もぐ菜のみっしり茶匣(はこ)院

ようこそ腐女子の匣喫茶へ お好みのモノをどうぞ、召し上がれ。 日々を書き連ね、妄想をこよなく愛でます

黒執事 StarRingSilver 白薔薇の揺り籠  エピソード29

2010-03-18 22:03:39 | 腐女子の御伴
※この小説はアニメ黒執事を基に、二次創作として執筆しております。
一個人の解釈なので、原作やアニメ制作会社、出版社とは一切関係ありません。
その点をご理解いただき、お読み下さる様お願いいたします。






■黒執事 StarRingSilver 白薔薇の揺り籠 エピソード29



異府(いふ)での生活は慣れてしまうと、特に不便な事は特にない。

以前からすれれば平穏(へいおん)な日常を送って居るのではと、シエルは思っている。 シエルの表情も生き生きとして穏(おだ)やかである。



シエルの一日は目覚めると、セバスチャンがまず、紅茶を用意し飲み終えると入浴を済ます。ゆったりと寛(くつろ)いでから、食事をして勉強をする。 セバスチャンがきちんと時間を見て、休憩にデザートと紅茶を飲む。

シエルとメイリンは異府(いふ)の者となったので、食事を三食摂取(せっしゅ)する必要はないので食事は気分で済ます。

異府(いふ)に住む様になったからと言っても、怠(なま)ける事なく人間界の移り変わりや世界情勢を調べて熟知している。

睡眠も気分転換として眠るので、以前の様な睡眠時間は必要はない。運動も適度にしてシエルとメイリンは快適に、異府(いふ)の住人として過ごして居る。




シエルはお気に入りのフワフワの毛あしが長いつぶらな瞳(ひとみ)の黒猫(くろねこ)の、ぬいぐるみを抱きながら寝室の窓辺の椅子に座り中庭を眺めて居る。


寝室の扉が五回ノックされる。


「あぁ、構わない。入れ。」

「失礼しますだ。」

メイリンはそう言うと、一礼をして寝室に入室して来た。メイリンが手で持っているのはクリスタルガラスの花瓶(かびん)で蒼い薔薇が活(い)けられていた。

「メイリン。花を活(い)けた花瓶(かびん)を、そこに置いたらこっちに来てくれ。」

「はいですだ。」

花を活(い)け花瓶をいつもの場所に置くと、メイリンは椅子(いす)に座(すわ)ったシエルの正面にやって来た。


「メイリンは、生き別れたフィニとバルドにもし、逢えるとしたら──── 会うか??」

シエルにそう聞かれ、考え込むメイリン。

「逢えるとしたら…‥ 私はフィニとバルドに坊ちゃんとセバスチャンさんと、一緒に居ると話したいですだ。」

「そうか。」

「はいです。時々(ときどき)、フィニとバルドの事を思い出すんですだよ。自分がどうやって異府(いふ)に、辿り着いたのかも分からないですだ。ただ、私はフィニとバルドと一緒(いっしょ)に、坊ちゃんを護(まも)りたかったですだよ。」

「僕と関(かか)わったばかりに、フィニとバルドも大変な目にあったな。」

「もし、坊ちゃんと出会わなければ──── 私達は、生きてはなかっと思いますだ。」

「そうか??」

「坊ちゃんが私達を、救ってくれたんですよ。だから、坊ちゃんを護(まも)りたかった…‥ でも、護(まも)れなかった。」

メイリンはそう言うと、俯(うつむ)き愛(あい)らしい瞳(ひとみ)を憂(うれ)いを湛(たた)え伏せる。


「誰よりも僕を愛してくれて居た、リジーを僕は見捨てたんだ。」

「坊ちゃん──── 」

メイリンはシエルの、言葉に驚き見つめる。

「僕はリジーを愛して居た──── 僕はリジーとの未来は何も考えてはいなかった。ファントムハイヴ家を裏切り辱(はずかし)め僕から何もかも奪った者に…‥ 復讐(ふくしゅう)をする事を誓った日から、僕には未来は存在しないと思っていた。セバスチャンからリジーの事を、聞き安心をした。ファントムハイヴ家が女王の番狗(ばんけん)だった事も知らない、知る必要もないと思ったから、リジーに何も言わなかった。」


