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コンゴの泥沼エボラ、PHEIC発出の周辺とその後。カネ不足・対策・ワクチン・ベニ再燃・2桁増続く

2019-07-20 09:34:25 | エボラ出血熱・EVD・エボラ・エボラウイルス感染症

PHEIC国際的に懸念される公衆衛上の緊急事態の宣言後の状況。

前回、PHEICのちょっと穿ったことを書きましたが、会見で事務局長が言ってること率直に読めば、

  • 今回発出に至ったのは、ゴマでの発生。人口200万人の大都市、北きぶ州の州都。かつ、うがんだ国境に面している。
  • 一旦はおさまったBeniでの再燃。
  • さらなる暴力。
  • コンゴからウガンダの魚市場に出かけて、コンゴに戻った後にエボラ(EVD)で死亡した女性感染者例。感染した状態でウガンダ国内を動き回ったことから、接触者調査を要している。
  • 今回の発出は、資金獲得(fundraising)のためではない。でも、資金調達が遅れて必要な対策がとれないのは残念。特に他の地方における調査ができていない(だから、発生してから動くしかない)。コンゴは出来ることはやっている。他国からの支援、経済的支援を含め必要。
  • 人や物資の流れを止めることはしないよう要請。これらはコンゴ経済に打撃を与える。

その後の現状。

  • 2桁増で増え続け2546例に。18日(発表ベース)は10例。うち4例は再燃してるBeni。他にButembo (2), Mandima (2), Vuhovi (1), and Mutwanga (1).
  • 1例はワクチン接種を受けた医療従事者。これで医療従事者の感染は137例、死亡41例
  • ゴマ空港でのサーベイランスは24時間体制で。

PHEICでいくらか対策強化されていますが、増加ペースは鈍らず。
事務局長は「PHEICはカネのために出したんじゃないよ。でもカネが足りない。各国政府はカネの支援も」とまあ、WHO的ではあるけれど、かつてのケイジフクダ氏の歯切れ良さを思い出すと(言ってること自体はわかる人にはわかるけれど)隔靴掻痒なことを言っています。

もっと世間に知られるべきではあれど、日本ではPHEICに割かれるべき尺や紙面は京都の放火事件に吹っ飛ばされ関心たかまるチャンスを逸し(あの凶悪犯が奪った命は、京都の若き才能だけじゃなくて、対策資金不足ゆえにエボラの脅威に必要以上にさらされている今後の感染予備軍もではないかと思います)てしまいました。

あと、エボラワクチンめぐる気になることも。今回、しっかり接種すませた医療従事者の感染が報じられていますが、最初の導入後(VSV-EBOV)、2番目の銘柄(Johnson&Johnson製)を導入しようとしたところ、WHOの推奨に反してコンゴ政府が使用しないと決め、依然として使用されているのは1種類のみということがあります。当然、今回の接種済み医療者が打っていたのも最初の導入銘柄。

ここらへんも、将来の検証を待つほかないでしょう。

 

http://www.cidrap.umn.edu/news-perspective/2019/07/ebola-cases-climb-beni-groups-laud-emergency-decision

http://www.cidrap.umn.edu/news-perspective/2019/07/who-declares-public-health-emergency-over-drc-ebola

 

http://www.cidrap.umn.edu/news-perspective/2019/07/who-declares-public-health-emergency-over-drc-ebola

http://www.cidrap.umn.edu/news-perspective/2019/07/daily-double-digit-ebola-cases-continue-drc

Daily double-digit Ebola cases continue in DRC

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