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特定社労士:紛争解決手続代理業務試験-再現解答(1)

2006-06-26 | オボエガキ
さて、ようやく時間がとれましたので、以前のお約束どおり平成18年度第1回紛争解決手続代理業務試験(特定社会保険労務士試験)の再現解答を掲載いたします。

ここに掲載する解答は、当日私自身が解答した内容の記録をベースに改めて書き起こしたものです。細部について若干表現の違いはあるかもしれませんが、95%程度の再現率になっています。

もちろん、あくまでも「私が当日行った解答」ですので、正解かどうかは一切分かりません。とはいえ、とりあえず合否が出れば「妥当だったかどうか」は自動的に分かることになります。(^^;;

なお、スペースの都合上このエントリには解答のみを記載いたします。当日の問題につきましては、全国社会保険労務士会連合会のホームページをご覧ください。

では、第1問から。
(1)Y社の支店閉鎖によるXの解雇有効性の一般的判断基準(箇条書き)
・経営上の必要性
・人選の合理性
・手続の妥当性
・解雇回避努力

小問(1)は解雇の有効性の一般的な判断基準を問う問題でした。今回の出題の事例は「整理解雇」の典型的なケースですので、整理解雇の4要件/要素を解答することが求められたのではないかと考えられます。

(2)「求めるあっせんの内容」(箇条書き)
・Y社は、XがY社における労働契約上の権利を有する地位にあることを確認すること。
・Y社は、Xに対して平成18年6月1日以降本件解決の日までの賃金月額19万円を
支払うこと
・Y社は、Xに対して平成18年6月1日以降本件解決の日までに発生した賃金につき、
各月の支払日の翌日から起算して年6分の割合で算定した金員を支払うこと。

小問(2)はXの立場で「求めるあっせんの内容」を解答させる問題。「求める権利関係」を踏まえてとありますので、「労働契約上の権利を有する地位」「労働契約に基づく賃金」そして「遅延損害金」の3点を押さえる必要があるかと考えました。

とはいえ、実務においては、相手方に対する“和解に向けたメッセージ”を伝えるために意図的に「解雇を撤回すること」などの表現を用いたり、あえて「遅延損害金」には触れないなどのことも考えられます。これはあくまで「頭の中での考え方を法律ロジックで整理するためのもの」と考えればよいのではないかと思います。

(3)Xの主張【250字以内】
まず、人員の合理性にかけることを主張する。本件では、地元雇用社員は解雇されているが、技術系社員については地元に残る場合にでも業務委託先への出向という形で雇用が維持されている。正社員と地元雇用社員の間には、他への転勤の有無を除いてその地位に差があると考えることはできない。したがって、地元雇用社員のみを解雇対象とすることに合理性はない。また、地元雇用社員の中に退職への異議を述べているものが複数名いることから、十分な説明が事前に行われているとは言い難く、手続の妥当性を欠くものと主張することができる。(249字)

ここでは、Y社の「地元雇用社員であり、支店閉鎖で当然解雇となる」という主張(抗弁)に対してのXの反論(再抗弁・予備的抗弁)を行うことが求められています。Xが行い得る反論としては「解雇権濫用の評価根拠事実」を示すことになりますが、これは(1)で解答した整理解雇4要件のうち、主張できそうな要件をピックアップして事実とともに主張することが必要だと思われます。

私の場合には「人選の合理性」「手続の妥当性」をそれぞれ否定する形で主張をまとめました。

(4)Yの解決努力【250字以内】
まず、会社の経営状況と、雇用をこのまま継続することが困難であることを再度説明する。その上で、本来支給義務の無い退職金を2ヶ月分支給すること、また雇用保険の基本手当が支給されることによって、当面の生活保証となっていることについて理解を求める。ささらに、将来的な生活の保障については、再就職先を必ず見つけるまでの約束はできないまでも、Xの再就職にあたっては会社として出来る限り支援の努力を行うことを提案し、Xが抱える将来的な生活の不安が少しでも和らぐような対応を行うことが考えられる。(240字)

この問題は非常に悩ましい問題です。なぜなら「もともとY社が要求している解決のスペック」がこの設例ではわからないためです。ただ「あっせんの土俵に乗っている」ということから、ある程度は「円満な和解を求めている」と考えるのが自然なのではないかと考え、これを前提に前述のような解答をまとめました。

私の解答では、「自社での雇用の維持はこれ以上は困難であること」を前提に、「当面の生活保証」と「将来的な生活の保障」に対する企業側で出来る限りの努力を示すことにしました。実際にこのようなケースに直面した場合には、企業側としては解決金としての何らかの金銭補償までは譲歩可能かもしれませんが、再雇用というのは恐らく困難であろうと考えます。

(5)支給された退職金の取扱い(200字)
Xは、本件の解決が行われるまで、振込みを受けた金銭を別立ての預金に移す等の措置を講ずることによって、誤って消費しないよう何らかの保全のための措置を行うべきである。なぜなら、本金銭を消費することは、Y社に対して退職金を受け取る意思があった、即ち本件解雇を受け入れる意思があったとの誤解を生じさせる可能性があり、和解の成立に向けて不利に働く可能性が考えられるためである。(183字)

これも難しい問題です。というのも、まず問題が「あっせん手続中の退職金の取扱い」を聞いているのか、それとも「あっせん終了後の退職金の取扱い」を聞いているのかが分からないためです。私は一応前者(手続き中)の説をとり、解答を行っています。

この前提で考えると、とりあえず必要なことは「受け取る意思があったと誤解させるような行動」を(例え過失であっても)行わないようにしなければならないということではないかと私は考えました。そこで必要となるのが「何らかの保全措置」ですが、私が例示した選択肢は「別立ての預金口座に保管する」という非常に簡易な方法です。ほかにも「代理人がいったん預かる」「法務局へ供託する」等の措置が考えられるのですが、金額の大きさや労働者側で負担無く行い得ることとして、簡便な「別立て預金」の方法をあえて例示しています。

なお、ここでの選択として「会社に返却する」ということも考えられるのですが、これは会社側には決していい印象を与えませんので、和解成立を目指すという立場からは、取り得ない選択肢ではないかと私は考えました。

第2問の再現解答については、また明日のエントリにてご紹介します。

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