メイリンは泪(なみだ)を目尻(めじり)に浮かべながら、シエルの手に触れそっと握りしめる。

「だから、坊ちゃんを守りたかったですだ。皆で愉(たの)しくお屋敷(やしき)で生活して居た、あの日に戻れるなら戻りたいでしたよ。でも、戻れない──── セバスチャンさんから私も、フィニとバルドの事を教えて貰(もら)いましただ。」


「そうだったな。しっかりと仕事をして逞(たくま)しい二人だ。」

「フィニとバルドから離(はな)れ離(ばな)れになり淋しいと、思った事もあったけど私には大事な役目がありますだ。坊ちゃんを護(まも)り続ける事と私には坊ちゃんとセバスチャンさんが居るですだ。」

「メイリン──── 」

「坊ちゃんと同じ様にエリザベス様は、ずっと坊ちゃんを大切に思ってくれてますだよ。」

「ずっと大切にか…… 僕がそう思える様に祈ってくれ。」

「フィニとバルドも、私を忘れませんですだ。私もフィニとバルドを、永遠(えいえん)に忘れないですだ。」


メイリンは泪(なみだ)を潤ませながら、微笑(ほほえ)もうとする。

「無理をするな。」

メイリンはシエルの苦悩(くのう)の感情に同調(どうちょう)し両腕でシエルを、包み込む様に抱きしめるとシエルはその温もりに安堵(あんど)した。




黒執事 StarRingSilver 白薔薇の揺り籠  エピソード30

黒執事 StarRingSilver 白薔薇の揺り籠  エピソード28

2010-03-18 22:00:47 | 腐女子の御伴
※この小説はアニメ黒執事を基に、二次創作として執筆しております。
一個人の解釈なので、原作やアニメ制作会社、出版社とは一切関係ありません。
その点をご理解いただき、お読み下さる様お願いいたします。






■黒執事 StarRingSilver 白薔薇の揺り籠 エピソード28



異府(いふ)へ手紙を届ける、者により一通の手紙がシエルに届けられた。

それは死神派遣協会からの公的な謝罪の文書であり、後日にシエルとセバスチャンに会い謝罪を正式に申し出るとの内容であった。

シエルはその手紙に返信した、死神派遣協会から公的な謝罪文書を送られたのでそれで良いと手紙を書いたが─────

再び手紙が死神派遣協会からシエルに届けられ、 どうしてもシエルに会いたい人物がおり渡したい物があると言う懇願(こんがん)の手紙であり、手紙の署名(しょめい)はウィリアム・T・スピアーズ。

シエルは渋々(しぶしぶ)と承知し、スピアーズに手紙を書き一つだけ条件付けた。


魂を狩る道具は一切持ち込まないと言う条件なら良いと書き手紙を、死神派遣協会のスピアーズ宛に送ると後日に手紙が届きスピアーズはその条件を承諾(しょうだく)したとの事だった。




門の前に馬車が到着し、呼び鈴が鳴らされる。

門は開き馬車は城に続く道を走り出す。





客室の椅子(いす)に座り、シエルは来客者を待って居ておりセバスチャンは、シエルの後ろに立って控えて居る。

フレイアが来客を出迎え、客室に案内するらしくフレイアの姿はない。 客室の扉が五回ノックされ声がする。

「シエル様、お客様がご到着されました。」

「あぁ、通せ。」

客室の扉が開くと、フレイアが先導して居る後ろには見慣れた人物が─────────


「久しぶりだねぇ~ 元気だったかい~伯爵。ぃぃひひ。」

葬儀屋のいつもの服装のアンダーテイカーと、黒のスーツ上下のスピアーズ、そして真っ赤な衣裳に身を包んだグレル。

「セバスちゃん♪」

「静かになさい、グレル。」


「アンダーテイカー、何しに来た?? 用事を済ませたら早急に帰れ。」

「私の用事ではなく伝説の死神である、アンダーテイカー殿が、シエル様にお会いし是非ともお渡ししたい物があるとの事で、今日は異府(いふ)まで来たのです。」

「小生(しょうせい)の、特製の棺桶を伯爵に──── 」

「僕には必要ない。もう良い、帰れ。」

「セバスちゃん、私は貴方(あなた)にお別れを言いに来たのよ。大好きだから、貴方(あなた)を諦めるわ。愛してるわよ!!セバスちゃん。」


「セバスチャン、フレイア、アンダーテイカーとグレルを摘(つま)み出せ。」

「伯爵は安眠がないと思ってねぇ~ 小生(しょうせい)が特製で造ったのさ。棺桶(かんおけ)ベッドだょぉ。伯爵がねぇ、寂しくない様に添い寝が出来るキングサイズなんだぁねぇぇ。小生(しょうせい)も特製棺桶(かんおけ)ベッドで寝て居るけど、そのまま永眠したくなるい眠り心地だぁよぉぉ。 早速、寝てみるかぁい~??」

