新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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新型コロナウイルス(NCoV、SARS類似)は多臓器不全まっしぐらになるかもしれない報告(香港大)

2013-03-29 08:06:54 | インフルエンザ:基礎知識/新知見

新型コロナウイルスNCoV(SARS類似)は、どの臓器でも感染しうる、多臓器不全を起こすSARSよりもっと怖いウイルスだぞ! との、先般のJ.infectious disease論文をわかりやすく現地紙報道。

  • 中東から発生はじまったNCoVは、11人の犠牲者を出している。このウイルスは、SARSよりも病原性が高いことが判明。(SARSより)多系統の臓器に親和性。より早く侵襲。
  • 遺伝子変異がすすめば、パンデミックを起こす可能性。SARSより深刻だからと。
    SARSが感染するヒト細胞はわずかしかなかったが、新型コロナウイルスではより多系統に、あちこちの細胞に感染しうる。下気道、肝臓、腎臓、腸管、そしてマクロファージさえも。
  • 現時点での感染性は高くない。上気道感染したSARSに比べ新型コロナウイルスでは下気道が主だから。しかしながら、将来、遺伝子変異が起こればこのパターンも変化する可能性がある。
  • 保健当局は昨日、新型コロナウイルス流行に備えた机上訓練を実施した。The Health Department yesterday held a "desktop drill" to test the government's preparedness for a possible outbreak of novel coronavirus.

香港は当局もメディアもキビキビと反応しています。
このソースには、動画が入っています。知見を出した香港大チームは記者会見をおこない、そこには各メディアがキチンとした関心を示ししっかり参集(動画画面のマイクの列! 同じことを東京でやってこれだけTVカメラがちゃんと集まるかな?)。そして保健当局は机上シュミレーションを早々と実施。

 2003年のSARS、セネガルから北京に転勤した次の週からあの騒動に巻き込まれた管理人にとって、「今回のウイルスはSARSより多系統、多臓器に感染するぞ!」という報告は、トラウマを呼び起こし背中に何条もの汗が流れる話です。香港の反応は”適正温度”です。皆さまの組織でも机上シュミレーションぐらいは始めても良いのではと思います。

ソースはSouth China Morning Post↓
http://www.scmp.com/news/hong-kong/article/1201377/hk-researchers-find-mysterious-new-coronavirus-could-be-deadlier-sars

New coronavirus appears deadlier than Sars, says HKU

その元ソースの論文↓
http://jid.oxfordjournals.org/content/early/2013/03/24/infdis.jit123.abstract

http://jid.oxfordjournals.org/content/early/2013/03/24/infdis.jit123.full.pdf+html

Differential cell line susceptibility to the emerging novel human betacoronavirus 2c EMC/2012: implications on disease pathogenesis and clinical manifestation

J Infect Dis. (2013) doi: 10.1093/infdis/jit123

 


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