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特定社労士:いよいよ試験迫る!

2006-06-11 | オボエガキ
昨日・今日と2日続けて特定社会保険労務士に向けた特別研修を受講。今日で全63時間の受講時間のうち60時間までが終了することになりました。来週土曜日の午前中にあと残りの3時間の研修を受け、午後には紛争解決手続代理業務試験を受験することになります。

さて、来週の試験に向けて、今までの研修で学んだ知識を整理していかなければならないのですが、そこで一つ困ったことがあります。それは、今回が第1回の試験になり、「出題形式」に関する予見が出来ないということです。

とはいえ、全く何も手がかりがないかといえば、全国社会保険労務士会連合会の報告書によると、一応「司法書士が『認定司法書士』となる際の試験内容・制度」というものが念頭に置かれているようですので、多少の参考にはなるのではないかと考えています。(認定司法書士の考査試験問題の例と認定基準はこちら)

ということで、(内容は個別労働紛争に関するものになるとして)同様の出題形式となることを仮説に置くと、少なくとも次のような知識は整理しておく必要があるのではないかと感じました。

(1)主張立証の根拠となる法理論(民法と労働法の一部)
(2)「紛争の目的物」の識別と表現方法
(3)「要件事実の考え方」にあわせた論理展開(パターン別抗弁-再抗弁の流れ)
(4)社労士法における業務範囲や権限倫理に関する規定(2条、20~22条+23条の削除)


ということで、上記の4点について「オボエガキ」としてポイントをまとめました。

なお、下記のポイントまとめを含め、本エントリは、あくまでも特別研修の一受講生である筆者の独断と偏見によるものです。「出題予想」としての信頼性は全くありませんし、内容が適切であるか、予めその旨をご了承頂いた上でご覧頂ければ幸いです。


(1)主張立証の根拠となる法理論(民法と労働法の一部)


研修の中(特に後半)では「(広い意味での)解雇」に関するテーマが多かったので、この点についての重要条文はいくつか「暗記」しておきたいところです。


雇用契約の基本条文


民法623条(雇用)
雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

単独行為としての解雇や辞職の根拠条文


民法627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
当事者が、雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申し入れの日から二週間を経過することによって終了する。(2項は省略)

解雇権濫用の法理


労働基準法第18条の2(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。


(2)「紛争の目的物」の識別と表現方法


認定司法書士の考査問題では「訴訟物」について事例から拾い出すような設問がありました。特定社労士は裁判手続によらない「あっせんの場での解決」ですが、「紛争の目的物」という形で今回の試験でも同様の問題が出題されるのではないかと十分に推測されます。

ということで、主な「紛争の目的物の表現方法」をテキスト151ページから引用します。


解雇(普通解雇、懲戒解雇、整理解雇)


労働契約上の権利を有する地位にあること

配転命令


○○○○に勤務する労働契約上の義務がないこと

有期雇用契約の雇止め ※テキスト外からの追加


(東芝柳町パターン)期限の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあること
(日立メディコパターン)期限の定めのある労働契約上の権利を有する地位にあること

賃金支払い


労働契約に基づく賃金支払請求権

就業規則の不利益変更


従前の就業規則に基づく労働契約上の権利の実現を求める給付請求権

解雇予告手当を請求する権利


労働基準法第20条第1項本文に基づく解雇予告手当支払請求権

■ポイント1:訴訟物は『抽象化された審判の対象』⇒具体的な金額は出てこない
■ポイント2:給付を求める場合には『○○に基づく△△△請求権』となる

(3)「要件事実の考え方」にあわせた論理展開


今回の研修(特にテキスト151~ゼミナール)では、「要件事実の考え方」と『請求原因-抗弁-再抗弁-再々抗弁・・・』という攻撃防御の論理展開について詳しく説明がありました。そこで、グループ研修用課題の一部を題材に「要件事実」と論理展開についてまとめてみたいと思います。(注:あくまでも筆者の個人的見解によるものです)


設例1(申請書起案用)の場合


【訴訟物】
1:労働契約上の権利を有する地位にあること
2:大阪支社に勤務する労働契約上の義務がないこと
3:労働契約に基づく賃金支払請求権
【請求原因事実】
1.丙川君子は、平成8年4月1日にY会社に入社した。(労働契約の締結)
2.Y会社は、丙川君子に対し、平成18年2月27日、大阪営業課への配置転換を内示し、同年3月1日付けで配置転換命令(以下、『本件配転命令』)を発令し、同年3月21日から大阪で勤務することを命じた。(使用者による配転先での就労義務の主張)
3.Y会社は、平成18年4月1日、丙川君子に対し翌4月2日付けにて懲戒解雇処分を行った。(使用者による雇用契約終了の主張等)
4.懲戒解雇処分が行われた際の丙川君子の賃金は月額25万円であった。(労働契約中の賃金に関する定め)
【抗弁】※本文中には具体的記載なし
1.配転命令権の行使(場合によって胃は、配転に関する就業規則の定めも加える)
2.就業規則上の懲戒事由の定め
3.懲戒解雇事由に該当する事実の存在
4.懲戒解雇をしたこと
5.解雇予告後30日を経過したこと( 又は 解雇予告手当の支払い、除外事由該当)
【再抗弁】※具体的記載は省略
1.勤務地限定の特約の存在
2.配置転換命令権濫用の評価根拠事実
  -生活上の著しい不利益の存在
  -業務上の必要性の不存在
  -人選の合理性の不存在
【再々抗弁】※本文中には具体的記載なし
1.勤務地限定の特約の不存在
2.配置転換命令権濫用の評価障害事実