フレイアは真剣な表情で、アンダーテイカーを見つめ言う。


「特製棺桶(かんおけ)ベッドで眠ると、人間の言う夢が見れますか??私は夢を見たいのです。」

「小生(しょうせい)に、極上の笑いをくれるかぁい?? なら、教えて上げても良いぃょぉ。」

フレイアはアンダーテイカーの身体に両手を触れると、身体を擽(くすぐ)り始める。シエルとスピアーズと会話をして居る間、フレイアはアンダーテイカーをひたすら擽(くすぐ)る。


「良いねぇぇ、良いょぉぉ~ 極上な笑いとは違う快感だぁねぇ。いひひぃぃぃぃ。小生(しょうせい)は、安眠し過ぎて夢を、見た事はなぁいねぇ。あぁ、もっとぉ小生(しょうせい)におくれぇ~」


「セバスちゃん…… 」

セバスチャンにグレルは近寄ろうとするが、セバスチャンはグレルを相手にもせずシエルの後ろに控えスピアーズと会話をして居る。



スピアーズは眼鏡(めがね)の、フレームをすいと上げてシエルに返答をする。

「─────なので、その時はお手紙でシエル様に、ご連絡を致しますが…‥ 」

「僕に誠意ある謝罪と、言うならそれで構わない。」

「分かりました。それでは、その様に致します。グレル…‥みっともない事は止(よ)しなさい。」


アンダーテイカーは客室の床に笑い転がり、フレイアはそれでもアンダーテイカーを擽(くすぐ)って居る。


「坊ちゃん、来客のおもてなしをせずに、申し訳ありません。」

「人間界に戻りしだい私とグレルは、仕事なので結構です。グレル、帰りますよ。」



グレルは床に転がった夢心地なアンダーテイカーを引きずり、名残惜しそうにセバスチャンを見つめ別れがたい。


「フレイア貴方(あなた)は、何をしてたのです。お茶も出さずに、これでは困ります。」

「私は夢を、見たいのですよ。セバスチャン貴方(あなた)は夢を、見た事はありますか??」

セバスチャンとフレイアの、やり取りを聞きグレルは言う。

「ほんとうの夢はねぇ、だぁい好きな人と観(み)るものなのよ!!貴方(あなた)はそんな事も、知らないの?!」

「大好きな人……と観(み)るもの────」

フレイアは考え込む。

そう言うとスピアーズ達は、去って行った。




黒執事 StarRingSilver 白薔薇の揺り籠  エピソード29

黒執事 StarRingSilver 白薔薇の揺り籠  エピソード27

2010-03-18 22:00:06 | 腐女子の御伴
※この小説はアニメ黒執事を基に、二次創作として執筆しております。
一個人の解釈なので、原作やアニメ制作会社、出版社とは一切関係ありません。
その点をご理解いただき、お読み下さる様お願いいたします。






■黒執事 StarRingSilver 白薔薇の揺り籠 エピソード27



入浴を済ませ正装(せいそう)をしたシエルは、セバスチャンと共に書斎(しょさい)へ向かう。

書斎(しょさい)でフレイアと会う事になって居るので、デスクチェアーに座りシエルが待って居ると書斎(しょさい)の扉(とびら)が三回ノックされる。

「入れ。」

「失礼致します。」

フレイアはメイリンを伴い、書斎(しょさい)に入室して来た。フレイアが両手で持っている飾り台に乗せられていた物は、儀式用の美しいレリーフが刻まれた白銀の短刀(たんとう)と、光りを帯(お)び艶(つや)やかな光沢(こうたく)の黒い烏(からす)の羽一枚と真っ白な無地の紙が一枚。

フレイアは一礼をし、デスクチェアーに座って居るシエルの正面に立つ。セバスチャンは、シエルの後ろに付き従(したが)い控えて居る。


「僕とセバスチャンの契約を、執(と)り成すと聞いたが──────」

「はい、私が人間と主従(しゅじゅう)の、契約を結ぶ時と同じ方法でシエル様とセバスチャンの契約を執(と)り行(おこな)いさせて戴(いただ)きます。メイリンはセバスチャンの使い魔で魔女となり、シエル様にお仕(つか)え致(いた)します。宜しいですね。」


