ギリギリ探偵白書・373

 ギリギリ探偵白書
 「デンデン・第4話」


 
 デンデンを探し出すのは簡単だった。
 デンデンは自分で自分を騙した先輩を探し出そうとしていたのだ。
 すでに我々は、その先輩を捕捉し調査を行っていた。
 その先輩は自己破産を計画中だった。しかし・・・。




サザビー 「どうするよ。先輩って奴、自己破産しようとしてるぜ」

阿部   「そいつの収入は?」

サザビー 「さぁ?昼からソープ(ソープランド)だからな」

阿部   「できないじゃん!!自己破産」

サザビー 「そう、だから、もう無理なんだけどね」


自己破産の申請中などにソープランドや賭博、キャバクラなどで遊び呆けている
証拠があると、自己破産はできない。というより、自己破産はできても免責が
受けられない。
免責を受けないと、事実上、借金は帳消しにはならないから、その人物は取り立ての
対象となる。

残念ながら、その先輩の思い通りにさせるつもりは毛頭ない。

筆跡鑑定は、通常、裁判所の名簿にある鑑定人に依頼するのだが、簡単な筆跡程度なら
我々でも見分けがつく。

ちなみにデンデンは、マルマルとした字を書く。
非常に特徴的で、特に彼の名前は難しい字が含まれているため、書き間違いをし易い。

その報告から数分後、事務所で待機していたスタッフから連絡が入り、
借用書に書かれた保証人のサインは、素人でもわかる程度、明らかにデンデンの字とは
違う事が判明した。

私は、その借用書に添付されていたという健康保険証について、調査を行わせるため、
デンデンとその先輩が勤めていた会社に奥さんと調査チームを向かわせるように
指示した。

そして、その日のうちに証言が取れた。

デンデンはその先輩が会社を辞職する前日、先輩に健康保険証を貸してしまっていた
らしいのだ。

人のいいデンデンのことだ。
困っている人を見たら、健康保険証を貸してしまうだろう。

その先輩は腹が痛いといって、病院にいくから保険証を貸してくれと、その会社の
経理マンに達に言っていたそうだ。

これで、証拠は整った。

友人の尾行はこの時点で終了となる。

私はデンデンの真後ろに立った。
そして、いつものようにデンデンのベルトに手を突っ込んだ。

阿部   「何かお探しで?」

デンデン 「・・・・・」

阿部   「世話、焼かせんな」

デンデン 「うっうわっ!!あべちゃん・・・。いつからそこにいたの」

阿部   「6時間前から、お前の尾行してるぞ」

デンデン 「えっ」

阿部   「おやつにビックマックを3個食った。だろ?」

デンデン 「・・・確かに・・・でも、なんで?」

阿部   「お前が離婚届なんて置いて、出て行くから奥さんもお袋さんも驚いてな」

デンデン 「えっ・・・」

阿部   「こいつなんか、ずいぶん前からお前の尾行をしてんだよ」

田中   「どうも~、田中です」

デンデン 「どうも、・・・でも、俺の借金は・・・」

阿部   「お前の借金はチャラにしてやる。とりあえず、ついて来い」


その後、我々はその先輩・貸主と話し合い、デンデンを連帯保証人から外すこと
に合意させた。

話し合いは実に簡単なものだった。


デンデン 「・・・あべちゃん・・・」

阿部   「泣くな。ちょっと、待ってろ」


私はデンデンの勤務先に電話した。
勤務先の上司は、デンデンを有休扱いにしてくれていた。
そして、明日からデンデンに出社するように伝えてくれと言った。


阿部   「デンデン、明日からまた同じ会社で仕事ができるぞ」

デンデン 「えっ?」

阿部   「明日からまた、来いってよ。○○さん(上司)が」

デンデン 「・・・あべちゃん・・・」

阿部   「泣くなっ!!抱きつくな!!重いから!!」


デンデンは奥さんとおふくろさんに連れられて帰っていった。


田中   「デブですね。お相撲さん級の」

サザビー 「お前もな」

田中   「僕はあそこまで・・・」

阿部   「さて、飯でも食いに行くか」


我々も帰路についた。



        完



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ギリギリ探偵白書・372


 ギリギリ探偵白書
 「デンデン・第3話」


 
 昔からの友人であるデンデンが姿を消した。
 家族に頼まれ、調査を行うことになったが
 どうやらデンデンは詐欺の被害に遭っているようだった。
 



田中   「どうします?」

阿部   「まずは、デンデンを探そう。あいつは電車オタクだからな。
      移動経路は電車と考えていいだろう」

田中   「にゃるほど、だから、デンデンなんですね。
      しかし、親にまで、あだ名で呼ばれるって・・しかも」

阿部   「身長180センチ、およそ体重150キロ、黙ってても目立つわなっ」

田中   「それで、検討は・・」


田中は数枚のプリントアウトされた紙を私に渡した。
そこには、デンデンの先輩の実家住所とその経路、電話の時刻表、美味い駅弁の店
等などがチェックされていた。


阿部   「すぐ見つかるな」

田中   「オッス!!自分が行ってきます」

阿部   「ああ、頼んだぞ」


その次の日、デンデンの所在は確認された。
ところが、デンデンは都内に戻ってきていた。


田中   「いやー、尾行が楽ですよ。大きいですから」

阿部   「様子はどうだ?」

田中   「ウロウロしてますよ。
      多分、先輩っていう奴は逃げ回ってるんじゃないんですか」

阿部   「だろうな」


その頃、すでに別働で動いているサザビーはその先輩を捕捉していた。
不夜城といわれる街に、その先輩は潜伏していた。


阿部   「田中、俺も合流する。デンデンは俺が説得する」

田中   「ええ、近いですよ。今、道玄坂です」


渋谷道玄坂は事務所から歩いて行ける距離だ。
私はすぐに道玄坂に向かった。

事務所を出て20分、私は田中と合流していた。


田中   「どうします?サザビーさんがもう見つけてるんでしょ?」

阿部   「ああ、もう少し様子をみようか」


デンデンはJR渋谷駅から山手線に乗り、新大久保で降りた。
そして、新大久保のホテル街をキョロキョロしながら歩いていた。


田中   「何してるんですかね」

阿部   「自分で先輩って奴を探してるんだろ」

田中   「この手の借金は、奥さんには関係ないですよね」

阿部   「ああ、関係ないよ」

田中   「なのに、なんで離婚を・・・」

阿部   「法を知らんだよ、アイツなりに家族を守ろうとしたんだろ」

田中   「・・・しかし、これじゃ見つからないですよね」

阿部   「ああ、見つからんだろうな」


私はこの時、小学校時代を思い出していた。
確か、デンデンはその時も一つ上の先輩にミニ四駆を取り上げられ、
必死で公園を探し回っていた。
その時も私に相談しなかった。
あの時は、私にその事をいうと、その先輩を殴りに行く事を予測して言わなかった。

結局、おふくろさんがその事に気が付いて、私に相談し、私が先輩から
ミニ四駆を奪い返しに行った。

(ガキの頃と同じだな)

