最近は雪の降る日が少なくなった。私の子供の頃にはよく雪が降った。朝起きると辺り一面真白になっていてまぶしく、美しかった。氏神様の松の緑や南天の赤い実が雪の中から顔をのぞかせてなんてきれいだったことか。私達の小学校が火災に遇って、あちらこちらに分散して勉強をした四年生の時のこと、重忠館跡に障子張りの会館があり、そこが私達の教室となり、家から四十分以上かかって雪の中を歩いて行った。仲良しのみよ子ちゃんと下駄に積る雪を落し乍ら松ぼっくりで雪つりをしたり、なんとのんびりしていたことか、稲荷塚の辺りは山道がつづき、夕方遅くなると、うす暗い道をこわくて目をつむって夢中で走って帰ってきた。
山間の田圃に狐火がともるとか、神社の沼にかっぱが出て女の子をひきこむとか、昔の人の話を本気で聞いてこわかったこともあった。何か雪が降ると幼い日を思い出す。今年はまだ雪らしい雪は降らない。
これからの子供達のためにも、いつまでも平和でのんびりした幼い日の思い出のつづくことを願いつつペンをおきます。
菅谷婦人会『しらうめ』第12号 1991年4月