無名会

連 句 で 遊 ぼ う!
楽しくなければ連句ではないよね。

特集:連衆について

2010-07-15 22:26:15 | Weblog
連句のなかま2010年7月17日発行


今回は紀彦さんから投稿をいただきましたのでそれを掲載いたします。
そのあと無名会のメンバーのコメントもいただきましたのでそれもお楽しみに!
皆さんの連句に寄せる思いは熱いですね~。
連句・素朴な疑問   菅原紀彦 
 
 連句を試してみたいと言って、やって来た人がいるとします。その人には、連句会の後で「面白かった。またやりたい」と思って貰いたいものです。では、その面白さを伝えるには、一体どうしたら良いのでしょうか。
新しい連衆に出会う
 ここ数年で、連句に挑戦したいという人に何人か出会いました。下手に紹介して連句を誤解されてしまったら困りますから、そんな時は妙に緊張します。これまでも一度だけ連句会で顔を見かけて、その後、二度と現れなかった人がどれ程いたことでしょう。
とにかく、こちらとしては、新しい連衆の気持ちを何としても繋ぎ留めるのが至上命題になります。まず、新しい仲間が来た時には、彼らの気持ちが冷めない内に、ほんのイントロダクションのつもりで、なるべく気軽な連句会を催すことにしました。
連句をどのように紹介するか
では、その連句会で何をすれば良いのか。たとえば「他の詩とどう違うのか」について説明したら、楽しんで貰えるのではないかと考えました。俳句や短歌では味わえないけれど、連句では味わえる面白さがあれば、それこそが連句の魅力だと言えそうです。
そのためには、ひたすら実作に沿って説明するしかありません。その際、新しい連衆にとって、初めに必要となるのは何か。それは、連句の歴史や形式上の知識ではなく、何よりも付句を作るためのガイダンスではないでしょうか。これを説明して貰えなければ、何をしたら良いのか分かるはずがありません。実際の席でも、どうして良いか分からず途方に暮れた新しい仲間を、かなりの頻度で見かけます。そんな人達に出会うと、気の毒に思うと同時に、心配で仕方がありませんでした。もしかしたら、それがきっかけで嫌になってしまうかもしれません。
連衆の疑問全てに答える
 そういう仲間を出さないためにも、私自身が連句を初めた頃に知りたかったことを書き出すことにしました。たくさんの連衆から聞いてきた疑問も思い出しながら、同じように並べてみます。その上で、書き出した事柄の全てに差し当りの答えを用意することにしました。大事だと思ったのは、思いつく限りの疑問「全て」に答えを準備すること。もちろん、正解などありません。でも、だからこそ、こちらの考えをまとめておくのです。
 疑問の例を3つほど。
1.発句とは、どのようなものなのか。俳句
  とはどう違うのか。
2.どのような付句が良い付句なのか。そも
  そも「付ける」とは何をすることなのか。
3.式目とは何なのか。式目は、どこまで尊
  重すべきものなのか。
すごく大雑把で素朴な疑問ですが、初めて連句に触れた人にとっては、どれも切実な問題でしょう。
 それぞれの問いは 単純ですが簡単には答えられません。それでもなお答えようと頑張ってみると、分かって来ることがあります。ある問いに答えることによって、直ちに次の「なぜ」が現れることです。その「なぜ」に答えながら、もうこれ以上「なぜ」を出せない所まで詰めてゆけば、疑問のかなりの部分が解消されます。ここまでやれば、少なくとも新しい連衆が途方に暮れることはない、と思いました。
新しい連衆は困っている
 新しい連衆にほんの数人出会っただけの私が、こんな余計なことを考えてしまうのも、連句を始めた頃に、他でもない、この私自身が大いに困ったからです。
 一座をガイドしてくれる捌きには、気さくで親切な人がたくさんいます。ですが、一方で、その親切心がアダとなり、連衆を困惑させているのも事実です。この点は、私が連句を始めた当初と少しも変わりません。新しい仲間への接し方については、もう少し何とかならないものか。
一番困る連句ガイダンス
 実作中は、先ほど挙げたような類の素朴な疑問が必ず出ます。そうした疑問への答え方ひとつで、新しい連衆が持つ印象はがらりと変わるのです。
まずいことに、この種の疑問に初めから答えようとしない人もかなりいます。「自分は未熟なので、よく分からない」とはぐらかしたり、発句も付句も「何でも良いですよ」とかわしてしまったり、「もっとよく知っている人に尋ねて欲しい」と丸投げしたり。
 どれも絶対に良くない。好意的に考えれば、謙虚で大らかな姿勢を見せて、連衆をリラックスさせようとしているのかもしれません。しかし、質問者は本当に困り果てています。未知の詩形式に触れて、少しでも考えるヒントを欲しがっていることに気付いて欲しい。こうした疑問に答えようとしない人は、過去に自分も同じような疑問を抱いたことを、すっかり忘れてしまったのでしょうか。理由はどうあれ、ガイドをしないのなら、困っている連衆を見捨ててしまうことと同じです。
まったく何もしないというのなら、それも一つの見識かもしれません。ただ、ややこしいことに、そんな捌きでも、式目については実に丁寧に説明をします。そもそも式目は、良い連句を成立させるためのヒントです。でも「良い連句」とは、素朴な地点から連句を眺めることによって初めて見えてくるものではないでしょうか。また、「良い連句」のあり方は、言葉の変化と共にどんどん変わって行きます。そういう事実は見ないことにして式目だけを強調すれば、素朴な地点の疑問は後回しにして、派生的な性質を優先的に説明してしまうことにもなるでしょう。初めて連句をした人に、派生した枝葉だけを見せて、幹の方は自分で想像しろとでも言うのでしょうか。連句の「幹」を想像するための式目は、既に現実の言葉の変化から取り残されてしまっているかもしれないのに。
ミスリードの危険
 新しい仲間は、この過程で、幹より枝葉が大事であるかのように錯覚してしまうかもしれません。連句は規則だらけだと思うようになり、前句よりも打越が気になって付句が作れなくなる危険さえあります。彼らから「決まりが多くて難しい」という感想を引き出したとしたら、どんなに親切に迎えたとしても、ミスリードしてしまったも同然なのです。
とは言え、長い目で見れば、スタートはどうあれ、結局は同じことなのかもしれません。でもそれは、あくまでも、長い目で見れば、という話。初めて参加した時に「規則だらけでつまらない」「格好は整っているが、どこにも詩情を感じない」と思われて、それっきりになってしまったとしたら、何の意味もありません。
素朴な疑問は、連句の根幹にかかわります。もし尋ねられたら、全力で答えてあげて欲しいのです。捌きが返答に窮したら、連衆皆で考えれば良い。新しい仲間には、いつもよりいっそう強く連句の根幹を意識して紹介する必要があります。私が連句を始めた頃のことを振り返っても、身に染みてそう思うのです。
 新しい仲間が再び連句会に来てくれた時には、正直な所、ほっとします。でも、彼らが問いかけて来た疑問には、もっと良い答えがあったのではないか。そんな思いは消えません。ですが、そうならばそうで、もう一度、大いに悩むことにしました。近頃は、それしか方法はないのではないか、と考えるようになったのですが、この辺りについて、是非多くの実作者の意見を聞いてみたいところです。
 皆さんは、新しい連衆を、どのように迎えているのでしょうか。そして、連句の素朴な疑問に、どんな答えを用意しているのでしょうか。