そんなことを思い出しながら、私はデンデンの10m後を歩いていた。
そして、私の携帯が鳴った。

電話はサザビーからであった。


サザビー 「手に入ったよ」


借用書の入手をサザビーに頼んでいた。


阿部   「そうか、早速鑑定してくれ」

サザビー 「印鑑と筆跡ね?それから?指紋もやりまっか?」

阿部   「筆跡だけでいい」

サザビー 「で、もう一つ、こりゃ、法定金利違反ですわ」

阿部   「ん?どういうことだ?」

サザビー 「業者じゃないよ。個人の金貸しだよ」

阿部   「そうか」

サザビー 「どうするよ。先輩って奴、自己破産しようとしてるぜ」

阿部   「そいつの収入は?」

サザビー 「さぁ?昼からソープ(ソープランド)だからな」

阿部   「できないじゃん!!自己破産」

サザビー 「そう、だから、もう無理なんだけどね」




        続く



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ギリギリ探偵白書・371


 ギリギリ探偵白書
 「デンデン・第2話」


 
 その日、友人デンデンの母親から突然の電話がかかってきた。
 事情も言わず、とにかく来てくれというので、私は事務所を飛び出した。
 友人のデンデンは妊娠中の奥さんを残して家出をしていたのだ。




阿部    「借金?帰って来ていない?」

デンデン妻 「いえ、今朝までここに居て、これはポストに・・・」

阿部    「荷物は?」

デンデン妻 「いつも通り・・・」

阿部    「電話は?」

デンデン妻 「通じません」

阿部    「解約されていますか?」

デンデン妻 「いえ、出ないだけみたいです。今は、電源が入っていないって・・」

デンデン母 「デンデンはもてる顔じゃないし、浮気はないと思うのよ。
       だけど、昔っから、騙されやすいから誰かの保証人でもなって・・・」

阿部    「・・・調査しますか?」

デンデン母 「お願いできる?」

阿部    「ええ、でもお金はかかりますよ」

デンデン母 「じゃあ、これで」

(えっ?1万円・・・・)

阿部    「うえっ、1万円じゃ無理ですよ」

デンデン母 「じゃっ、これで」

阿部    「犬は要りません」

デンデン母 「じゃあ、いくらかかるの!!」


私は契約を後で済ませるように言い、デンデンの最近の行動などを詳細に奥さんから聞き取った。
どうやら、最近のデンデンは夜遅く帰ることが多く、早朝から仕事に出掛けていたらしい。

経理マンがそんなに忙しいはずはない。
いや、デンデンがそんなに忙しいはずはない。

時刻が3時半をまわった頃、事務所から電話が鳴った。
面談などの時間が長い私への事務所からの配慮だ。


サザビー  「死んでたかい?」

阿部    「いや、調査だった」

サザビー  「そうじゃなくて、どうよ?・・・死んで、たかい?」

阿部    「死んじゃいない。調査だ」

サザビー  「いや、そうじゃなくて、死んで・・・」

阿部    「ない!!勝手に俺のダチを殺すな!!」

サザビー  「違う。死んでと他界をかけたんだよ。
       それじゃ、笑点メンバーになれないぜ!!」

阿部    「なる気はない!!とりあえず、今から戻るから、間に合わなかったら
       繋いどいてくれ」

サザビー  「前座?」

阿部    「ああ、前座」


私は電話を切り、すぐに別のスタッフが残留証拠を集めに来ると告げ、その場を去った。
急いで事務所に戻り、面談や打ち合わせを行い、調査指示などを出していたら、
時刻は夜の11時になろうとしていた。


阿部    「もう、こんな時間か・・・。」


時計を見ると、急にお腹がすいてきた。
私は事務所の冷蔵庫からカロリーメイトを出し、かじりながら帰り支度をした。

すると、デンデンの家に残留証拠を調査しに行っていた田中から連絡が入った。


田中    「いやぁ~、お腹一杯ですよ」

阿部    「ご苦労さん、でっ?どうだった?」

田中    「ええ、PCのメールで色々わかりました」

阿部    「そうか、明日朝一でデスクに置いといてくれ。今日はもう帰って・・」

田中    「あっ、すみません、お母さん、牛筋ですか、いいですねぇ~」

阿部    「おいっ、何やってんだ」

田中    「ご馳走になってます」

(・・・・ちゃんと仕事はやっていたのか・・・)

阿部    「とにかく、明日朝一だぞ」

田中    「みょうかい・・じましだ」

(食いながら電話で答えるな・・・・。まったく)


次の日、田中の持ってきた残留証拠から、デンデンが会社を辞めた先輩の保証人になっている事がわかった。


阿部    「つまり、この先輩が会社を辞めて独立した。
       その資金の保証人になっていたということか?」

田中    「ええ、でも、自ら進んでというより
       いつの間にかに、保証人にされていたという感じなんですよ」


確かにデンデンがその先輩に送ったPCメールには
「これじゃ、詐欺じゃないか」と書かれていた。




        続く



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ギリギリ探偵白書・370


 ギリギリ探偵白書
 「デンデン・第1話」

              

気配を消す。
探偵という仕事をしていると、そういう技術が身につくのだろうか。
友人に後ろから声をかけると、皆驚く。

「いつからそこにいたの!!」

その日、私はやりたくない仕事をしていた。

友人の調査。
仕事とはいえ、友人の調査というのは何とも複雑な心境だ。
この調査が依頼されたのは、調査の1週間ほど前の事だ。

私がいつものように事務所で珈琲を楽しんでいると、私のプライベート用の携帯電話
が鳴った。
携帯電話の画面を見ると、友人の自宅からであった。

時刻は確か午後2時頃であった。
その友人は、それなりの中小企業の経理マンだから、平日の午後2時に自宅から電話を
してくるはずはない。

(おかしいな・・・)