「魔女でメイドか、それも良いだろう。」


「では、シエル様、お席から立ちになられて戴(いただ)きこちらへ。」

「あぁ。」

シエルはデスクチェアーから立ち上がり、デスクを廻りフレイアと向き合う。セバスチャンはシエルの後ろに付き従(したが)い控えている。

フレイアはデスクに、契約に必要な物が乗せられた飾り台を置く。

「では、シエル様、その烏(からす)の羽筆(はねぺん)を手にお持ちになれて戴(いただ)きますか、こちらの紙にご自分のお名前に、セバスチャンとメイリンの名をお書き添(そ)えください。」

シエルは烏(からす)の羽筆(はねぺん)を持ち自分の、名とセバスチャンとメイリンの名を無地の真っ白な紙に書き烏(からす)の羽筆(はねぺん)を飾り台に戻す。


名前は青白く光り名前だけが、立体的に浮かび上がる。

「セバスチャン、その名前を統(す)べて剥がし飲み込みなさい。」

シエルの横にセバスチャンは近寄りデスクに置かれた飾り台に、乗せられた紙から大事に立体に浮かび上がった名を一つづつ丁寧(ていねい)に剥がし手で持ち統(す)べての名を飲み込んだ。


飾り台から音もなく白銀の短刀(たんとう)が、光を放ち宙へ舞い上がりシエルの元へ─────


「セバスチャン、メイリン、シエル様の御前(みまえ)に膝まずきなさい。シエル様は、左手をお出しくだる様お願い致(いた)します。」

「随分(ずいぶん)と大掛(おおが)かりな、契約の執(と)り成しだな。」

「えぇ、私の人間との主従(しゅじゅう)の契約は、この様に執(と)り行っておりますよ。セバスチャン、メイリン、シエル ファントムハイヴの御名(みな)の基(もと)に随(したが)い仕える事を命じる」。

シエルが差し出した左手の、薬指に白銀の短刀(たんとう)の尖端(せんたん)が掠めると、溢れ出た鮮血は書斎(しょさい)の床に滴り契約の陣を描き、シエルと正面に膝まずくセバスチャンとメイリンを契約の陣が七色にまわばゆく光り輝き三人を取り囲む。

白銀の短刀(たんとう)は自らデスクに、置かれた飾り台の元の位置に戻った。


フレイアが言われなくとも、シエルには伝わり契約の言葉をセバスチャンとメイリンに下す。



「我が御名(みな)の基(もと)に遵(したが)いし者達に銘(めい)じる、我を守護(しゅご)し我に遵(したが)え…‥ さすれば我を与(あた)えよう。」


シエルの差し出した左手の薬指に、セバスチャンは唇づけた。


その契約の言葉は主人となる者だけが知る、神聖な契約の言葉である。

契約を結び終えると契約の陣は七色の光を放ちシエル、セバスチャン、メイリンを包み込み消え失せる。



セバスチャンとメイリンは立ち上がる。


「契約は執(と)り成しが、終わりました。シエル様はセバスチャンとメイリンの破れる事のない、主従(しゅじゅう)の契約を結びました。最後に大切な事を、シエル様にお伝え申し上げます。シエル様は永久(とわ)に、生き続けお歳を召(め)される事はありません。メイリンも同様です。以前生活をしてらした様に、空腹を満たす食事をする必要はございません。嗜好(しこう)として、お食事をお楽しみください。セバスチャンは、人間の魂に餓える事はないのでご安心してください。」

シエルは了解(りょうかい)をする。

「了解はした。フレイア、お前は一体何者だ??」

フレイアはシエルを見つめ、微笑(びしょう)をし返答をする。


「私はあくまで、セバスチャンの友人ですよ。」

「悪魔か??」

シエルがそう楽しげに笑い、セバスチャンを見るとやや不機嫌(ふきげん)な表情でフレイアを睨む。


「フレイア貴方と言う、気まぐれな神は──── 」

シエルとメイリンは、二人のやりを聞き苦笑した。




黒執事 StarRingSilver 白薔薇の揺り籠  エピソート28゛

黒執事 StarRingSilver 白薔薇の揺り籠  エピソード26

2010-03-18 21:59:35 | 腐女子の御伴
※この小説はアニメ黒執事を基に、二次創作として執筆しております。
一個人の解釈なので、原作やアニメ制作会社、出版社とは一切関係ありません。
その点をご理解いただき、お読み下さる様お願いいたします。






