89歳の日々

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近藤紘一 「夏の海」「仏陀を買う」を読んで・・

2012-05-10 22:03:33 | 読書

近藤紘一が特派員としてヴェトナムの幽霊長屋に住んでいて                年齢も分からない子供連れのそこの女主人との結婚した事は有名な事でした。 

結婚届けにサインした事は・・「まさにあっという間の事で、いまだに呆然とし        愕然とし又眼をこすっては愕然とし呆然としております」と                  「仏陀を買う」に書かれています。

「縁あって父親になった時、私は彼女を「ブタ」と名付けた。                  17歳過ぎて嫌がるので「良い名を思い付いたぞ、クロコブタ                  これなら良いだろう」継娘に対するこのような文章も有ります。 

近藤紘一は、ものすごく明るく屈託がない堂々としたヴェトナム女性と結婚し、               彼女に対しては寛大すぎるほど寛容であったと言われます。

”「奥さんを思い出す?」と聞かれ「ああ、毎日思い出すよ」と答えた”と           小説に書いています。                                         彼は何処に行っても必ず前夫人の写真を飾っていたそうです。 

たまたま「夏の海」を読みまして、ヴェトナム女性との結婚の                 いきさつに至った一端が理解出来た様に思いました。 

「夏の海」は前夫人の遺稿集に書かれたもので、                        ルポルタージュ「目撃者」のみに集録されています・・・

近藤紘一の父は東大医学部教授で、いかにも秀才らしい                    マスクの彼は事実、仏文1番で卒業し同級生の美しい恋人は                     フランス大使のお嬢様、誰もが羨むような結婚をします。

「夏の海」では毎年美しい海で遊んだ思い出や、転勤地のパリでは                 度々お客を招き、料理上手な彼女が複雑なフランス料理やケーキを             楽しげに作り、彼は何度もマルシェに買い足しに行ったり・・・

詩の様な幸せな生活が描かれている美しい文章です。                             その結婚はたった6年で 彼女の不幸な死で終わり・・・、                   近藤紘一はそれを一生の負い目に感じていたようです。 

彼が45歳で病死しなければ、美しい同級生との結婚の物語を                心を打つ小説に書いた事でしょう。                                 23歳で結婚し29歳で彼女を失った彼は、ヴェトナム女性の妻にも、             若くして亡くなった前妻を「毎日思い出すよ]と言っていたのです。 

 


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