そう思いながら、携帯電話の通話ボタンを押した。
電話先にいるのは、友人である通称「デンデン」のおふくろさんである事がすぐにわかった。


デンデン母 「阿部君!!わかる?デンデンのママ!!」

阿部    「ああ、お元気そうで」

デンデン母 「大変なのよ。今すぐ、来てくれる?」

阿部    「今すぐ?」

デンデン母 「そう、今すぐ」

阿部    「デンデンに何かあったんですか?」

デンデン母 「そうなのよ」


私は自分の予定表を確認した。
午後4時から10時までビッシリ予定が詰まっている。


阿部    「わかりました。デンデンの自宅でいいですね?」

デンデン母 「そう、何分で来れる?」

阿部    「なるべく急ぎます」


私は電話を切り、その場で寝ていた調査主任の田中を起こした。


田中    「はにゃ・・・、もう朝ですか・・・、ん、」

阿部    「寝坊して、居眠りしてクビにならんのは、ウチの会社ぐらいだぞ」

田中    「はっ!!・・・・」

阿部    「どうした?」

田中    「ここは・・・、あっ!!」

阿部    「なんだ?」

田中    「はっ!!会社だ!!」

阿部    「ああ、ここは会社だよ」

田中    「お昼行かなきゃ!!」

阿部    「バカたれ!!俺は野暮用に行くから、お前はここで資料まとめだ」

田中    「・・・野暮用なら野暮な時に済ませてくださいよ。
       それより、昼飯です。食わないと・・・」

阿部    「とにかく、俺のダチ(友人)に多分、不幸があったようだから
       顔だけ出してくるから」

田中    「葬式は食えないですよ」

阿部    「お前の煩悩、全部飛ばしてやろうか?」

田中    「うっ・・・、わかりましたよ。仕事しますよ」

阿部    「頼んだ。そこのノッポも起こしとけ」

田中    「あはっ、サザビーさんも居眠りだ!!ん?んんん?」

※サザビー・・・T.I.U.総合探偵社代表代理

阿部    「多分、もう起きてるだろうけどなっ」

サザビー  「ん?寝てないよ」


サザビーは、目の形を描いた紙をまぶたに貼り付けていた。
何とも緊張感のない事務所である。

私はサザビーが起きたのを確認し、事務所に停めてあるオンボロスクーターで、デンデンの自宅に向かった。
都心の日中は所々、渋滞しているため、オンボロとはいえスクーターの方が速い。

デンデンの家の玄関前に立ち、呼び鈴を鳴らすとデンデンの奥さんとお袋さんが迎えてくれた。
ついでにデンデンの実家で飼われている犬のジョニーも尻尾をふって迎えてくれた。


阿部    「何があったんですか?」

デンデン母 「デンデンがこれを・・・」


デンデンのおふくろさんが、私に手渡した封筒には、離婚届と手紙が入っていた。

その手紙の内容は詳細には書けないのだが、
内容は「多額の借金を抱えてしまったため、離婚するように」と書かれていた。

ちなみに、デンデンの奥さんは妊娠5ヶ月で少しお腹が大きくなっている。
そして、その子の「親権者は奥さん」にするようにも書かれていた。




        続く



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ギリギリ探偵白書・369


 ギリギリ探偵白書
 「なぜ英語?・第2話」


 
 酔った勢いで電話をかけてきて喚く、困った依頼者。
 調査日を定める事ができず、なかなか調査を行う事ができなかった。
 そして、ようやく行った浮気調査は空振り・・・。



依頼者  「阿部さん、話が違うじゃないですか!!
      ホントに、本当に調査をしたんですか?」

阿部   「・・・・・。報告書をお見せしましたよね」

依頼者  「見ましたけど。浮気してないじゃないですか」

阿部   「浮気をするしないは奥さん次第ですから」

依頼者  「それじゃ、私はどうすれば・・・」

阿部   「・・・・・」


 2回目の調査は、初日から5日後に行われた。
 
 
サザビー 「今度は平日かい?」

阿部   「ああ」

サザビー 「なしてまた?」

阿部   「なんとなく。だそうだ」

サザビー 「ほう、良い根拠だね」

阿部   「ああ、グレートだな」


 調査は、私とあべちゃんで行った。
 その日は、見事な秋晴れだった。


サザビー 「う~ん、調査日和だな」

阿部   「ああ、浮気日和となってくれりゃ良いが・・・」

サザビー 「お、出てきたぞ、あれだな」

阿部   「おお、あれか、携帯いじってるね」


 マンションから出てきた女性は携帯をいじりながら歩いている。
 駅のほうに向かっているようだ。


サザビー 「携帯見ながら歩いてちゃ危ないよ~ん」

阿部   「ぬお、タクシー乗りそうだぞ」


 依頼者は、大通りの道端に立って車道を見ている。
 私は、慌てて対象者よりも上流でタクシーを捕まえた。
 そのまま、タクシーで対象者を通り過ぎ、路肩に停車した。

 すると対象者の前で一台の車が停車した。
 対象者は、その車に乗り込んだ。

 私のタクシーに、あべちゃんが飛び乗った。
 そのまま車の後を追う。
 タクシーの運ちゃんはノリノリである。

 車は都内を徘徊し、ラブホテルに入っていった。


運ちゃん 「な、ど、ど、どうします?」

阿部   「ゆっくり流してくれる」

運ちゃん 「ら、ラジャー」

阿部   「オッケー、ストップ、ドア、オープン」

 (なぜ英語?)

運ちゃん 「ラジャー、ストップザカー」

 (なぜ英語?)

阿部   「サザビー レッツ、ホテル、ゴー」

 (だから、なぜ英語?)

 
 二人がホテルの部屋に入るのを確認し、レンタカーを用意し張り込みを開始した。
 そこに田中から電話が入った。


サザビー 「ほぇい、ほぇい?」

田中   「今、依頼者から電話があったんですけど・・・」

サザビー 「なんて?」

田中   「今日は調査するなって・・・」

サザビー 「もう、やってるよん」

田中   「ええ、そういったんですが・・・」

サザビー 「また、酔ってたんか?」

田中   「はい・・・」


 あべちゃんが私から携帯を奪い取る。


阿部   「止めて良いのか?証拠取れるぞ」

田中   「そんな、僕を攻めないでくださいよ」

阿部   「依頼者に電話しとけよ」

田中   「でも、酔ってて・・・」

阿部   「そこを何とかするのが探偵だろ」

 (それは違うと思いますが・・・)
 
田中   「で、でも・・・」

阿部   「まあ、良いや、明日また電話くるだろ」


 その後の調査はスムーズに進んだ。
 浮気の証拠も取れた。

 翌日、やはり依頼者から電話がかかってきた。


依頼者  「すいません。また失礼な事を言ってしまい・・・」

阿部   「まあ、気にしないでください。証拠もバッチリ取れましたから」



        完



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ギリギリ探偵白書・368


 ギリギリ探偵白書
 「なぜ英語?・第1話」



 バケツの水をひっくり返した様な雨とは、このようなことを言うのだろうか?
 ワイパーが懸命に水を弾いているが追いつけていない。
 視界はすこぶる悪く、数メートル先しか見えない。

 この雨で高速道路は速度制限がひかれている。
 前の車のテールランプは、なんとか確認できるが
 その前を走る対象者の車は全く見えない。
 およそ同じように走っていると思われる。


