原題:『この道』
監督:佐々部清
脚本:坂口理子
撮影:朝倉義人
出演:大森南朋/AKIRA/貫地谷しほり/松本若菜/津田寛治/柳沢慎吾/羽田美智子/松重豊
2018年/日本
作品が「映画」にならない映画製作会社について
作品冒頭で描かれる北原白秋が作詞した「あめふり」の経緯や、北原が島崎藤村の『若菜集』を愛読していたところなど、一応要所は押さえているのかもしれなとしても、北原は松本若菜が演じた松下俊子と離婚後、貫地谷が演じた佐藤菊子と結婚する前に詩人の江口章子と結婚しているはずなのだが、何故か江口は本作に登場しない。
戦争に関しても北原といい北原の相棒として描かれる作曲家の山田耕筰といい、本作に描かれているように反戦だったのかどうか怪しい。戦意高揚のために仕方がなく軍歌を作ったように描かれているのであるが、北原は「万歳ヒットラー・ユーゲント」という詩を書いており、山田は「戦争協力」で多数の軍歌を作ったと指摘されているからである。
坂口理子の脚本にそもそもそれほど期待してはいなかったが、史実を曲解するのはよくないと思うし、映画というよりもテレビドラマのような感じで、せいぜい映画としてのスリリングさといえば子供による「アドリブ」の部分くらいで、童謡をモチーフにしただけのことはあるのかもしれないのだが、それはベテランの映画監督の佐々部清の頑張りによるものであろう。