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 富士見文庫から出版された、モーリス・サイモン著、大出健訳のゲームブック「パックス砦の囚人」をプレイしました。




ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)は1974年二人のゲーム作家の考案により、アメリカのTSR社から出されたロールプレイングゲームの決定版だ。ダンジョンマスターと数名のプレイヤーで仮想世界を冒険するこのゲームは、画期的なシステムを編み出し世界中で大ヒットした。本書はD&D及びより高度なアドバンスドD&Dをもとにして作られたゲームブックである。
きみも魔法と怪物が支配するヒロイックファンタジーの世界を冒険してみよう。


モーリス・サイモン著、大出健訳「パックス砦の囚人」(富士見文庫)裏表紙より




 レンジャーのバーン・バレンシールドが2日ぶりに故郷のソーラス村に帰ってみると、村は黒煙に包まれていました。ドラゴンの襲撃によって村は焼かれ、ホブゴブリンやドラコニアンたちによって村人たちは今まさに連れ去られようとしていたのです。奮闘むなしく囚われの身となってしまったバーンたちが連れて行かれたのは、アンサロンのドラゴン王・バーミナードが支配する、パックス・サーカスという山中にそびえたつ巨大な砦でした。鉄鋼山で強制労働に就かされている囚人たちを解放するため、さらにはバーミナードの野望をくじくため、バーンは愛剣ファイアボーンを手に立ち上がるのでありました。

 本書はD&D(というよりはAD&D)、およびその小説版である「ドラゴンランス戦記」などと、土地・人物・歴史など共通の世界を舞台にした作品となっています。とは言え、かなり初期に出版された本なので、ドワーフがドウォーフになっていたり、(多分)オーガーがアーガーになっていたりするなど、現在多く用いられている表記とは異なる部分もあります。まあ、私はD&Dの赤箱、青箱くらいまでをプレイした程度で、小説の方はぜんぜん読んだことがなくてよくわからないんですけどね。

 AD&Dのゲームブックといっても、システム面は本家とはまったく異なる、ゲームブックオリジナルのとてもシンプルなものとなっています。
 まずは基礎技術点の9点を、戦闘のときに用いる戦闘技術点、探索や隠密行動のときに用いる偵察技術点、身体の頑丈さに頼るシーンで用いる基礎体力点の3つに割り振ります。それぞれの値にサイコロ1個なり2個なりの値をプラスし、一定値以上なら成功とか、そんな感じです。
 生命点は30+1dで決定。これが0になると死亡します。バイアスする数値が大きいので、乱数の要素はあまり大きくありませんね。
 そして特徴的なのが経験点。1dで決定しますが、これは冒険中、任意の判定のときに消費することで、さいころの目にプラスすることができます。経験点はあまり多くないのですが、場面によっては割と便利に使うことができますね。特に2dでの目標値が7前後の場合ですと、1、2点の差でも確率的に大きな差になってきますからね。経験点は冒険の結果プラスされることもあり、それは次回以降の冒険に引き継がれていくことになります。



 私はFF人間なのでやっぱり戦闘を重視したくて、戦闘技術点を5、偵察技術点を2、基礎体力点を2としてプレイしてみました。

 ゲーム的な側面はとてもシンプルで、基本的には3種類の技能値を用いた判定のみで、あとは生命値の増減をメモしていればOKです。
 で、序盤からとにかく、選択ミスによるエンドが多いですね。死亡したりするだけでなく、事件に深くかかわる前に早々に逃げ出して終わりというケースもあります。で、冒険の途中で斃れてしまったような場合でも、描写に味があったり、シチュエーションが面白かったりするので結構楽しめます。大体は選択ミス→即エンドなので、やり直すのも容易ですしね。

 特徴的なのは、1パラグラフが長くて、読み物としてしっかりしているという点でしょうか。長い場合は3ページくらいにまたがっているケースもあります。元ネタがしっかりとしているためか、描写が丁寧で、雰囲気がありますね。主人公の弟キーガンや、ケンダー族のウィロー、エルフのエッサなど、登場人物も個性的で、敵方である砦の住人にも、まぬけだったりお人よしだったり、憎めない連中も多く存在しています。けしてハードな展開だけでなく、そこに暮らす人々の人間的な温かみやユーモアがあり、ゲームの舞台という人工的な臭いは感じられませんでした。

 最終パラグラフは208で、これが多分True End だと思うのですが、バーミナードを倒しそびれていて、ちょっと中途半端な感じです。どうやらこれはBest End ではないようですね。これが小説版というか、いわゆる正史の展開なんでしょうね。重要キャラであるバーミナードがこんなところでやられてしまうというのは、どうやらまずいことのようです。
 もっとも、主人公大活躍できっちりと事件にケリをつける結末もありまして、最終パラグラフこそ正史に譲っていますけど、ゲームブック的なBest End はそちらということになりそうです。やっぱりせっかくゲーム化するのですから、こういったカタルシスを得られるような展開も無くてはならないでしょうね。

 剣と魔法の世界を舞台としたヒロイックファンタジーではありますが、ゲームブックとしては、Fighting Fantasy 辺りよりもむしろ、海外の子供向けゲームブック(これとか、これとか)に近いものを感じました。パラグラフの構造が単純なので、トライアンドエラーで正解ルートを発見するのはそれほど手間ではなく、ゲーム性は薄めですが、純粋に読み物として面白く、いろんなルートを読み進めるのも楽しめました。
 原作となるAD&Dやドラゴンランスの世界についてはほとんど知らないのですが、時代が時代なら、このままドラゴンランス戦記とかを読み進めることになっていたかもしれません。まあドラゴンランスは、シリーズも長く、複雑で、入手困難なものも多いようなので、ちょっと手は出しにくいですけどね。でも、このゲームブックシリーズについては、今後も重点的にチェックしていきたいと思います。


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