サザビー 「このままじゃ失尾っちゃうな・・・」

田中   「ええ、話しかけないでください」

サザビー 「おいおい冷たいなぁ。楽しく行こうぜ」

田中   「気が散るでしょ。運転に集中したいんです」

サザビー 「エンジョイ調査で行こうぜ」

田中   「座ってるだけの人は良いですね・・・」

サザビー 「失礼な、座ってるだけってのも大変なんだよ」

田中   「偉そうに言わんでくださいよ」

サザビー 「でも、マルタイも前、走ってるのかね?」

田中   「さあ、あとは運ですよ」

サザビー 「おっ、胆が据わってるねぇ」


 土砂降りの雨が止んだと思うと、強烈な日差しが降り注いできた。
 対象者の車が前方に確認できた。
 そのまま対象者の帰宅を見届け、無事調査は終了した。

 事務所に戻ると、あべちゃんが電話口で怒鳴っていた。

 
サザビー 「なんだ?また、田中がミスでもしたのかな?」

田中   「そんなわけないでしょ。僕はここにいるのに」

サザビー 「あれ、いたの?」

田中   「いますよ!!ってか、半日一緒だったじゃないですか!」

サザビー 「むぅぅ、ここまで影が薄いとは・・・」

田中   「むぅぅ、じゃないですよ。影も薄くない」

サザビー 「髪は?」

田中   「まだ生えてます!!」

サザビー 「・・・体は厚いな」

田中   「大きなお世話ですっ!!」

阿部   「おい、うるさいよ」

田中   「あ、代表、只今戻りました」

阿部   「調査は?」

田中   「僕の大活躍でバッチリです」

サザビー 「ところで、何に怒鳴ってたん?」

阿部   「ああ、実はな・・・」


 先程の電話の相手は依頼者だった。
 その依頼者は酒の入った状態で電話をかけてくる。
 そして、あべちゃんに怒鳴られるのだ。
 その度に依頼者は契約を解除すると言って電話を切る。
 しかし、翌日になると「昨日の無礼を詫びたい」と電話をかけてくるのだ。

 調査は浮気調査である。
 浮気調査において依頼者からの情報は調査の成否を左右する重要なコンテンツである。

 よって依頼者から電話がかかってくるのは
 ありがたいのだが、酔った勢いでの電話は迷惑である。
 話は堂々巡りし、関係の無い話に飛んだりする。
 
 さらに、この依頼者は現在、奥さんと別居中だ。


阿部   「また、お宅には、もう頼まんだってよ」

サザビー 「学習能力無いねぇ・・・」

田中   「酔いが醒めたら、電話かかってくるんすかねぇ」

阿部   「さあ?」


 翌日、予想通りに依頼者から電話がかかってきた。
 この依頼者は、別居しているため奥さんの行動がつかめず
 最初の相談から日数が経っていたが、調査を行っていなかった。

 どの依頼者でもそうだが、出来れば調査料金を安く済ませたい。
 そのためには、調査日をいつにするか決めるのが重要である。
 我々は、調査の押し売りはしない。


依頼者  「プロの目から見てどうですかね?」

阿部   「う~ん、難しいですね。同居中の奥さんの行動はどうでした?」

依頼者  「それが、あまり変った様子は・・・」


 男性が浮気される場合は、情報が少ない事が多い。
 奥さんの微妙な変化に気が付いていないのだ。
 そのために浮気されたということもあるかもしれない。


阿部   「奥さんのお仕事は?」

依頼者  「主婦でした。今もそうだと思います」

阿部   「浮気は相手がいないと出来ませんからね
      相手の都合もあるでしょうし・・・」

依頼者  「じゃあ、休みの前の日に調査が良いですね」

阿部   「ええ、まあ」

依頼者  「じゃあ、金曜日でお願いします」

阿部   「いや、土日が休みと決まったわけでは・・・」

依頼者  「でも、普通は、そうでしょう?」

阿部   「まあ、一般的には・・・」

依頼者  「じゃあ金曜日で。これでバッチリですね」

阿部   「バッチリとは言い切れませんがね」


 こうして、調査日程が決まった。そして、調査日、調査は空振りだった。



        続く



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ギリギリ探偵白書・367


 ギリギリ探偵白書
 「危険な奴ら・第4話」


 
 ホテルからタクシーに乗った私は、すぐに尾行者の有無を確認した。
 尾行者を確認し、次はまく作業に入る。
 キッチリ尾行者を振り切ったが、会長宅にはすでに張られていた。



私はわざと会長宅の目の前にバイクを停めた。
そして、ヘルメットを取り、呼び鈴を鳴らそうとした。

その時、男が2人、私に駆け寄ってきた。


男1   「兄ちゃん、ちょっと待ちな」


私が振り返ると、声をかけた男がニヤリと笑いながら、近付いてきた。
そして、私の腕を掴もうとした。

私は腕を振り払った。


男1   「お前、カード持ってんるだろ?」

男2   「それを渡せ、勘弁してやるから」

阿部   「・・・何のことだい?」

男1   「わたせ!!こらっ!!」


男はいきなり殴りかかってきた。
私は男の拳を避け、股間を蹴り上げた。

前のめりになった男は驚いた顔をして、私を見た。


阿部   「勘弁してもらうのはお前らだろ?」


すると、もう一方の男が私の襟を掴もうとして迫ってきた。
私は右手に持っていたヘルメットで男の腕を叩きつけた。

(ギャッ)

2人の男は沈黙した。
私相手に顔だけ恐いのが2人とは、役不足である。

私は呼び鈴を鳴らした。
すると、玄関からゴルフクラブを持った会長が出てきた。


会長   「200ヤード飛ばすぞ、チンピラ野郎!!」


男達は腰を引きながら、その場から逃げて行った。


会長   「倅から聞きました。お手数をお掛けして・・・」

阿部   「いいえ、中、いいですか?」

会長   「ああ、そうだな」


私は応接間に通された。


阿部   「でも、この内容なら電話で言えばいいのに・・・」

会長   「すまんね。そのファイルにあるのは、ウチの古参役員でね。
      創業当時からいる真面目な男なんだよ」

阿部   「・・・しかし、ここまで妨害があれば・・・」

会長   「見るに及ばないな、自分達のした事を認めたようなものだからね」


えてして、ワンマンで会社を大きくしたような経営者は、動物的な直感が冴えている。
彼は証拠を見ずとも、全てを悟ったのだろう。

私はカードのファイルを開き、とりあえず内容をプリントアウトした。
会長はその紙を見ることなく、顧問の弁護士に連絡した。

その後、私と会長は世間話をした。
出された珈琲を一杯飲み終えた時、若い弁護士が額の汗をハンカチで拭きながら現れた。


阿部   「ハンカチ王子が来た所で、私は退散しますよ」

会長   「すまんかったね」

阿部   「いいえ、仕事ですから」


会長宅を出ると、まだ黒のセダンが停まっていた。
中では先程の男が携帯電話で何かを怒鳴るように話している。

私はその黒いセダンに近付いた。
彼らは慌てた様子で、私を見て、猛スピードで走り去った。

(あれなら、200ヤードは飛んでいくかもしれない・・・)

その後、社内で不正を働いていた幹部が数名、懲戒免職になったそうだ。

私は時折、疑問に思うことがある。
なぜ、不正をわざわざ帳簿にするのだろう・・・。


サザビー 「それが人間の性なのさ・・・。なんてね」


人間の性なのか・・。
とにかく一件落着である。


        完



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 ギリギリ探偵白書は、過去に行った調査を本人了承のもと掲載しています。
 尚、調査時期や調査対象者・ご依頼者様の個人情報は本人様の請求以外は開示いたしません。
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ギリギリ探偵白書・366


 ギリギリ探偵白書
 「危険な奴ら・第3話」


 
 ホテルに呼び出された私は社内不正の記録を社長から渡された。
 これを会長に届けるのが役目らしい。
 せっかくなので、監視の目を社長から私に移させ、会長の下へ向う事にした。
 



