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指定取消問題:「強い行政指導」って何なんでしょう?

2007-06-07 | よもやま話
コムスンの介護事業所指定取消と、その対応としての事業譲渡に関する一連の流れの中で、厚生労働省が「強い行政指導」を行ったとのことです。

コムスン事業譲渡:「凍結すべき」と見直し指導 厚労省(毎日新聞)


訪問介護最大手「コムスン」の親会社のグッドウィル・グループ(GWG)が、コムスンの全介護サービス事業を、連結子会社の日本シルバーサービス(東京都目黒区)に譲渡するとの基本方針を明らかにした問題で、阿曽沼慎司・厚生労働省老健局長は7日、コムスンの樋口公一社長を同省に呼び、「利用者や国民の理解は得られず、譲渡は凍結すべきだ」との見解を伝え、計画を見直すよう行政指導した。

 会見した阿曽沼局長によると、厚労省側は(1)最初の事業所更新ができなくなる来年4月まで責任を持って現行サービスを提供する(2)同一資本グループの別会社への事業譲渡は利用者や国民の理解が得られない(3)7月末をめどとする日本シルバーサービスへの事業譲渡は凍結すべきである(4)今後の受け皿作りは厚労省とコムスンの間で十分に調整する--との内容を伝えた。樋口社長は「承りました。努力します」と答えたという。
(以下略)

会見を行った局長も「国に(譲渡を撤回させる)権限はなく、強い行政指導という形で申し上げた」と認めている通り、今回の行政指導というのは「根拠の無いもの」であり、「なんとなくの世間の雰囲気」に載っているだけのものに過ぎません。コムスン側としては「真摯に対応」といっていますが、別に単なる「お願い」に過ぎませんので、自分たちが「事業譲渡という形でサービスの継続を担保するこそこそが、直接的には現在の多くの利用者と従業員に対して、間接的には介護を必要としている人々の社会的要請に応えることなのだ」といわれたら、反論の余地がなくなってしまうのではないかと感じています。

また、この局長は「倫理や信頼性の観点から、譲渡ありきでなく、まず凍結して再度の検討をしてほしい」という話しをしているようですが、倫理というものはどこに基軸を置くか(行政の意見に盲目的に従うか、自分自身が最良と考える方向に進むか)ということでも変わってしまいます。また、信頼性を判断するのは行政でも世論でもなく「利用者」という名の市場そのものなわけですから、市場が拒否して自然に淘汰されるならともかく、行政の一方的な判断で市場から退出させるように促すというのは、結果として健全な市場や業界の発展が望めない状況しか生み出さないのではないかと私には感じられます。

厚生労働省というのは官庁の中でも“規制”を司る要素が強いのでこのような発想になってしまうのかもしれませんが、「民間はほっておくと悪いことをし始めるから、規制することで健全性が保たれる」というのはずいぶんと古い発想だなぁと私はつい感じてしまいました。

(6/8追記)
go2cさんのブログでは、厚労省の対応について非常に的を得た表現をされています。
もともと巨額の不正請求を今まで見逃していたことの挽回だか言いわけだかのために厳しい処分で帳尻を合わせようという魂胆が透けて見えるような気がします。
そうでなかったとしたら、単に監督権という「伝家の宝刀」の抜き方を間違えた
のでしょう。

コムスンが悪いとわめきたてるのではなく、基準とズレていたなら、早期に是正を求めることができなかった厚労省の責任というものはさらにしっかり問われなければならないと私も感じます。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
制度設計の議論が必要 (go2c)
2007-06-09 16:33:44
ご紹介いただきありがとうございます。

「強い行政指導」にたよらざるを得ないというのは、許認可や監督制度に欠陥があるということですよね。
新しい制度をつくるときには大概他の制度をもとにするのですが、介護保険制度の実態がどうなるか、という予測(制度設計の前提)がうまくいかなかったということなんだと思います。

そうだとすれば、「処分逃れ」を叩くための法改正でなく、利用者に影響のないような監督処分・許認可のあり方を考えるべきだと思います。
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Re: 制度設計の議論が必要 (Swind)
2007-06-09 19:12:14
go2c様>
コメントありがとうございました。

介護保険については、健康保険類似の仕組みを導入してしまったところに「最初の失敗」があるのではないかというのが最近の私の仮説です。

医療については「この病気ならこの治療」という形でそれなりに標準化(≒サービスの均質化≒サービス単価の統一)が可能ですが、より「日常の生活」に近い介護の場合には個別具体的に求められる内容が相当異なるわけですから、全く異なる制度設計が必要となるはずですね。

今どき「行政指導≒行政のコントロール」でなんとかなると思っているのがどうしても気になります。、まして厚労省は既に「身内から火」を出しているわけですから・・・・。
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