一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『罪の声』

2017-03-27 | 乱読日記
面白かった。

グリコ・森永事件は証拠の多さや犯人(グループ?)の行動の特異さから、格好の小説の題材になりそうだが、実際には高村薫の『レディー・ジョーカー』くらいしかないのは、陳腐にならない犯人像の造形が難しいということもあるのかもしれない。

本書は、身代金取引の声が幼少期の自分の声であることに気づいた男性と、事件特集の企画に駆り出された畑違いの文化部の新聞記者が31年前の事件の謎を追う、という構成で、事実関係や証拠を一つ一つ辿りながら犯人像に迫る、という構成をとっている。

証拠に現れた犯人の行動の不自然な点から、犯人グループの全体像を導くところは圧巻の迫力がある。

電子書籍で通勤の合間に読もうと思ったが一気読みしてしまった。
各賞やランキングで上位に入るのも納得。


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『フリー』

2017-03-25 | 乱読日記
かれこれ10年前の本だが、今になって読み返すと、ここで取り上げられた企業の「その後」、この本が書かれてから生まれた企業がどうなったかを見る視点としても面白い。

この10年間でそれらのビジネスは生活様式を変えてきたことは確かだが、時価総額や買収価格だけでなく、利益も上げられている会社はいまだ一握りに過ぎないのも事実。

日本では軒並みキュレーションサイトに走って、ライターの賃金だをFREEに近くしながら広告料を稼ぐというのは筋悪な方向へ行ってしまったわけだが、なかなか著者のいう方向性でのビジネスが生まれてこないようだ(自分が知らないだけかもしれないが)。

たとえば鳴り物入りで始まったソニー不動産も鳴かず飛ばずだが、(参照:ヤフーとソニー不動産の新サービスが伸び悩む理由)本書の文脈でいうと「アトム」の世界をデジタルの世界に置き換えるようなビジネスモデルではないというあたりに問題があるんじゃなかろうか。


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『野村證券第2事業法人部』

2017-03-01 | 乱読日記
珍しく話題の本を早速読む。

オリンパス事件に関する潔白の主張が著者の出版の動機なのだろうが、それでは一般受けしないだろうと考えて、タイトルも含め著者の野村證券在籍時のエピソードを中心にした編集者の意図は見事に当たっている。

証券会社が「金融商品取引業者」でなく「株屋」でなんでもありだった頃の話が極めつけに面白い。
『狭小邸宅』のような「決め台詞」が随所に出てくる。

野村證券時代は相当無茶をやったが、窮地に立っても細部をきちんと詰めながら結果を出してきたことを前半部で誇る著者ではあるが、野村證券を退職した後のオリンパス事件がらみになると、一転して「~だと思ってた」などと急に脇の甘いことを言い出す(一方で関係者の証言の矛盾点には舌鋒鋭い)というコントラストが印象に残る。



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『帰ってきたヒトラー』

2017-02-10 | キネマ
終戦間際のヒトラーが現代にタイムスリップしたら、というきわどい設定なのだが、コメディにも「悪の化身」として描く道にも逃げず、いい着地をしている。

原作の小説(ドイツでベストセラーになったらしい)の出来のいいこともあるのだろうが、映画で描くことでのプラスアルファの魅力も持っている。

ドキュメンタリータッチを交えてヒトラーが「そっくりさん」として人気を博す中でだんだんと政治的存在としても受け容れられていく様子がリアルに描かれている。
たぶん、当時の国民もこうやって普通に新しい政治勢力である「国家社会主義ドイツ労働者党」を支持するようになったんだろうな、と思わせる。

また、過去のヒトラーを描いた映画の引用や、例の「総統閣下お怒り」のシーンのパロディも入れていたりと、ニヤリとさせられるところも多い。

おすすめ










原作の小説はこちら


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『神様メール』

2017-02-09 | キネマ
荒唐無稽な設定をうまく着地させている。

聖書の知識があればもっと楽しめたと思う。

神様はベルギーのブリュッセルに住み、部屋のパソコンで世界を管理していて、家の中では独善的にふるまう嫌な奴。
ずっと家の中で暮らしていた10歳の娘エアはそんな父親に腹を立て、ある日父親の部屋に忍び込んでパソコンで世界中の人に寿命を知らせるメールを送信してしまう…という話