ワイパーを動かす音と雨音、AMラジオから流れる音楽が聞こえる。
私は少しだけ窓を開け、タバコに火をつけた。


運転手   「お客さん、仕事ですか?」

阿部    「ん?まあね」

運転手   「大変ですね」

阿部    「ああ、因果なものでね。その交差点を曲がってもらっていい?」

運転手   「え?○×駅ですよね」

阿部    「ああ、ちょっと後ろの車が気になってね」

運転手   「後ろの車?」

阿部    「そういう商売だからね」


タクシーは交差点を左折した。
そしてすぐの路地を左折し、再び左折した。

こうすると、元の道に戻る。

尾行判明方法としては常套手段だ。


阿部    「白のワンボックス・・・」

運転手   「ええ、白のワンボックス」


私は携帯電話を取り出した。
そして、T.I.U.総合探偵社の事務所にダイヤルした。

(トゥルトゥルトゥルトゥルトゥル)


サザビー  「はい、T.I.U.」

※サザビー・・・T.I.U.総合探偵社代表代理

阿部    「今、何人いる?」

サザビー  「ん?俺と田中だけだけど・・・。何?」

阿部    「つけられてる。すぐに応援が欲しい」

サザビー  「・・・だから、ヤバイッて言ったんだよ!!」

(いつだよ!!)

阿部    「ああ、高速、○々木PAでどうだ?」

サザビー  「仕方ねぇーな」


タクシーは高速に入り、サザビーに指定したパーキングエリアに向かった。
なぜかタクシーの運転手はノリノリでスピードを上げて走る。

パーキングエリアには、サザビーがバイク、田中が自分の車で来ていた。

私は携帯でサザビーに連絡を取り、バイクに乗り代わる事を伝えた。

我々は3人同時にトイレに入り、混雑に紛れてそれぞれの配置についた。

私はサザビーの乗ってきたバイクにまたがった。

250ccのロードバイクはそれほどスピードが出ない。

(これかぁ・・・、気付かれたら厳しいな・・・)

私がバイクをスタートさせると、白のワンボックスカーが動き出した。

(やっぱり・・・)

白のワンボックスカーの運転席に目をやると、無線機で連絡している姿が見える。

私はゆっくりとバイクを動かしながら、辺りを見回した。
すると、片耳だけにイヤホンを差し込んだ男が見えた。

おおよそ、白のワンボックスカーに連絡を取ったのはこの男だろう。

私は一気にアクセルを回し、高速道路に合流した。
そして、すぐに高速を降りた。

そして、会長宅に向かった。

どうやら、白のワンボックスカーはタクシーと田中の運転する車に阻まれ
尾行を断念したようだった。

数十分後、私は会長宅にたどり着いた。
しかし、その家の路地の前に黒のセダンが停まっていて
いかにも強そうな男が2人、周辺を見回しながらウロウロしている。

(・・・2人とは、なめられたものだな・・・)

私はわざと会長宅の目の前にバイクを停めた。
そして、ヘルメットを取り、呼び鈴を鳴らそうとした。



        続く



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ギリギリ探偵白書・365


 ギリギリ探偵白書
 「危険な奴ら・第2話」


 
 私は都内某所の高級ホテルの一室に呼び出された。
 ホテルでは、怪しい連中がうろついていた。
 部屋で待っていたのは、ある企業の社長だった。
 やはり、監視されているようだ。





私はそう言って、社長を見た。社長は頷いてから話し始めた。


社長   「このカードの中身は、役員の○○の不正が記録されています」

阿部   「・・・中を見てもいいですか?」

社長   「ええ、構いません。私のパソコンを使ってください」


私はインターネットに繋がれていた社長のパソコンの前に座り
まずは、無線LANを解除した。


社長   「な、何を・・・無線LANは・・・」

阿部   「こうした場所のセキュリティポイントは
      オープンになっていることが多いんです」

社長   「・・・・マジ?」

阿部   「マジです。で、このファイルですか?」

社長   「ええ」


私はマウスをクリックし、ファイルを開いた。
そこには内部で行なわれた不正の帳簿が入っていた。
そして、社長と会長を会社から追放するための要請文が書かれていた。


阿部   「ほぅ~。これはどこから?」

社長   「阿部さんが前に仕掛けたサーバーの監視ソフトで・・・」

阿部   「ああ、あのソフト・・・」

社長   「それをプリントアウトして・・・それで・・・」

阿部   「そのプリントアウトした紙を誰かに見られた?」

社長   「多分、それから、嫌がらせが多くなって・・・」


以前、会長と社長に雇われて、会社の内部サーバーに監視ソフトを仕掛けた。
このソフトはPCの識別番号を記録する機能も持っている。


阿部   「このファイルは、生データですか?」

社長   「多分、そのままコピーしたので・・・」

阿部   「すると、このファイルの・・・IPは・・・」

社長   「・・・・」

阿部   「それで、IPの一覧表は・・・」

社長   「・・・・」

阿部   「これか・・・?本人のパソコンですね」

社長   「・・・・何でわかるんですか・・・」

阿部   「パソコンにはそれぞれの識別番号があります。それを、あのソフトは
      同時に記録するんです。まっ、研究部の受け売りですが・・・」

社長   「はぁ・・・」

阿部   「その識別番号が合っていれば、その人物がIDを使って開くパソコン
      ということになって、人物特定ができるという事です」

社長   「・・・そんな機能が・・・」

阿部   「このファイルが株主総会前に会長の手に入ったら・・・・」

社長   「ゾッとしますね・・・」

阿部   「まっ、会長はインターネットの事を外国人の名前だと思ってたぐらい
      ですから、この辺は説明しないとダメだと思いますがね」

社長   「受けてもらえますか」

阿部   「ええ、社長もこの部屋に篭っているのも飽きたでしょ」

社長   「ええ、ホッとしたらラーメンが食いたくなりましたよ」

阿部   「それじゃ、ターゲットを変更させますね」

社長   「ターゲット?を変更」

阿部   「そう、ロビーで、このカードを私に渡してください」

社長   「・・・私は」

阿部   「大丈夫、下には私の部下がいますから」

社長   「じゃあ、親父には電話しておきます」

阿部   「よろしく」


私と社長は階下に降りた。
やはり、カップルが同じエレベーターに乗った。

ロビーにはすでに調査スタッフの脇田が待機している。


社長   「じゃあ、これを会長に!!」

阿部   「任せてください」


私は目で脇田に合図をして、そのまま、駆け足でホテルから出た。

雨が降っている。
私は傘を開き、タクシーを拾った。


運転手   「お客さんどこまで?」

阿部    「○×駅まで」




        続く



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ギリギリ探偵白書・364


 ギリギリ探偵白書
 「危険な奴ら・第1話」


           

その日、私は都内某所の高級ホテルに呼び出された。
ラウンジではなく、ホテルの部屋である。

依頼者はある企業の社長で、身元はしっかりしている。
しかし、部屋まで来てくれということは、並々ならぬ事情があると思い
私は防刃ベストなどの装備品を身に付け、GPS位置情報システムを脚に巻き付け
ホテルの一室に向かった。

