殺人事件くらいだろうか。
山岳ものとしては、数多くありそうだが、中々、上手に書かれているようで、クライマックスに . . . 本文を読む
不思議な作品だ。これなら、ミステリーと読んでも良いような気がする。
戦時中、若い整備兵は、ある男の依頼で落下傘を、しばらく拝借する。それを隠そうと、今度は、軍用飛行機を爆破し、脱走することになる。
捕まれば死刑である。
そして、何十年がたち、逃亡した整備兵は、自分のしたことが、作り話でないことを証明すべく、当時の上官に会う。
いったい全体、この物語は、何のために書かれたものかと考えてしまう . . . 本文を読む
NHK TVドラマの原作になった”敵討”を読んだ。実際には、2編からなる。
最初の「敵討」は、何故、殺害されたかわからぬ剣客の叔父と、仇討をしようとするうちに行方不明となった父親の敵を追う息子の話だ。こちらは、意外性があり、史実でなければ、作りすぎではないかと思ってしまうほどである。
2編目が、TV化された「最後の仇討」だった。すでに明治に入り、仇討禁止令が出たにも関わ . . . 本文を読む
昭和11年から、昭和22年の間に、青森、秋田、網走、札幌の4つの刑務所を脱獄した人物と、当時の時代背景を克明にに記録した読売文学賞を受賞した力編だ。
よくも、ここまで、仔細に調べ上げたものだとびっくりする。
名前は、佐久間清太郎という仮名だったが、実在の人物がいるはずと、脱獄王で検索したところ、下記二人が出てきた。
西川寅吉:明治から大正時代に日本で最多の5回も脱獄し、5寸くぎを . . . 本文を読む
吉村昭氏の”三陸海岸大津波”を読んでみた。
40年ほど前の作品だが、徹底的な調査、記録による作品だった。
明治29年の大津波の知る当時の生存者2人の方から話を聞いたり、昭和8年の大津波の津波体験者の小学生時代の作文を引用したり、著者の平易な文章と、その事実の重さが相乗効果となり、感動した。
一人の女の子供が、自分の家族と離ればなれになり、自分だけが生き残り、他県の親戚 . . . 本文を読む
今年から、今まで読んだことがなかった国内の作家の作品を読んでみようという気になっている。
ミステリー作品も読んでない作家のものは多々あるが、どうも、本格推理小説の謎解きものは、あまり、興味がなく、どちらかというと思いつくままというのがあたっている。
その中で、吉村昭氏の作品を手にとった。
正直言って、どういう作家か、現在も生存している方かも知らなかった。
後で調べてわかったが、2006年に . . . 本文を読む
今までに読んだ東野圭吾の本の中では、一番、面白かった。
実は、まったく、期待してなかった。
理由は、人が乗り移ってしまうのは、確か、漫画であったし、ものまねみたいに感じたからだ。
それが、98年度のベストミステリーなんて不思議だと思っていたくらいだ。
しかし、読んでみて、これは、誰が読んでも面白いし、読後感も悪くない作品だと思うようになった。
また、家族や夫婦の愛も、しっかり描けているよ . . . 本文を読む
5つの短編からなるのだが、探偵倶楽部という、会員制のVIP専用の調査機関、興信所のようなものがからんでくる。
ひとつひとつの作品は、質の高いミステリーで、面白く読めたのだが、決して、後味が良いという感じではなかった。
また、探偵倶楽部が、難事件を鮮やかに解決と、書いてはあるが、それほど、“お見事!”という感じでもなかった。
黒いスーツを着た男と髪の長い美人のコンビなの . . . 本文を読む
松本清朝が読んでみたくなった。それで、探したが、あまり有名なのは避けてたら、この題名に引かれた。
また、後ろの説明でも、"出張中に妻の死を知り、死に場所は、妻から一度も聞いたことがなかった地名であった..."
という何でもないようだが、意味深で、それほど古めかしくないものだった。
想像した通り、途中までは、まさに、謎解きの楽しみがあった。
それから、殺人をおかしてしまった人 . . . 本文を読む
”切なく悩ましい男女のエロス&ミステリー11篇”という言葉に釣られて、どんなミステリーかと思い読んでしまった。
阿刀田高の作品は、エッセイ、探偵小説、この作品集といい、かなり、雰囲気が違う。
私は、ミステリーは、トリックがなければというタイプではないが、”甘い闇”は、ミステリーと言っても、少なくとも”Aサイズ殺人事件”のよ . . . 本文を読む
阿刀田高に凝っていると書いたが、日本推理作家協会理事長だったにも関わらず、エッセイばかりで、推理小説は読んだことがなかった。
きっと、推理小説も、良いに違いないと思い、探したのだが、ありそうでない。
やっと見つけて読んだのがこの作品だが、最後のあとがきで、阿刀田氏の長い作家キャリアで、ただ一作の、連作形式の本格推理短編集だと聞いて、おどろいた。
とてもユニークな8作の短編推理小説だった。
. . . 本文を読む
新しい13人の刺客の映画ノベライズ版の小説を読んでみた。
前回読んだものより、わかりやすく、現代風にすっきり
しているように感じた。
映画のノベライズ版というのは、はじめて読んだが、
どうも、本当の映画の脚本そのままに書かれているという
のでもないらしい。
ややこしいが、たとえば、小説では護衛が200人だが、映画では
300人だったりである。
映画の方は、ベネチア映画祭で好評だったが、賞を取 . . . 本文を読む