江戸川乱歩賞受賞作の中で、ひときわユニークな作品の一つと言ってよいのではないかと思った。
まず、設定である。ベートーベンが、探偵なのである。
モーツアルトがサリエリに殺されたのではないかというのは、有名な話だが、その謎を解くという筋立てだ。
しかし、ベートーベンを”わたし”として会話体で終始、進んでいくのには、ちょっと、驚いた。
一見、簡潔な会話のように思えるが意外 . . . 本文を読む
江戸川乱歩賞受賞作の”時をきざむ潮”を読んでみた。
この作者の藤本泉は、この作家自身がミステリーな作者だ。文壇との付き合いは一切避け、住所も定まらなかったという。
取材旅行が始まると、居を移すというのだ。
ドイツに転居して、フランスから子息に頼りを出したのを最後に消息を絶ったため、取材中に秘密警察に拉致されたという噂もあったらしい。
さて、この作品だが、三陸の海岸で . . . 本文を読む
イエスの次は親鸞か、と自分でも少々、思いつくままの読書になっている。
理由はいくつかある。
イエスに仏教で比肩するとなるとブッダかも知れないが、以前、手塚治虫の漫画でブッダ全巻を読んだことがある。
日本の宗教というと、高校の自由研究で読んだ親鸞の歎異抄が印象的で、親鸞には興味があって、もうすこし、読んでみたいと思っていた。
井沢元彦が梅原猛を信奉しているとのことで、梅原猛の書を読んでみたい . . . 本文を読む
ミステリーではないが、急に読みたくなって遠藤周作のイエスの生涯を読んでみた。
美術展を見るにつけ、宗教画を鑑賞するのに、キリスト教とかイエスの時代の歴史を知っていた方が背景がわかって面白いのではないかと思ったためだが、遠藤周作のイエスの生涯は、それ以上のイエスの生涯の謎に迫る。
たとえば、イエスと裏切り者のヨガの心の葛藤とかである。また、復活や奇蹟が本当にあったかどうかなどである。そういえば、 . . . 本文を読む
まったく、予測のできない本だった。
今までに読んだどの本とも違う作品だった。
選者の中島河太郎の巻末の解説の最後の言葉が効いている。
”本書は江戸川賞受賞作の中でも、もっとも永く読まれるに違いない。”
これは、おそらく、嘘偽りのない感動から自然に出た言葉に違いない。私も、まったくの同感である。
最初は、えっ。SFなの?と驚かされる。
しかし、すぐに、柳田国男を師 . . . 本文を読む
江戸川乱歩賞の受賞作の3作目に選んだのは、西村京太郎の「天使の傷痕」だ。
この作品を選んだのは、もともと、西村京太郎の作品が好きだったからだ。文章が、読みやすく、すっと頭に入ってくる。自然なのだ。
しかし、途絶えていた。理由は、テレビドラマ用の鉄道路線の名前のついたようなトラベルミステリーを敬遠していたためだ。
この作品の題名も、原題は、「事件の核心」だったというから、改題して良かったと思う . . . 本文を読む
江戸川乱歩賞の受賞作の2作目に選んだのは、薬丸岳の「天使のナイフ」だ。
これも文句なく面白かった。何しろ、3日で読み終えてしまったのだ。
こんなに短い時間で読んだのは、久しぶりだ。
それでいて、ただ、面白いだけでなく、少年犯罪の贖罪と更生という重いテーマについても、しっかり書かれていた。
この前に読んだ「13階段」のところで、盛りだくさんすぎるくらいと書いたが、こちらは、好対照 . . . 本文を読む
江戸川乱歩賞の受賞作というのは、どのくらい読んでいるだろうか?
下記、サイトに過去の受賞作があるので、ちょっと調べてみた。
http://shinjinsho.seesaa.net/article/19834981.html
どうも、下記3作くらいかなということになった。しかし最初の「高層の死角」は、古すぎて定かではない。
「高層の死角」 森村誠一 「写 . . . 本文を読む
松本清張の作品は、あまり読んでない。特に有名な作品ほど避けているようなところもある。
テレビや映画で、見たことがあるような作品のような気がしているせいかも知れない。
それでいて、松本清張の作品は、少しも古臭くなく、好きであり、ときどき、読んでみたくなる。
松本清張自身、絵に造詣があったようで、絵にまつわる作品が多い。私も絵に興味があるせいか、読みたくなり、この本を手に取った。
ある女流新人 . . . 本文を読む
先日読んだFEVER DREAMで、オーデュボンという鳥類学者の名前を知った。
そこから、この小説を読んでみようという気になった。
オーデュボンの発見したリョコウバトは、当時、全人口より多い50億もの数がいたが、それが、乱獲などにより絶滅してしまった。
何とも、不思議な作品だった。ミステリー小説と呼んで良いのか。
人間の言葉を話せる案山子が、その島の守り神のようになっていた。しかし、ある日 . . . 本文を読む
とにかく久しぶりに感動した。それほど、優れた作品だ。
あとがきの解説を書いた池上氏も同じ意見のようだ。
ファンが集まり、どれがベスト1かという話になると、「半落ち」、「クライマーズ・ハイ」、「陰の季節」、「動機」があげられるが、池上氏は、「第三の時効」をベスト1に推すとのことだ。
「クライマーズ・ハイ」は読んでないが、それ以外を読んだ限りでは、私もまったくの同意見だ。
6つの短編からなるが . . . 本文を読む
読んだことのない作家月間とでもいうか、短い期間に3作品を読んだ。
傑作歴史小説というこの作品は、佐渡島、八丈島などの島にまつわる短編小説7作品からなる。
どれも、質が高い上に、7作品それぞれが、個性豊かなストーリーからなっており、飽きることがなかった。
その中でも気に入ったのは、佐渡島、志賀島、隠岐島を描いた3作品か。
特に志賀島を描いた「金印」は、漢の委の奴の国王の印文で有名で、実際に発 . . . 本文を読む
短編部門で受賞したことのある横山秀夫の「動機」を読んでみた。
4作品からなる短編集だが、やはり、受賞した「動機」が、終わり方もさわやかで、図抜けている。しかし、それぞれに立場の違うものが、主人公となっており、新鮮であるのと同時に、ストーリーの意外性は、すごいなと感じた。
動機:保管していた警察手帳が紛失したことから、犯人が内部か、外部か、大騒動になる。そして、記者発表が近づいてくる。その時.. . . . 本文を読む
もう、2年以上前になるが、NHKの木曜時代劇で、居眠り磐音 江戸双紙を楽しみにしていた。
その原作を書いたのが、佐伯泰英だが、時代劇ではない小説を書いているというので、読んでみた。
ウィキぺディアで、佐伯泰英の略歴を見て、驚いた。1971年から、1974年まで、スペインに滞在して、闘牛専門の写真家になったり、スペイン語圏の冒険小説を書いていたが、売れず、廃業寸前になった中で、1999年に時代小 . . . 本文を読む
今年、横山秀夫にも少し、はまっている。
今回読んだ”真相”は、5短編からなる。
どれも、良質な作品だが、ちょっと、悲しくなる作品もあった。真相と花輪の海が、結構、好きな作品だった。他人の家も悪くない。
真相:自分の息子が10年前に殺された。その真相が暴かれる。終わり方が、気持ちの良い終わり方なのが救いだ。
18番ホール:ちょっと、ブラックな作品だった . . . 本文を読む