もちろん、屈強なスタッフ2名を同行させている。
また、何かあった時のために大きなカバンに保険の資料を大量に詰め込んだ。


脇田  「代表、もしもの時はどうするんですか・・・・」

阿部  「う~ん、どうしようか・・・」

脇田  「・・・作戦はないんですか!!」

阿部  「とにかく逃げる!!それに限る」

脇田  「逃げる?」

阿部  「そうだ、逃げる。二人は下で待機していろ」

脇田  「わかりました」

阿部  「俺の腕時計にはトランスミッタが入っている。周波数は・・・」

脇田  「わかりました。モニターします」


私の時計にはトランスミッタが入っている。
トランスミッタとは、電波を発生させる装置のことで
ラジオを聴くように外でモニターできるようになっている。
また、ICレコーダーが組み込まれており、13時間程度の録音ができる。

結婚記念日に妻が業者に頼んで作ってくれた物だ。

私とスタッフはホテルの敷地の前で二手に分かれた。
そして、私はそのままホテルの中に入り、ロビーを素通りした。

エレベーターの前に立つと、お客らしき男女のカップルが私の後ろに立った。
私はトイレに行く振りをして、そのカップルをやり過ごした。

カップルは待合の椅子にいる男を一瞬見て、エレベーターに乗り込んだ。

私も椅子にいる男を一瞬みた。
その男は、渋い顔で辺りを見ながら、四つに折りたたんだ新聞を左脚に置いている。
横顔から見て取れるのは、眼光が鋭い程度。

私はトイレから出て、再びエレベーターの前に立った。
今度は私の後ろに立つ者はいなかった。

呼び出されたのは12階だが、私は13階を押した。
そして、13階まで上がり、非常階段で12階まで降りた。

部屋の前に立ち、ドアをノックすると、サッとドアが開いた。


社長   「入って」

阿部   「何事ですか?」


私は部屋の中に入った。
社長はさらに奥へ手招きしたが、私はその場に立ち止まった。

人の気配がする。

私は鍵を閉め、のぞき穴から廊下を見た。
すると、エレベーター前にいたカップルが廊下を通り過ぎていった。

(・・・何だ?)

この依頼者である社長とは昨年あたりから懇意にさせてもらっている。
彼は中小企業でも比較的規模の大きい会社を、ワンマン社長であった父親から
譲り受けた2世社長である。

経営自体は順調だが、親族や古参の幹部とのトラブルでよく私を呼び出した。

実質的な権限は会長である彼の父親が持っているのだが、経営自体は社長である彼が行なっている。
彼の父親は「わがまま」を絵に描いたような人物だが、彼はその逆であり、気が弱い。

しかし、頑固というところは遺伝するのか、父親譲りの頑固さを併せ持っている。
何とも不思議な人物だ。


社長   「さっ、座って・・・」

阿部   「ちょっと、待ってくださいね」


私は風呂場のシャワーを全開で出し、部屋のテレビの音量を大音量にした。


社長   「な、何を・・・」

阿部   「まっ、念には念をですよ」


シャワーを全開にしたり、大音量でテレビをつけると、内部の音声が聞こえなくなる。
もしも、隣の部屋にコンクリート貫通型のマイクを仕掛けられていた場合、内部の音声は聞かれてしまう。

コンクリート貫通型マイクは、秋葉原などで2万円程度で市販されているから、
社長が何らかで監視されているのであれば、仕掛けられているとも考えられる。

プロはプロほど、念には念を入れて仕事に挑むべきだ。


社長   「実はこのカードを親父に渡してもらいたいんです」

阿部   「社長、監視されています?」

社長   「ええ、だから、ここで篭城しているんです」

阿部   「相手は?我々と同業?」

社長   「同業といえば同業かもしれませんが、バックが・・・」

阿部   「・・・ヤのつく人達ですか?」

社長   「多分そう思います」

阿部   「なるほど、男女のカップルと目つきの悪い奴か・・・」



        続く



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ギリギリ探偵白書・363


 ギリギリ探偵白書
 「持ってるカネ・第3話」


 
 一本の電話から調査を行う事になった。
 調査は行方調査、金を貸していた人間に逃げられたらしい。
 手掛かりとなる携帯電話番号から調査を進めることになった。 




 数日後、判明した携帯電話の契約者は女性だった。
 我々は判明した住所地に行き、女性の撮影を試みた。
 その写真を依頼者に確認してもらったところ、まったく知らないとの事だった。


サザビー 「そりゃ、そうだろ・・・」

阿部   「一応だよ、一応」

田中   「女に聞き込みかけますか?」

阿部   「んにゃ、繋がってる可能性が高いからな・・・」

サザビー 「相手の顔がわからんってのは面倒だな」

阿部   「ああ、下手に動けないからな」


 この場合、近所に聞き込みをかけることも考えられたが
 対象者本人に聞き込みをかけてしまう可能性もある。
 また、どこと繋がっているかも不明で
 名前もわからず、写真もない。聞き込みは不可能だ。

 我々は、その女をしばらく監視することにした。
 女は都内の企業に勤めているらしい。
 毎日、決まった時間に出てきて、決まったビルに入っていく。
 帰りも決まった時間に出てきて家に帰る。

 女が動いたのは、4日目だった。
 この日は、私とあべちゃんで調査に臨んでいた。

 いつもとは感じの違う服装で出てきた女は、いつものビルには向かわなかった。
 
 女は、電車を乗り継ぎ、あるアパートの一室に入っていった。
 あべちゃんは素早く女の後を追い、アパートの部屋を確認し戻ってきた。
 

阿部   「中で男の声がしたわ」

サザビー 「一件落着か?」

阿部   「まだ、わからんな」

サザビー 「表札は?」

阿部   「株式会社○○ってあったな」


 私は、事務所に電話した。
 まだ田中がいるはずである。

 田中に、社名を伝え、登記簿をあげるように指示した。
 

阿部   「中の奴の顔を撮らないとな」

サザビー 「張り込むか?」

阿部   「出てくるかね?」

サザビー 「二人でメシ食いに出るんじゃね?」

阿部   「う~ん」


 アパート前で作戦を練っていると、携帯がなった。
 

田中   「出ましたよ、そんな会社無いですね」

サザビー 「語ってるだけか?」

田中   「ええ、登記してないですね、ただ」

サザビー 「ただ?」

田中   「ネットには載ってます。株式会社○○」

サザビー 「住所は、東京都・・・・か?」

田中   「住所も合ってます。代表者が○○って奴です」

サザビー 「ふ~ん・・・」


阿部   「サザビー、ピンポン大作戦で行こう」

サザビー 「ピンポンダッシュか?」

阿部   「そう、押してすぐ逃げる。て意味ねぇじゃん」

サザビー 「そう?おもろいかもよ」

阿部   「面白いだけじゃ、ダメだよぉ」


 ピンポン大作戦とは、ピンポンを押し出てきた相手の顔を
 撮影しようという作戦である。
 主に引越しの挨拶を装い、超小型カメラで撮影する。
 コチラの顔を晒すことになるが、一撃必殺である

 作戦を敢行し、男の撮影に成功した。
 その日の内に依頼者に確認してもらった。
 そして、その男が探していた対象者であった。


サザビー 「ではでは、任務完了ですな」

阿部   「しかし、あの男、金持ってるカネ」

田中   「ぷっ、金とカネをかけましたね?
      オヤジギャグってやつっすか?よ、オッサン代表」


 ガツン!!