神様の嫌な奴加減の描き方、先に家出をした「兄」の存在(観てのお楽しみ)、寿命を知った人々の振る舞い、という舞台装置に、初めて下界(というか設定だと家の外)に出た娘の純真さが加わって、リアルながらもファンタジックな幸福感に満ちた映画になっている。






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『ハロルドが笑う その日まで』

2017-02-08 | キネマ
人生うまくいかない、という登場人物が次々と現れるロードムービーなのだが、怒りの表現も、雪景色の中では静かに表現される。

ハロルドはノルウェーの街でクオリティの高い家具にこだわり40年以上にわたって家具店を繁盛させてきた。
ところが店の目の前にIKEAの北欧最大店舗がオープンし、ハロルドの店は閉店に追い込まれてしまう。
怒りを募らせたハロルドは、IKEAの創業者カンプラードへの復讐を決意する…という話。


北欧映画は静かな印象がある。その印象どおり。
「うまくいってる」側のカンプラードの描き方も同様。

静かな分、いろいろ考えることになるので、今の自分の精神状態に気付かせる鏡の役割を果たしてくれる映画かもしれない。






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『ヘイトフル・エイト』

2017-02-07 | キネマ
クセのある役者を集めて密室の謎解き、タランティーノ風。

謎解きというよりは後出しがあったりするのでストーリー展開を楽しむ映画。

最初はおとなしく普通のドンパチで始まるが、途中からお得意のスプラッタになる。

例によって好き嫌いの分かれる作風。






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『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』

2017-02-06 | キネマ
年末年始に映画やらDVDやらもいろいろ観たので備忘。

まずは1月半くらい前に観た『ローグワン』

Star Warsはコンテンツとしては3Dや4Dxにおあつらえだよなぁ、とつくづく思う。

また、今回はサイドストーリーなので、シリーズの主要な登場人物がダース・ベイダー以外出てこないため、人間関係の描写が少なく、アクションシーンが中心でこれはこれでけっこう楽しめた。

過去の話なので、今後のシリーズに登場しない前提でキャスティングも遊べたのではないか。

何の予備知識もなく観てたら、いきなりフォレスト・ウィテカー(痩せた?)まで出てきてた。


映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』日本版予告編3
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『人工知能と経済の未来』

2017-02-05 | 乱読日記
AIと縁遠い生活をしているので、昨年話題になった(らしい)本書を今頃読んだ。

前半のAIの現状をさらっと説明しているところと、後半のベーシックインカム(BI)の政策としての有用性のところは理解できたが、間をつなぐ経済学のところがしっくりこなかった。


AIの進化の究極系はあらゆる産業で労働力が不必要となる「純粋機械化経済」であり、そこでは労働力が必要とされなくなるのでほとんどの人間が失業する。一方で「純粋機械化経済」では限界生産力が逓減しないので潜在成長率は上昇を続ける。
著者はそこには需要による制約があると主張し、さらに所得がない労働者は生活ができないのでBIが必要、というところから、現在の制度を前提としたBIのメリットの説明にはいってしまう。

自分が期待していたのは、もし労働力が不要となり、資本=設備だけで生産が完結できるようになったときに、国家と企業と国民のありかた(特に税体系と企業・資本のインセンティブの関係)がどうなるのか、国家間の競争力を左右する要因は何か(たとえば天然資源?)という大きなデザインだったのだが、そこは期待外れだった。
なのでAIとBIの間の経済学の議論が個別の当てはめになっていて、しっくりこなかったのだろう。


まあ、そんなことが新書1冊で簡単に解説できるわけもないか。



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『「健康食品」のことがよくわかる本』

2017-02-03 | 乱読日記

これも良書。

著者は国立医薬品食品衛生研究所安全情報部第三室長(なんだか後半はインテリジェンス部門みたいだが)。

一言で言えば、
「健康食品」というものは健康上の効果が科学的に証明されてはいない。
「食品」だから副作用がないとも限らない。
厳重な承認手続きを経た医薬品と普通の食品との間にあるものは、各国でさまざまな(中間的な)規制を受けている。
中でも日本では健康食品の広告表示の規制や「トクホ(特定保健用食品)」「機能性表示食品」などの基準も緩いのは問題である。
という注意喚起の本。