なお、この要件事実の流れについてはテキストの復習のほか、「労働事件審理ノート(山口幸雄、三代川三千代、難波孝一共著、判例タイムズ社)」が大変参考になります。(今ならAmazon.co.jpで2日以内の発送になっています。ちなみに、執筆時点でのランキングは「本で131位」でした(^^;;)

(4)社労士法における業務範囲や権限倫理に関する規定


最後は特定社労士の業務範囲・権限・倫理に関する問題に対する対策です。認定司法書士の考査問題を見ると、受任の可否や業務の範囲について「結論と理由」を述べさせていますが、これと同様の問題が出題されるとすれば、結論に至る「理由」を述べる段階では制限字数の中で「関連する条文を引用して記述」することも視野に入れる必要あると考えられます。

ただし、今回の試験案内では適用法令(どの時点で施行されている法令を念頭におくのか)が明記されていません。したがって、H17年改正時点での施行分で解答すべきなのか、それともH19年4月に予定されるADR法施行の日をもって解答すべきなのかは若干の疑問があります。しかし、特定社労士試験という性格を考えれば、H19年4月施行予定の法令にて理解をすることがきっと求められるのであろうと推測されます

ということで、関連法令のチェックです。

社労士法第2条1項【要旨】


(社会保険労務士の業務)
社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。
1の4 個別労度関係紛争の解決の促進に関する法律第6条第1項の紛争調停委員会における同法第5条第1項のあつせんの手続及び男女雇用機会均等法第14条第1項の調停の手続きについて、紛争の当事者を代理すること。
1の5 都道府県労働委員会が行う個別労働関係紛争に関するあつせんの手続について紛争の当事者を代理すること。
1の6 個別労働関係紛争(紛争の目的の価額が60万円を超える場合には、弁護士が同一の依頼者から受任しているものに限る)に関する民間紛争解決手続であって、個別労働関係紛争の民間紛争解決手続の業務を公正かつ的確に行うことができると認められる団体として厚生労働大臣が指定するものが行うものについて、紛争の当事者を代理すること

社労士法第2条3項【要旨】


(社会保険労務士の業務)
紛争解決手続代理業務には、次に掲げる事項が含まれる。
1 紛争解決手続について相談に応ずること
2 紛争解決手続の開始から終了に至るまでの和解の交渉を行うこと
3 紛争解決手続により成立した和解における合意を内容とする契約を締結すること。

社労士法第21条【全文】


(秘密を守る義務)
開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員は、正当な理由がなくて、その業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、又は盗用してはならない。開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員でなくなった後においても、また同様とする。

社労士法第22条第1項【全文】


(業務を行い得ない事件)
社会保険労務士は、国又は地方公共団体の公務員として職務上取り扱った事件及び仲裁手続により仲裁人として取り扱った事件については、その業務を行ってはならない。

社労士法第22条第2項【全文】


(業務を行い得ない事件)
特定社会保険労務士は、次に掲げる事件については、紛争解決手続代理業務を行ってはならない。ただし、第3号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合には、この限りではない。
1 紛争解決手続代理業務に関するものとして、相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件
2 紛争解決手続代理業務に関するものとして、相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくものと認められるもの
3 紛争解決手続代理業務に関するものとして受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
4 開業社会保険労務士の使用人である社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員もしくは使用人である社会保険労務士としてその業務に従事していた期間内に、その開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人が、紛争解決手続代理業務に関するものとして、相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件であって、自らこれに関与したもの
5 開業社会保険労務士の使用人である社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員もしくは使用人である社会保険労務士としてその業務に従事していた期間内に、その開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人が、紛争解決手続代理業務に関するものとして、相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくものと認められるもの


なお、繰り返しになりますが、上記のポイントまとめを含め、本エントリは、あくまでも特別研修の一受講生である筆者の独断と偏見によるものです。「出題予想」としての信頼性は全くありませんので、ご了承願います。

とはいえ、実務で紛争解決手続の代理人として行っていこうとすれば、上記のような話題は「当然必要となってくるポイント」であると考えています。まずは目先の試験に合格することが大事ですが、その後にも十分生きてくる知識や考え方として、しっかり理解を深めておきたいと考えます。

何はともあれ、来週にはいよいよ試験です。気を引き締めて頑張りたいと思います。

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