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指定取消:「コンプライアンス・リスク」か「行政リスク」か?

2007-06-07 | マネジメント
コムスンの介護事業所指定取消し問題については、一夜明けても様々な報道が続いていますが、全国的に影響が大きな問題であるにも関わらずやや「腰が引けた」報道が多いのが気になります。

そんな中、昨日のエントリでも追記させていただきましたが、グッドウィルグループとしては、「グループ内での営業譲渡」という形で指定取消しを乗り切ろうという判断を行ったとのことです。これについては、asahi.comの記事にもあるとおり、厚労省側も認めざるを得ないようです。

コムスンの全事業「グループ子会社へ」 処分骨抜きに(asahi.com)


(前略)
GWG広報IR部は「グループ内での事業譲渡でも法人は変わるので、今回の処分の対象にはならないと考える。利用者へのサービス継続のため決断した。厚生労働省の理解も得ており、問題はないはずだ」としている。

 これに対し、同省老健局の古都賢一振興課長は「コムスン側から連絡はない」としたうえで、「譲渡先がグループ会社であっても法的には問題ない。譲渡先が新規指定の申請をすれば、都道府県が審査することになるが、コムスンの役員が入るなどしなければ欠格事由とはならない」と、事実上容認する姿勢を示した。連結子会社など資本のつながりは法令上、欠格事由の判断材料とはならず、利用者保護の観点から新規申請した法人がサービスをきちんと提供できるかどうかを点検するという。
(以下略)


さて、今回の問題については、「法令遵守がなっとらん!!」という報道が多いようですが、よくよく考えてみると、遵守すべき「法令」と「介護業界の実態」がかみ合っているかどうかというのは、十分な検証が必要と感じます。

Yahoo!ニュースで紹介されていた毎日新聞の報道では、厚労省側は
「ルール違反をしたら退場していただく。そういうことです」。
「訪問介護サービスには多様な事業者が参入しているが、全体の質を上げていかないといけない。法令順守は大前提」
と行っていますが、一方では介護保険財政の逼迫によって、法改正を含めた「給付費抑制」が行われているという介護業界の現状があります。これにより、特に訪問介護事業者などは「介護保険があるから、サービスが提供できない」へという矛盾を孕む状態にもなっているとのことです。先ほどの毎日新聞の報道では、介護業界の現状を次のように語っています。
国は介護保険制度をスタートさせた当初、利用者に一定のサービス量を確保するため、民間の介護事業者の参入を強く促した。訪問介護事業者数が増える一方で、必要がない利用者に車椅子を貸し出すなど事業者による過剰なサービス提供の実態が次々発覚した。
 このため、厚労省は06年の介護保険法改正で、介護の必要度の認定区分を細かく分け、軽度の人を中心にヘルパーが身の回りの世話をする「生活援助」の利用を制限するなど、給付費抑制に乗り出した。これが事業者の経営環境を厳しくした。
 「成長分野と期待して参入した。でも最近は飽和状態。そのうえ介護報酬が低く、努力しても売り上げが上がらない」。東京都八王子市の訪問介護事業者は打ち明ける。「業界のイメージが悪くなり、同じように見られると困る」。いつまで続けられるか不安という。東京都杉並区の女性ケアマネジャーは「法改正で利用者が大幅に減り、つぶれた事業所をいくつも見てきた。訪問介護は人件費の負担が大きく、採算を度外視しないとやっていけない」と語る。
 業界紙「シルバー新報」の川名佐貴子編集長は「規模を広げ、上前をできるだけはねる経営をしなければもうからないのも業界の現実」と指摘。さらに「訪問介護の時間が規定に1分足りないだけで業者に返金を求めるなど、自治体の行政指導は厳格すぎる。もっと柔軟になり、サービスの質で業者が競える土俵をつくらなければ、『そもそも介護に企業を入れたのが悪い』という話になり、制度が後退する恐れがある」と懸念する。


今回の問題について見方を変えると、「保険給付の名の下に行われる介護サービス内容の画一化」が根っこにあるような気がしてなりません。医療以上に個別のケースに即した「多様なサービス」が求められる介護の場面では、事業者の創意と工夫によって柔軟にサービスを提供することができるようにすることが本筋の対応であるのではないかと、私は考えます。

私はコムスンに知り合いがいるわけでも有りませんし、肩入れするわけでもありません。業界内での様々な「評判」についても知らないわけではありません。それでも、実際にコムスンには6万5千人の利用者が存在していることを考えると、「改善すべき点は多々あるかもしれないが、評価すべき点もまた多々ある」と考えるのが妥当ではないかと感じます。

今回の問題は「コンプライアンス」に関する問題ではなく、むしろ「許認可業界における行政リスク」といった方が適切であると私は考えます。

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