たとえば、日本でトクホとして許可されているものでEFSA(欧州食品安全機関)の評価では科学的根拠がないとして却下されたものが複数ある。これは必要とされる科学的根拠のレベルが相当違うためである、など、各国の制度や実際には効果がなかったり逆に有害だった健康食品の具体例や誤解を生じさせる広告表示の例をこれでもか、というくらいあげている。

また、「国際学会」や「学術出版」といっても実態の伴わない詐欺的なものは世界中いたるところにあり、広告の謳い文句に使われているという話。

さらにドイツの学者が意図的に欠陥を含ませた論文を投稿した実験では、大手出版社や大学(それも神戸大学)の雑誌にも掲載され、それらの雑誌でもピアレビューが機能していないことがある、など、最初から最後までコテンパンである。


同じサプリメントやトクホ製品を買うにしても、こういうことを知っていた上で買う方が、極端に入れ込むよりも経済的にも精神衛生的にもいいと思う。


最後にいくつか象徴的なものを抜粋。

(英国の消費者向け助言:「誰がサプリメントを必要としているのか」)
・妊娠を予定している女性にとって葉酸
・高齢者や肌の色の濃いイスラム教徒、授乳中や妊娠中および6か月未満の子どもにちってビタミンD
・医師から処方された人 それ以外の人は必要ない。

・ビタミンCや亜鉛が風邪を予防するという根拠はない
・グルコサミンやコンドロイチン硫酸に関節への効果はない
・朝鮮人参やイチョウが高齢者に有効だという根拠はない。しかし有害影響はあり得る
・どうしても使用したければ十分な情報を得て、医師に相談してから。


(米国FDA(食品医薬品局):詐欺を見破るための6つの方法)
・一つで何にでも効く:そんなに都合の良いものはまずない
・個人の体験談:科学的根拠がないことを白状している
・簡単に問題が解決できる:たとえば食事制限や運動なしで痩せられるなど
・オールナチュラル:天然物が安全とは限らない
・魔法の治療法:革新的や新発見という用語には警戒
・陰謀論:医薬品業界や政府が情報を隠している、という主張は消費者に不信を抱かせ(業者にとって都合の悪い)正しい情報を遠ざけるために使われる

(著者:「抗酸化作用」について)
・・・がんや慢性疾患の原因は酸化だから、抗酸化物質を摂れば病気予防になる、という説です。確かに一部の発がん物質は酸化反応で生じますし、DNAやたんぱく質のような生体内高分子が参加的影響を受けて機能を損なうことはあります。しかし酸化還元反応は生体の機能にとって必須の反応であり、それをすべて抑制することはできません。 (中略)
いつ、どの組織で、どの反応が問題なのかを同定することなく「抗酸化」が良いと言っていること自体、科学ではないと白状しているようなものですが、一般人のみならず研究者にもこの手の主張に疑問を持たず受け容れているように見える場合があります。
さてその抗酸化作用に関連して、野菜などの食品の抗酸化活性を測定し評価しようという試みがありました。その一つが1990年代に米農務省(USDA)と国立老化研究所の研究者らにより開発された酸素ラジカル吸収能(ORAC)です。 (中略)
ところが2012年、USDAはこのデータベースをウェブから削除します。 以下が削除の理由です。

最近、USDAの栄養データベースを提供している栄養データラボ(NDL)は、ポリフェノールを含む特定の生理活性化合物のヒト健康影響に、抗酸化能を示す指標が関係ないことを示す根拠が増加したため、USDAのORACデータベースをNDLのウェブサイトから取り下げた。 (中略)
ORAC値は食品やサプリメント業者によって製品の宣伝に常に誤用されてきた。(中略)
ポリフェノールをたくさん含む食品の健康への良い影響が、抗酸化能によるという根拠はない。(中略)
我々は今や、食品の抗酸化分子には幅広い機能があり、その多くがフリーラジカルの吸収能力とは関係ないことを知っている。

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