新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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「新型インフルエンザの影」が日本人社会に及ぼす影響(学会発表)

2009-03-26 23:42:01 | 論文/学会発表/著作

今日は上京、霞が関を3か所ばかしアポ→国立医療センターのセミナーとバタバタと。
国立医療センターのインドネシア&ベトナムネタは、H5N1の現場を踏んでる人がモノをしゃべっているのがヒシヒシ伝わるもので、また後日、内容紹介したいと思います。早期診断、早期介入の必要性がくどく念押されていました(当然ですが)。

明日は朝から学会発表、多文化間精神医学会、海外在留邦人や在日外国人のメンタル扱う学会で、年初来の北京鳥フル騒動やパナ問題などメンタル側面から発表予定。以下、抄録原稿のコピーです(抄録提出時点ではパナ問題明るみに出る前にて入っていませんが・・・)

というわけで、明日は発表、夜は懇親会→(多分)二次会で当ブログ運休パターンに入りそうな予感、更新なければご容赦を。

以下ペースト↓
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「新型インフルエンザの影」の中国邦人社会への心理的影響<o:p></o:p>

       近畿医療福祉大学  勝田 吉彰<o:p></o:p>

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1.概要<o:p></o:p>

 本年1月、北京市において鳥インフルエンザに罹患した19歳女性が亡くなる事例が発生したのをきっかけに、現地日本人社会に社会不安が拡大し、「事実ではない噂」の流布や、外国人向け医療機関への照会殺到、タミフルを求めて声を荒げる邦人・・等の光景が展開した。本事例を考察するとともに、社会不安に向けて演者がおこなった試みを紹介する。<o:p></o:p>

2.事実関係<o:p></o:p>

 新型インフルエンザパンデミックの発生が2005年よりWHOから警告され、北京でも大使館主催の説明会が日本人会・企業関係者・日本人学校とこまめに実施され、現地日本人社会に知識が浸透していた。<o:p></o:p>

 2009年1月5日、病鳥をさばいて調理した19歳女性が鳥インフルエンザ(H5N1)に罹患し亡くなる事例が発生し、直後より、外国人向け医療機関には「マスクは入手出来るか」「タミフルは入手出来るか」「一時帰国中だが北京に戻るのは控えるべきか」等の照会が殺到した。同時に、「鳥/新型インフルエンザの人間に感染するやつが北京で発生したらしい」「タミフルが無いと死んでしまう」「倍量のまないと効かない」「日本人には食糧を売ってもらえなくなる」等の“事実ではない噂”が流布し、日本の危機管理会社まで照会が殺到する騒ぎとなった。110日には新華社通信が感染拡大していないことを発表、12日の濃厚接触者医療観察解除発表を経て徐々に鎮静化していった。<o:p></o:p>

 この間、演者は現地医療関係者と情報交換を重ねながら、ブログ(「新型インフルエンザ・ウォッチング日記」http://blog.goo.ne.jp/tabibito12)での情報提供、“事実ではない噂”の否定など行った。<o:p></o:p>

3.考察<o:p></o:p>

 北京在留邦人は、様々な中国側要因・日本側要因から慢性的にストレス負荷状態におかれている。また、近年の食の安全問題、鳥インフルエンザの散発、経済危機等より不安要因も増加している。このような中、何かのきっかけで社会不安が燃え上がる素地が存在するものと思われる。また、新型インフルエンザは未だ現存しない架空の感染症であり、その被害想定も様々であり、情報不足の中で様々な悲観的認知を生み出しがちである。これら、「慢性的ストレス負荷状態」「最近の社会問題」「悲観的認知」が併さり、強い社会不安からパニック状況に至ったものと思われる。<o:p></o:p>

対策として、こまめな情報提供、“事実ではない噂”の拾い上げと否定が有効と思われる。また、駐在員派遣企業は、これらの要素に配慮し、食糧備蓄・タミフル事前処方・情報提供等強力なサポートを展開すべきであろう。<o:p></o:p>

 

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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panic (etc)
2009-03-27 09:29:10
災害ではパニックにならない、という調査結果をあるところで聞きました。実際、阪神・淡路大震災ではパニックは起こらなかったです。新型インフルエンザの場合未知の感染症ということもありパニックの可能性はありますが、冷静平穏に対処できる可能性もあります。新型インフルエンザ発生=即パニックという考え方は我々は取らないようにした方がいいかもしれませんね。
パニックを起こさせないことが重要ですね (管理人)
2009-03-27 21:44:56
etc さんコメントありがとうございます。

その通り、パニックは不可避なことじゃなくて、「人為的な工夫・努力で緩和できる」のではというのが私の立場です。パニックを起こさない、起こっても最小限にする、そのために、リスクコミュニケーション作戦が運命を握りますし、そのことをわかっている人の存在が厚生労働省内に確認できます。楽観してはいけませんが、少なくとも悲観的になることではなく、前向きに皆で知恵を絞ってゆければと思っています。

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