  
連句を始められたばかりの人に、無名会の皆さんは
どのようにアドバイスをされますか?
連句について思うところを数行で表現すると?
 

★梅田實(氏名五十音順)
◎ 3回来て辞められたら惜しい。
だいたい五七五をかじった人ならやりたい気があればできる。
おれがおれがの人はダメ。 無名会はみな面白がってやっている人だけが続いている。
もし新人が来たらみな歓迎してその場その場で持っているている知識で
親切にお節介しますが系統的に教えるのは難しいし出来ない。

★おおた六魚
◎ 連句とは、二人で短歌一首をつくることを反復する、文芸的言語遊戯の連鎖です。
(数行に収まりきれませんでしたので、次号に詳しく掲載させていただきます。
乞うご期待)
 
★古賀直子
◎ 初参加の連句会で見学させて下さいと言ったところ連句は見るものではなく、
参加するものと云われて戸惑いました。
式目は後からついてくるもの、と理解したのはずっと後のことです。
初心者にとっては手取り足取りよりは、
どんな付け句もOKとおおらかに構える座の雰囲気が大切かも。

★玉木 祐
◎ 私はまず、連句も遊びである。
あまり難しく考えず遊びにはルールがありそれに従う。 これが基本です。
初めて会に来られる方は少なくとも韻文に興味があると考えます。
とすれば、前句に感じた五七五の趣に短歌の七七をつけるような気持ちで、
気楽に遊ぶ。遊びでも始めは皆不安があります。
それを乗り越えられるのが時間。
要は好きか?嫌いかに尽きると思います。素っ気ないかしら!!!

★藤尾薫
◎ 最初、式目をいわれると「なんて難しい!」と思うでしょうね。
私も付いていけるかと心配しました。
でも座の人たちが引っ張ってくれたので今でも続いています。
最初はこまごま注意しないで受け入れるというのが受け入れる側の心構えではないかしら。初めての人はあまり自分を追い込まないほうが長続きするのかも。
鈍というのも才能かもしれません。やりたいことは続ける。これぞ道楽。

★星明子
◎ 何も知らずに入会して多大なご迷惑を連衆におかけした私が続けられたのは
一重に皆様の暖かい雰囲気、成程ね等と言って下さる言葉を頼りにでした
(一回で止めなかった側のコメント)


 

源心「涙の粒」
  膝送り
 辣韮は涙の粒に似ていたる        古賀直子
  天気予報の告げる入梅         藤尾 薫
 メヌエット流れる舞台聴き惚れて     星 明子
  奈落の底に一休みする        おおた六魚

 屋上に今宵の月をめでるらん       玉木 祐
  忘れ団扇にのこすイニシャル        直子
 妻妬いて恋文隠す狐花             薫
  目蓋のひとをふと思い出し         明子
 中学校出席点呼伊呂波順           六魚
  移動教室班長になる             祐
 あの御仁次の宰相めざすとか         直子
  仲は良くない会津長州            薫
 仰ぎ見る天守彩る花吹雪           明子
  焼蛤に徳利傾け              六魚
ナオ
 云い訳はいいわけはない腐れ潮         祐
  ヴィトンの財布口かたく締め        直子
 遺言は全部寄付だと書き残し          薫
  豪華船にて世界周遊            明子
 咲きのぼるグラジオラスのような娘で     六魚
  草食系でイケメンの彼            祐
 うかうかと口説き上手に嵌められて      直子
  占い好きで八卦見通い            薫
 寒月に馬ひいて行く行商人          明子
  遠くに赤く火事のどよめき         六魚
ナウ
 張り込みの目の前過るキャデラック       祐
  値踏みしている蔵のお宝          直子
 飛花落花甍の波の美しく            薫
  田打ちの土の黒々として          明子


   2010年6月20日関戸第3学習室