 (・・・懲りない奴だ)



        完



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ギリギリ探偵白書・362


 ギリギリ探偵白書
 「持ってるカネ・第2話」


 
 調査を終えた時には終電は終わっていた。
 始発で帰宅すべく乗った電車で、まさかの6時間爆睡。
 帰宅を諦め事務所に戻ると、待っていたのは桃鉄だった。



サザビー 「・・・仕事は?」

田中   「まあ、ボチボチやれば良いっすよ」

サザビー 「へぇ、ボチボチだってよ、あべちゃん」

田中   「ぐげっ!桃鉄なんかやってないっす、仕事命っす」

サザビー 「冗談だよ」


 その時、田中の背中越しに、事務所の戸が開くのが見えた。


田中   「まったく、鬼代表が湧いて出たのかと思いましたよ」

 (湧いて出てる途中ですよ)

 やはり、事務所に現れたのは、あべちゃんのようだ。
 しかも、意地が悪いことに、物音を立てずにいる。
 田中は背後の気配に、全く気が付いていないようだ。


田中   「さ、桃鉄やりましょう。鬼のいぬまにね♪」

サザビー 「・・・・・」

田中   「ん、どうしたんすか、早くやりますよ」

阿部   「仕事をか?」

田中   「何言ってんすか、桃鉄ですよ。モモ・・・ゲッ!!」

阿部   「ゲッ!って何だよ?やりましょう、桃鉄」

田中   「いや、僕は報告書をつくらねば・・・」

阿部   「ボチボチやれば良いじゃない」

田中   「いえ、そんなわけには・・・」

阿部   「じゃあ、桃鉄やらんの?」

サザビー 「鬼がいたら出来ないんだよな」

田中   「な、よ、余計な事を」

阿部   「ほう、鬼ね・・・」


 その時、電話がなった。
 

阿部   「ち、命拾いしたな」

 (命まで取る気!?)


 電話は、相談の電話だったようだ。
 そして、その日のうちに相談に来るらしい。
 私は、電話の途中で事務所を出た。
 
 1時間後、東山温泉から戻ると、田中が正座して仕事をしていた。


サザビー 「何やってん?」

田中   「サザビーさんのせいですよ」

サザビー 「あべちゃんは?」

田中   「面談です」


 それから、しばらくウトウトしていると賑やかに、あべちゃんが入ってきた。

 
阿部   「お~い、調査だぞ。ん、田中、どうした?正座なんかして」

 (アンタの指示では?)

 
 相談者は、詐欺に遭っていた。
 金を貸していた人間に逃げられたらしい。
 
 携帯電話の連絡が取れなくなったのは1週間前。
 どうやら、解約されているらしい。
 そして、教えられていた住所地に行ってみたが、そんな住所は無かった。
 当然、金を貸した男を見つけることは出来なかった。


阿部   「名前も偽名かもしれないんだよ」

サザビー 「なるほど、迷宮入りだな」

田中   「な、あきらめ早いっすよ」

サザビー 「写真は?」

阿部   「ない」

サザビー 「迷宮入りだな」

田中   「すぐに諦めない!」


 依頼者と逃げた男は婚約していた仲だったという。
 しかし、依頼者は男の部屋にも行ったことがなければ写真すら持っていない。

 本当に恋人関係だったのかも疑わしい。
 しかし、借用書だけはしっかりしていた。
 
 
阿部   「とりあえず、携帯の線から追ってみるべ」




        続く



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ギリギリ探偵白書・361


 ギリギリ探偵白書
 「持ってるカネ・第1話」



 事務所を出て、国道246号線を渋谷方面に向かう。
 山手通りでは、夜通し工事が続いている。
 
 徒歩20分の道程を時間通りに歩く。
 朝の4時である。
 道玄坂を歩く人も少ない。

 (始発は何時だろう?)

 私は吉野家に入り、少し早い朝食若しくは少し遅い夜食をとることにした。
 時計が5時を回ったのを確認してJR渋谷駅に向かう。
 渋谷駅に着くと、滑り込むようにホームに入ってきた電車に乗り込む。

 その日の調査は、深夜まで及んだ。
 当然、終電はなくなり、私は帰宅する足を失った。
 そこで、事務所で時間を潰し、始発で帰宅するつもりだった。

 そして計画通り、電車に乗り込むことには成功した。

 しかし、私は、そこで力尽きた。

 携帯電話の音で、目を覚ました時、電車は高田馬場駅を出たところだった。

 (・・・・・)

 私は電車内の冷たい視線を避けるようにドア付近に移動し、通話ボタンを押した。


田中   「サザビーさん、遅いっすよ」

サザビー 「今、電車なんだ・・・」

田中   「へ、今、向かってるところですか?」

サザビー 「いや、むしろ、離れていってるような・・・」

田中   「はい?何やってんすか?」

サザビー 「ところで、今、何時よ」

田中   「11時半っすよ、まもなく、お昼です」

 (ゲッ!)


 山手線は、グルグル回る。
 私は、実に6時間も爆睡していたようだ。
 およそ6週。

 私は帰宅を諦める事にした。

 (その代わり、早く帰ろう♪)


 電車を乗り換え、事務所に戻ると田中が寝ていた。

 (おいおい、人を叩き起しておいて・・・)

 とりあえず、寝ている田中の口に、うまい棒を突っ込んでみた。
 

田中   「ふぐっ!・・・」


 バリバリ。

 田中は、目を覚まさずに、うまい棒をたいらげた。

 (・・・ビックリ人間かっ!)


サザビー 「おいっ、起きろ、寝てんなって」

田中   「ふぐ、・・・ふん、ほえ」

サザビー 「仕事しろ、仕事を」

田中   「あれ、来てたんすか?おはよっす。
      ・・・あーー!!僕のうまい棒が無い!!!だ、誰がっ!?」

 (お前です)

サザビー 「あべちゃんは?」

田中   「まだじゃないですか?」

サザビー 「電話してないの?」

田中   「ええ、昨日、遅くまで調査だったみたいですから」

 (俺もです)

