自分の部屋に戻れない。
似た扉をいくつも開けてみるが、それが自分の部屋ではない。
困りはてていると、病院の診察室にいて、
医者から「認知症です。」と言われる。
やっぱり、と納得し、看護婦にうながされ廊下に出る。
少し歩いて振り返ると居たはずの妻が居ない。
診察室に戻ろうとするが、ない。
廊下の右だったか、左だったか、憶えていない。
一緒に居たのは妻だったのか。
母だったかもしれない。
それすらも思い出せない。
これが認知症か。
なってみてわかる。これでいいんだ。
呆けてよかった。
そこへ妻が「もう起きたら?」と声をかける。
寝呆けただけか。
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