■黒執事 StarRingSilver 白薔薇の揺り籠 エピソード26



フレイアは頭(こうべ)を上げると、挨拶をシエルに始めた。

「シエル様との謁見(えっけん)を、光栄に存じます。」

目の前に居るフレイアを、見つめシエルは言う。

「謁見(えっけん)とは、仰々(ぎょうぎょ)しいと言おうか。僕がシエル、ファントムハイヴだ。僕の執事である、セバスチャンを余り手間(てま)取らせるな。」

フレイアはシエルの言葉を聴き、ニコリと笑う。

「お言葉を、慎(つつし)んでお受け致します。」

セバスチャンとフレイアの後方に遠慮(えんりょ)気味に居るメイリンが気になり、シエルはベッドから足を降ろす。セバスチャンはシエルにルームシューズを履かせた。

床に足を着けてシエルは腰掛けて居たベッドから、ゆっくりと立ち上がり後方に居るメイリンの元に歩く。

「坊ちゃん。」

メイリンは泣き出した。シエルが永久(とわ)の眠りから目覚める可能性はないと、セバスチャンから聞かされた時は余(あま)りにもショックでその場で倒れ込み寝込んでしまった。

シエルが永久(とわ)の眠りから目覚め、再会を果たせメイリンはそれだけで嬉しい。


「メイリン、良く来てくれた。」

シエルは右手を差し出すと、お互いの手を堅く握り合う。

「坊ちゃんから、戴いた眼鏡(めがね)を私は、何処(どこ)かに無くしてしまいましただ。」

「眼鏡(めがね)か…… 眼鏡(めがね)はもう必要ないだろ??そんな事で、僕はメイリンを咎(とが)めたりはしない。眼鏡(めがね)をしてない方が良いと思うが、セバスチャン。」

手を離すし後ろを振り向くとセバスチャンとフレイアは立ち上がっており、メイリンを見つめながらシエルに返答をした。

「坊ちゃんと、同様の意見でございます。」

「眼鏡(めがね)?? メイリンに、必要な物ですか。」


フレイアは眼鏡(めがね)と聞き、興味津々(きょうみしんしん)であるがまた厄介(やっかい)な事を、フレイアが仕出(しで)かそうなので敢(あ)えて返答はしないシエルとセバスチャン。

