コンサルタントのネタモト帳+(プラス)

ビジネスにも料理にも役立つ“ネタ”が満載!社労士・診断士のコンサルタント立石智工による経営&料理ヒント集

政策分析 ~ 自民党(2)

2005-08-21 | 国政選挙SP
昨日に引き続き自民党の政策分析です。

自民党の政策分析(3)~テーマ4: われわれの子どもたち


自民党政策分析の最後は、「われわれの子どもたち」です。教育・少子化対策を中心に、12個の政策が書かれています。

◆「大きな政府」志向と判断される政策
幼児教育重視の国家戦略(幼児教育の無償化)(093)
義務教育の質的向上のための教育改革(教育免許更新制の導入、専門職大学院制度の創設、新たな教員評価制度の確立、国による学校評価ガイドラインの策定、外部評価システムの導入)
学校の安全管理の徹底(学校施設の耐震化、防犯設備の拡充の推進)(096)
奨学制度の拡充による学生支援(098)
私学助成の充実を推進(099)
児童手当制度や子育て支援税制について検討(「社会全体で負担を分かち合う」の考え方を念頭に、子育て期の経済的負担を軽減)(100)
地域の総合的なネットワークを構築するなど、子育てを支えあう体制を確立(100)
誰もが利用できる保育サービスを充実(100)
育児休業取得や育児期短時間制度の導入推進並びに中小企業に対する重点的な支援(100)
虐待を受けた子どもへの支援の強化(100)
小児救急体制の整備と意思の確保対策、出産・小児医療に関する負担の軽減を推進。(100)
フリーター・ニート対策の強化(103)

◆「小さな政府」志向と判断される政策
高等学校教科書の検定について、必要性の有無を検討(095)

◆いずれとも判断されない政策
学習指導要領全体の見直し(095)
個性輝く大学づくりの推進(097)
青少年健全育成の推進(101)
農山漁村における体験学習などの推進
「文化力」の向上と豊かなスポーツ環境の推進(104)

このセクションでも、多くの政策が「大きな政府志向」と分類されます。特に少子化対策については、「社会全体で子育てに掛かる負担を分かち合う」という考え方を揚げており、子育てに対して国が積極的に関与する姿勢が見られます。私学助成についても、具体論は示されていないものの、拡充の方向が見られます。

一方、このセクションで唯一「小さな政府志向」と判断された「高等学校教科書検定について、必要性の有無を検討」については、今後「国として教育の内容にどこまで関与するか」という点に対して一つの方向性を示しており、注目されます。

このように並べてみると、自民党の基本スタンスは「経済・行政分野については小さな政府志向、社会保障(年金、医療保険)分野は少なくとも現状維持、生活安全や子育てに対しては大きな政府志向(社会全体での負担共有を拡大)」というようにまとめられます。自民党自身は「小さな政府を目指す」と宣言していますが、政策具体論の中では、必ずしもそうはなっていない部分が見られます。

生活安全や子育て分野を「広い意味での社会保障」と捉えると、この部分では大きな政府志向、すなわち「富の再配分機能の拡大」に働きます。短中期的にみれば経済・行政分野に関する「小さな政府」志向と相殺されることになると思われますが、やはり長期的には租税負担が拡大する方向に向かいます

主要2党の政策を分析して・・・


さて、ここ数日にわたり「大きな政府志向か?小さな政府志向か?」という視点から、民主・自民の主要2党の政策を分析しました。政策の前面に押し出している部分で比較すると、民主は「各側面での社会保障の拡充を目指す⇒大きな政府志向」であり、自民は「経済・行政分野の政府機能の縮小を目指す⇒小さな政府志向」と見ることができます。しかし、社会保障を中心とした個別の政策では「どちらも似たり寄ったり」のところもあり、争点が見えにくい部分があります。また、民主党のはいわゆる「サラリーマン世帯」を「世帯像のターゲット」として設定している様子が伺えますが、自民党はどのような世帯をターゲットとしているのかがはっきりしない(=全方位的なターゲット像としている)のが特徴です。

今回の政策で、両党ともにはっきりとした具体論を示していないのが「税制」です。租税は、政府権能の基本的な部分を占めており、「富の再配分機能」のに直結する根幹を担う部分です。(例えば、個人所得の課税累進性の強弱は「富の再配分機能」の強弱に直結します。)この点についての各党の政策は、辛うじて下記の言及があるのみです。



◆民主党・・・連合との政策協定
国民、特に雇用労働者を標的に安易に税負担増を強いるのではなく、積極的に財政構造改革をはかるとともに、税制における所得再配分機能を強化し、不公平と格差を是正する税制改革を実現する。(1)

◆自民党・・・政権公約
引き続き聖域無き歳出改革に果断に取り組みながら、国民の合意を得つつ、新しい時代にふさわしい税体系を構築する。その中で所得税については、所得が補足しやすい「サラリーマン増税」を行うとの政府税調の考え方はとらない。(009-7)

これまで、税制については「政府税調」が中心となった検討が行われてきたこともあり、各党は個別論(主に反対)は述べても、税体系全体のあり方についてはほとんど述べられてきませんでした。しかし、各政党が「真に政策で選んで欲しい」と望むのであれば、国としてあるべき税制・税体系をもっと各党内で真剣に議論し、国民に提示しなければならないと私は考えます。個人的には「『税制のあるべき姿』なくして、政策なし」といっても良いとすら思っています。

このblogでは、これらの政策分析を踏まえ、「政策からみた『投票先の選び方』」を考えて生きたいと思います。

なお、時間的な都合もあるため、民主・自民を除いた他政党の政策分析は行わない予定です。予めご了承ください。(本来であれば、政権与党の一角を担う公明党の政策は分析すべきと思いますが、個人で書いているblogであり、時間的制約もありますので、何卒ご容赦願います。)

最新の画像もっと見る