鳥インフルH5N1に感染したら、6割は死んでしまう・・・とWHO公認の数字からはそういう計算になってしまうのです。が、いやいやそうじゃない、軽症例や無症状例もいっぱいあるよ・・・とTリンパ球測定でエビデンス出したUKオックスフォード大の報告。
- これまで鳥インフルエンザH5N1の死亡率は6割とされてきた。しかし、この数字のほとんどは入院例(重症例)であり、バイアスがかかっていると思われる。実際、抗体価測定により流行地では0.5%に抗体ありという報告もある。
- 今回、(抗体ではなく)Tリンパ球測定により調査。感染によりウイルス特異的Tリンパ球がうまれる。
- 被検者の末梢血単核球(Tリンパ球含む)から分離。そこにH5N1、H3N2、H1N1のペプタイドを入れた。リンパ球がそれそれに特異的なペプタイドを認識するとγインターフェロンを生成し、そのインターフェロンは容易に測定することができる。
- 今回、鳥インフルエンザ流行のあったベトナムの村にてn=747人から採血、うち24人でH5に対してH3やH1より強力に反応するTリンパ球を検出。111人ではH5N1N3ともに反応した。これら合計すると実に2割近くでH5に反応したことになる。
- 対して、ベトナムとUKで鳥インフルウイルスに暴露していないことが確実なコントロール群n=271人ではH5に反応するTリンパ球はまったくなかった。
- 不思議なことにTリンパ球反応と抗体との両方見られたのは4例にすぎなかった。これは採血のタイミングによるものかもしれない。
- これらの結果から、正確に感染者が何名いるか判明には至らないが、少なくとも、症状をあらわさない感染者が多く存在することはいえる。
H5N1感染したからといって重症化するとは限らない、まして6割死亡率というのは・・・とはこれまで囁かれてきたところですが、新たな方法論で証明。
流行地では2割近く、5人にひとりはH5N1に感染していながら大部分はケロリとしているというお話でした。これがよく知られれば鳥インフルエンザの報道もより冷静に受け止められてゆくことでしょう。
ソースはJ.of Infectious disease↓
http://jid.oxfordjournals.org/content/205/1/20
Identification of H5N1-Specific T-Cell Responses in a High-risk Cohort in Vietnam Indicates the Existence of Potential Asymptomatic Infections
J Infect Dis. (2012) 205 (1): 20-27.
これを噛み砕いたブログ↓
http://www.virology.ws/2012/04/12/more-evidence-for-mild-influenza-h5n1-infections/
More evidence for mild influenza H5N1 infections