田中   「サザビーさんも昨日の調査出たんすよね。
      早いっすねぇ。関心関心」

サザビー 「・・・・・」

田中   「で、ですね。桃鉄が無いんすよ」

サザビー 「は?」

田中   「桃鉄ですよ、モ・モ・テ・ツ!!」

サザビー 「聞こえちょるわい!ってか、そこにあるじゃん」

田中   「ほわっ!ホントだ。ありましたよ」

サザビー 「・・・・・」

田中   「よぉし、んじゃ、やりますか」

サザビー 「・・・仕事は?」

田中   「まあ、ボチボチやれば良いっすよ」

サザビー 「へぇ、ボチボチだってよ、あべちゃん」

田中   「ぐげっ!桃鉄なんかやってないっす、仕事命っす」




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ギリギリ探偵白書・360


 ギリギリ探偵白書
 「恐喝男・第5話」



 調査の結果、問題自体は解決の方向へ向った。
 しかし、それは全体から見れば、ほんの一部分でしかなく
 裏には、まだ大きな問題が潜んでいた。
 そして・・・。 





恐喝男  「社長はどこや?」

阿部   「代わりに俺が聞いてやるよ」

恐喝男  「社長に話があるンや」

阿部   「ヘタな関西弁は、関西人に怒られるよ」

恐喝男  「何やワレ!!」

阿部   「え~と、右から言おうか」


恐喝男のほかに4人の強面顔が社長室に入ってきている。
ちなみに私は一人である。


阿部   「え~と、君は○○君?小学校のときの夢は野球選手、それから、
      君は・・・、何て読むの?沖縄出身?それから・・・」

恐喝男  「なっ、なんだ?」

阿部   「なんだ?何だって何だよ。自己紹介がねぇーから、こっちから
      お前らの紹介してやってんだろっ、黙って聞いとけ」

恐喝男  「あ、あんた誰だよ」

阿部   「俺か?それを聞いて、平気だと思うか?」

恐喝男  「・・・・ちょ、ちょっといいですか。兄さん」

阿部   「お前みたいな弟はいねぇーよ。年が違うだろ、○×よ」

恐喝男  「・・・・」

阿部   「偽名を使うなよ。本名は○×○雄だろ?」

恐喝男  「・・・・どうする気だ?」

阿部   「お前ら次第よ」

恐喝男  「・・・・ちっ・・・」

阿部   「とりあえず、もう二度と来るなっ、それを約束しろ」

恐喝男  「・・・・そっ、それだけで・・・」

阿部   「だってよぉ、大事にするなっていうからさっ。
      これにサインと捺印な。ほらっ」


私は誓約書を恐喝男に渡した。
彼は、サラッと書き、親指に朱肉を押し付け、その親指を誓約書に押し付けた。


恐喝男  「これで、自分らは・・・」

阿部   「ああ、帰っていいよ。あっ、そうだ」

恐喝男  「な、何か・・・」

阿部   「お前らは全員、ウチで監視するからなっ。よく覚えとけ。
      それから、坊主頭のお前、おふくろさんが心配してたぞ」

坊主頭  「・・・・」

阿部   「電話の一本でもしてやれっ」

坊主頭  「・・・」

阿部   「はい、はどうした?それも、ちゃんと見てるからな」

坊主頭  「・・・・はい」

阿部   「よし、帰っていいぞ」


彼らは深く頭を下げて帰っていった。
そして、依頼者が社長室に入ってきた。


依頼者  「・・・ウチの会社の顧問になりませんか?阿部さん」

(うっ、それはおいしそうな話だけど・・・・)

阿部   「そういう柄じゃないんで、もし、何かあったら呼んでください。
      それじゃ、私もこれで・・・」


依頼者さんの会社を出ると、エントランスがあり、そこにはエレベーターがある。
そのエレベーターの横には喫煙室があり、その中から聞きなれた声がする。


サザビー 「おっ、あべちゃん、終わったな。飯、めし!!」

夏目   「俺の出番がないじゃないですか!!来た意味ないですよ」

阿部   「おぉ、存在を忘れてた!!」

サザビー 「そこに美味いラーメン屋があるんだそうだ」

阿部   「奢れってことか?」

夏目   「もちろんでしょっ。顧問まで断って!!」


・・・なぜか私がラーメンを奢る事になった。

ヤレヤレである・・・。




        完



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ギリギリ探偵白書・359


 ギリギリ探偵白書
 「恐喝男・第4話」


 
 企業は何者かに脅迫されていた。
 依頼者である社長は、事を穏便に済ませたいようである。
 解決を目指すべく調査を開始した。





そして、1週間。

様々な判明事項が挙がってきた。

この問題には、依頼者の企業が上場を果たすまでの期間にいくつかの問題が
あったことが起因となっている。

その起因のキーマンは、恐喝行為をしている調査対象者ではなく
一般の市民であり、その人数は5人であった。

彼らと依頼者の間に示談が成立すれば、問題自体がなくなる。

そこで、私は彼らを徹底的に調べ上げる事にした。
そして、その情報を依頼者の顧問弁護士に教えたのだ。

この弁護士さんは非常に腕がよく、数日の間に示談を取りまとめてしまった。
しかし、事実上の問題が解決されたからといって、問題の本質が解決するわけではない。


カズヤ  「代表、とりあえず解決しましたが、恐喝ヤロウはまた来ますよね」

阿部   「ああ、それなら、サザビーのチームが監視してるよ」


サザビーはT.I.U.総合探偵社代表代理である。
その尾行術は、T.I.U.内でも最高レベルである。
例えば、私と組んで尾行したとすると、一緒に尾行している私でさえ、サザビーの
姿を確認できない時があるほどで、探偵の中でもプロと言われるほど腕がいい。


カズヤ  「サザビーさんか・・・、それなら連絡を待つだけですね」

阿部   「ああ、とりあえず、お前らは依頼者さんのガードを今からやってくれ」

カズヤ  「じゃあ、早速リュウとナオに連絡しときます」


カズヤが依頼者さんのところにむかって2時間後、サザビーから連絡が入った。


サザビー 「う~ん、こりゃダメだな」

阿部   「どうした?」

サザビー 「どうやら、マルタイ(恐喝男)は、人を集めてるな」

阿部   「それで?」

サザビー 「強硬手段に出るしかないって言ってたよ」

阿部   「いつ?」

サザビー 「今からだって」

阿部   「ほぅ~、今からか」

サザビー 「てなわけで、依頼者さんに連絡しといてよ」

阿部   「ああ、わかった。サザビーはそのまま継続な」

サザビー 「まじ?」

阿部   「マジ。俺もすぐ行くから」

サザビー 「ヘイヘイ、了解しました。は~腹減った・・・」


私はすぐにカズヤに連絡し、警戒態勢に入るように伝えた。
その上で、私はたまたま事務所で寝ていた警備会社を運営している元T.I.U.の
夏目に応援を頼んだ。


夏目   「・・・マジですか・・・、まぁ、いいですよ」


私は身支度を整えて、依頼者さんの会社に向かった。

そして、依頼者さんの会社が入っているビルの1Fにある喫茶店に到着した時
サザビーから連絡が入った。


サザビー 「珈琲ですか、悠長なもんですな・・」

阿部   「もう着いたか」

サザビー 「ほらっ、右」

阿部   「右?・・・おっ、来た」


私は珈琲を一気に飲み干し、そのままエレベーターに乗った。
そして、社長室に入った。


依頼者  「・・・阿部さん、どうしよう・・・」

阿部   「○○さん、あなたは、横の部屋に行ってなさい。あとは、
      こっちでやるから」


その後、秘書さんが慌てた様子で内線電話で連絡してきた。
私は「そのまま通しなさい」と言った。

数分後、恐喝男が社長室にやってきた。



        続く



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