新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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精神科領域における新型インフルエンザ対策(その2ー現場で要る対応)

2008-08-03 09:54:24 | 論文/学会発表/著作

「精神科領域における新型インフルエンザ対策」
http://www.seiwa-pb.co.jp/search/bo01/bo0102/index.html
精神科治療学 23(7)908-911,2008  公開しています。

(その2)は精神科医療であらかじめ検討されねばならないことです。

Ⅲ.精神科医療の現場で検討すべきこと<o:p></o:p>

1.外来診療・デイケア<o:p></o:p>

 新型インフルエンザの流行下、「病院の外来患者アクセスを1ヶ所にし、可能な限り早い段階で、呼吸器症状を呈するか発熱している患者とそうでない患者を分離する。新型インフルエンザが疑われる患者はそれ専用の場所へ誘導し、それ以外の患者は通常の外来領域へ誘導する」ことが厚労省ガイドラインに明記されている4)SARS流行時の北京では病院入口に体温計を手にしたガードマンが立ち、発熱者は強制的に「発熱外来」の受診を指示された。新型インフルエンザ流行が始まると同様の処置になるものと思われるが、たとえば単科精神科病院の玄関に発熱・呼吸器症状を有する受診者・利用者が現れたとして、自院でケアするのか、別の医療機関に行ってもらうのかあらかじめの検討が必要である。前者であれば、ハード面・ソフト面含め新型インフルエンザのケア体制を確立しておかねばならないし、後者であれば、精神症状を伴う新型インフルエンザ患者を受け入れてもらえる専門医療機関の確保が必要になる。<o:p></o:p>

2.措置入院・医療観察法による入院<o:p></o:p>

 「自傷他害のおそれ」があり、あるいは「心神喪失又は心神耗弱の状態で重大な他害行為を行い」かつ「発熱/呼吸器症状があり新型インフルエンザ感染が疑われる」ケースの入院はどこへどのような態様でなされるのか。仮に閉鎖病棟に受け入れざるを得なくなるとして、既に入院中の患者やスタッフを空気感染するウイルスから防ぐ手立てはあるのか、陰圧室の設置可否はと課題は多い。<o:p></o:p>

3.開放的処遇との関連<o:p></o:p>

 任意入院・医療保護入院では開放的処遇に努めねばならないのは平時において言うまでもないところである。しかし、パンデミック発生時には、感染拡大を極力回避するための外出の差し控えが呼びかけられる4)。また、やむをえず外出する場合には人込みや密閉空間など感染のリスクの高い場所を避ける必要が出てくるが、これらの理解が困難なケースへの対応法も検討しなければならない。実際、外泊中に感染し潜伏期間中に帰院する場合には、特に症状が現れる一日前ぐらいからウイルスの排出が始まる14)ことを考えると、病棟内に感染が持ち込まれる大きなリスク要因となる。また、状況の理解が困難で繰り返しの説得によってもあくまでも外出を主張する場合、「新型インフルエンザパンデミック」「政府による外出差し控え要請」を理由として行動制限が可能になるのか、場合によっては法令の見直しまで必要となってこよう。<o:p></o:p>

4.訪問指導・自立支援施設<o:p></o:p>

 訪問看護、あるいは自立支援施設など医療スタッフが手薄な状況下で、新型インフルエンザ感染の有無への注意が必要となる。無為自閉傾向や新型インフルエンザの理解困難例など、症状発現に際してその内科的治療にアプローチするタイミングが遅れ予後不良に結びつく可能性も考えられ、予防法の指導、新型インフルエンザ感染の見極めと医療機関への誘導が必要であり、それが可能な様にスタッフ教育を計画しなければならない。<o:p></o:p>

5.スタッフ不足への対応<o:p></o:p>

 現在、鳥インフルエンザ(H5N1)のヒト感染例で見る限り、年齢の中央値は18歳で90%は40歳以下となっている13)。すなわち、特に青年層に対するダメージが大きく、これは医療・看護・介護の担い手の減少に直結する。SARS流行時の北京においても医療従事者のSARS感染が数多く報道されたが、新型インフルエンザではより強いダメージが予想される。スタッフが減少した体制でどう現場を運営してゆくかシュミレーションが求められ、他職種によるカバーなども想定した訓練があらかじめ必要となろう。<o:p></o:p>

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