2021年、第十一回アガサクリステイー賞を受賞し、いまだに本屋にも並んでいる本書を読んでみた。
ロシアの女性狙撃手の話ということで、その主人公の意外性には、だれでも、少しは、興味を持つ作品だ。
今の、ロシアのウクライナ侵略にも関係するのかしらと思う方もいるかも知れないが、それはない。
第二次世界大戦でのナチスドイツとロシアの戦いの中での話だ。
4年間の戦いで、ドイツ7百万人、ロシア2000 . . . 本文を読む
本当に久しぶりに横溝正史の作品を読んだ。
これも、新聞のおすすめか何かを見て、選んだものだ。
表題の『死仮面』のほか、もうひとつ、逝去直前の作品という『上海氏の蒐集品』という小作品も入っていた。どちらも、そこそこ、面白かった。
死仮面のほうは、金田一耕助が登場する。
あまり、ストーリーについては、述べるのは、やめにしておこう。
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町田そのこのデビュー作である『カメルーンの青い魚』を含む5編の連作短編集を読んだ。
「女による女のためのR-18文学賞」という聞きなれない賞の大賞受賞作なのだが、その選考委員から絶賛されたのがうなづける。
素晴らしい才能に満ちあふれた作品群だった。ひさしぶりに文句なしの素晴らしい短編集に出会えた満足感に浸っている。
個々にどうこういう必要はないだろう。5編が、どう連作になっているかも面白いし . . . 本文を読む
『このミステリーがすごい!』の文庫グランプリを受賞した本作品を読んでみた。
父親が通り魔に殺され、母も失踪。
妹も遺体で発見されたうえに、保険金詐欺の疑いもかけられるというどうしようもない状況で、何とか、妹の潔白を信じて、行動する主人公の物語だ。
最後の解説の表題で、『二転三転四転五転の力業で読者をねじ伏せてくる』とあるのだが、なるほどとは思うが、ここまで、ひっくり返されるのも、あまり良い気 . . . 本文を読む
7編からなる短編集『海』を読んでみた。
そのうちの2編は、2~3ページと、こんな短い作品読んだことないというものだった。最後の解説で、『スケッチ』という言い方をしていた。それにしても、作品の短さに比べて、最後の解説が、長く感じた。
最後には、インタビューも載っていたが、これは、、小川洋子の作品への気持ちが伝わっていた。
さて、個々に書き始めると長くなるので、全般を通していえることは、発想や設 . . . 本文を読む
2022年の「週間文春ミステリーベスト10」や、2023年の「このミステリーがすごい 第4位」等、数々のミステリーランキングの上位になった作品だ。
極限状態での密室で、殺人事件が起こる。その密室から脱出するには?誰が犯人なのか?動機は?
最後の最後で、まったく予想のつかない結末も待っている。
正直言って、あまり、こういった小説は、好みではないのだが、一気に読んでしまったし、面白かった。著者の . . . 本文を読む
久しぶりに江戸川乱歩賞の受賞作(第68回)を読んだ。
中々、面白かった。いわゆる警察小説だ。
最後の選評も、面白かった。この作品を、候補作中、一番小説が下手だ。しかし、後から鍛えられないセンスやアイデアを評価するという声が多かったことだ。なるほどと思った。場面の切り替えが、唐突すぎて、前に登場してきた人物なのか読み返してしまった箇所があったし、不要な部分もかなりあるように思えた。わかりずらい部 . . . 本文を読む
芦沢央の5編からなる将棋ミステリー集を読んだ。
ミステリーと言っても、特別なトリックがあるわけではなく、また、謎解きがあるというのでもなかった。
理解できない不可思議とも言えるものに、一緒に答えを考えるような物語だった。
自分的には、最初の「弱い者」と「ミイラ」という作品が面白く感じた。
特に、「ミイラ」の独特な世界は、興味深かった。詰将棋の投稿に関する物語だ。丁度、今、次の一手問題を毎月 . . . 本文を読む
奥田英朗の「オリンピックの身代金」を読んだ。
丁度、パリオリンピックで、連日、熱戦を繰り広げられている中で、何となく、読んでみたくなった。
この小説のオリンピックの舞台は、1964年の東京オリンピックだ。
東京オリンピック開催のために、全国民が、躍起になって、準備、工事を推進していた。その中で、連続爆破事件の犯人、東大生、島崎国男は、五輪開催を人質に、8千万円を要求する。国家の威信をかけて、 . . . 本文を読む
荻堂顕の新潮ミステリー大賞受賞作である本書を読んでみた。読売の書評で、この作家のことを知って興味を持った。ちょっと、変わった作品であることはまちがいない。ストーリーとしては、少し前に読んだミッドナイトライブラリーに近いかもしれない。他の地域に逃げたり、現実に絶望して、人生から逃げるのを助けるのが主人公の女性だ。ミッドナイトライブラリーの場合は、自分で、やり直したい人生の分岐を選べたと記憶している。 . . . 本文を読む
浅田次郎の「帰郷」を読んだ。
いわゆる、戦争小説と言えるものだ。
帰還兵の話だったり、高射砲の修理兵の話、父が戦死した息子の話などなど、6篇の短編からなる。
一番、最初の「帰郷」が、救いもあり、好きな作品だった。最後の「無言歌」が、何とも、悲しく、救いのない中で、最後にふさわしい作品だった。著者は、私と同じく父母が戦争体験のある戦後第一世代である。それでも、こういった戦争小説が書けるのは、驚 . . . 本文を読む
奥田英朗の「向田理髪店」を読んだ。
少し、軽いものを読みたくなると、奥田氏の作品を手に取ることにしている。
この作品は、「空中ブランコ」に比べれば、いたって、まじめな作品だ。
かっては、炭鉱で栄えたが、今では、寂れ、高齢者ばかりになった北海道の町で、理髪店を営む主人公の物語だ。こんな町では、何の希望もないから、若者は、外に出ていくべきと、悲観的に考える主人公に対して、息子が、帰ってくるという . . . 本文を読む
玉岡かおるの新田次郎賞、舟橋聖一生ダブル受賞作の「帆神」を読んでみた。
新田次郎賞受賞作品は、結構、自分の好みにあうようだ。
船乗りでありながら、船の新しい帆布の創造、拡大に貢献して、かつ、港の浚渫までやってのけ、士分にまで上り詰めた工楽松右衛門の歴史小説と言える。
また、女性作家のせいか、男女の恋愛の想いについても、描かれている。
少々、長く、読むのに苦労したが、工楽松右衛門という人物の . . . 本文を読む
ときどき松本清張が読みたくなる。正直言って、がっつりは、読んだことがない。
最近、テレビで、松本清張の作品をドラマ化したものを見た。「ガラス...」とかの題名だったが、結構、面白かったので、読んでみたくなった。
この短編集には、初期作品8作品からなる。一作品、「張り込み」は、読んだことがあると思った。
その他の作品は、若干、トリックというか、ネタにこっている感じがした。その辺が、文体などは、 . . . 本文を読む
白石一郎の直木賞受賞作、「海狼伝」を読んだ。
白石一郎の作品は、以前にも読んだことがあるが、久しぶりだ。
戦国時代、海で育った笛太郎が、村上水軍の海賊と行動をともにするようになり、新しい船を建設して、当時の中国に旅立つまでを描いている。海洋冒険時代小説の最高傑作と言われているが、なるほどと思った。
当時の船同士の戦い方や、いろいろな船の種類、操船の仕方など、海流の影響など、詳細に描かれており . . . 本文を読む