93歳の妻と、96歳の夫が同じ日に亡くなった。
子や孫が独立し、二人だけの生活になったが、妻が記憶する力を失い、施設で暮らすようになった。
夫は施設の近くの川と神社の清掃をつづけた。
自分が頑張れば、妻の回復につながるかもしれない。
川のよどみが消え、住民から感謝状が送られた。
夫の口癖は、「自分が元気なうちに、妻を見送りたい。」
昨年秋まで車の運転ができるほどだったが、年を越して急に衰え、最近では夫婦で並びの病室に入院していた。
容体が悪くなり、先に妻が息を引き取り、そのことを娘が隣の部屋の父に伝えた。
夫はうなずき、目を閉じて、数時間後眠るように旅立った。
葬式も、墓も、後々の法事も、ずっと二人一緒。
滅多にない、夫婦葬。
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