「それと───── セバスチャン、此処(ここ)は人間界ではないな?? 」

シエルに返答をするセバスチャン。

「はい、異府(いふ)と私達はそう喚んでおります。人間界とは異なる世界で、私達の様(よう)な者が住まう世界です。人間の言う冥界(めいかい)とは、異なりますね。」

「と言う事は、フレイアは人間ではないのか。」
フレイアをしげしげとシエルは見て言うと、フレイアは平然(へいぜん)と述(の)べた。

「人の形はしておりますが、私は人間でも悪魔ではございませんよ。」

シエルは窓辺に近寄り、見渡(みわた)しの眺(なが)めの良い窓から景色(けしき)を見る。

「リジー……‥ もし──── 逢えるのなら、いつかは会おう。」

許婚(いいなずけ)である、エリザベスの名をシエルはせつなげに呟(つぶや)くと瞳(ひとみ)を祈る様に伏せた。




「坊ちゃん。」

セバスチャンに名を呼ばれ、伏(ふ)せた瞳(ひとみ)を開けて後ろを振り返る。

「あぁ、後悔はしてない。セバスチャンお前と、出会った日に僕が統(す)べて決めた事だ。」

「イエスマイロード。」

「以心伝心(いしんでんしん)ですね。」

フレイアは、シエルとセバスチャンを交互(こうご)に見つめ笑う。


窓辺のシエルにセバスチャンが近寄って来て、シエルを軽く抱きかかえる。

「では、坊ちゃん。お目覚めに、なられたのですからご入浴を致しましょう。」

「入浴は良い。僕には特別な用事はないだろう。」

「いいえ、幾(いく)ら、人間界ではないと言われても、就寝の衣服で怠(なま)けて過ごされては困ります。」

「頑固だな。入浴室に僕を連れて行け。」

「御意。では、入浴室にご案内を致します。」

抱きかかえたシエルを見つめ、セバスチャンはニコリと笑うと、いつもの表情に戻りメイリンとフレイアの方を向き指示を出す。

「メイリンはベッドのリネン交換と部屋の掃除を、フレイアはそのワゴンを厨房(ちゅぼう)へ片付けなさい。」

「はいですだ。」

「御意。」

「いちいち、フレイア、私を真似(まね)なくっても良いです。」


そう言うと颯爽(さっそう)と、セバスチャンはシエルを抱きかかえシエルの寝室から出て行った。


「あぁも、変貌(へんぼう)をするとは、思いもしませんでしたよ。シエル様もまた大変な悪魔に、愛されてしまったと言う事ですねぇ。では、セバスチャンの指示通りに、片付けますかね。」

そう言うとワゴンを押しフレイアは、意気揚々(いきようよう)と悪魔で友人が元気になった事を喜んで居る。


「はいですだ。」

メイリンはフレイアに返事をし、ベッドのリネン交換を始める。

フレイアはワゴンを押しながら、シエルの寝室を出て行った。




黒執事 StarRingSilver 白薔薇の揺り籠  エピソード27

黒執事 StarRingSilver 白薔薇の揺り籠  エピソード25

2010-03-18 21:59:04 | 腐女子の御伴
※この小説はアニメ黒執事を基に、二次創作として執筆しております。
一個人の解釈なので、原作やアニメ制作会社、出版社とは一切関係ありません。
その点をご理解いただき、お読み下さる様お願いいたします。








■黒執事 StarRingSilver 白薔薇の揺り籠 エピソード25



「坊ちゃん…?? 」

シエルは声を出さずに啜(すす)り泣き、しゃくり上げる。シエルが泣いて居る─────

どんなに苛酷(かこく)な現実を突き付けられても、甘(あま)んじる事なく受け止め薙(な)ぎ払ってきたと言うのに────────


永久(とわ)の眠りから目覚めの喜びなのか、目覚めた故(ゆえ)の哀しみ……?? それはシエルの胸の中で渦巻き、シエル自分自身の感情を問(と)い質(ただ)す事は出来ない。

シエルはセバスチャンの両肩に、添えていた手を離し両手で顔を覆(おお)う。

「可笑(おか)しいのだろ?? この僕が泣くのが。嘲笑(あざわら)いたければ、笑えば良い。僕は、泣いてなんかない。」

セバスチャンは両腕でシエルを深く抱きしめ、胸の奥に閉じ込めるとシエルの背中を安心させる様に触れ撫でる。

主従(しゅじゅう)の契約(けいやく)を交(か)わした日から、シエルの泪(なみだ)は見た事はない。

シエルの身体からセバスチャンが、手を離すと小さな身体を震わせた。顔を覆っていたシエルの両手をセバスチャンはそっと手を退(の)けさせ唇(くち)びるをシエルの目元に寄せ、窓辺から差し込む月明かりが光る一粒の宝石を輝かせると頬(ほほ)を伝い落ちる間もなく消えた。

「セバスチャン───── 」

「私は、貴方の統(す)べてが、ただ…‥ 狂(くる)おしく愛(いと)しいのです。」

もう一粒、目元で輝くとセバスチャンの唇(くち)びるに消える。

「誰が悪魔の言う事を、信じられるものか……‥」

目元をほんのりと赤く染め泣き腫(は)らしたその瞳(ひとみ)は、遊戯(いたずら)を見られた幼子の表情である。

セバスチャンは咎(とが)めたりせずに、穏和(おんわ)な笑みを浮かべシエルに優しく言い含(ふく)め返答をする。

「坊ちゃん、私が一度でも貴方(あなた)に、嘘偽りを申した事は在(あ)りましたか??」

「ない。ならばもう少し、このままで居させろ。」

「御意。」

シエルはセバスチャンの胸元に、顔を自分から押し付けると泣き声が聞こえる。

シエルの目元から自分の唇(くち)びるを伝(つた)った泪(なみだ)を、堪能(たんのう)し味わい知るこんなにも甘くも、ほろ苦いのだろう?? 初めて観(み)たシエルの、宝石の様な泪(なみだ)に美しさを感じ両腕で闇を創りシエルを腕の中に閉じ込めた。



月が雲を纏(まと)い、月明かりを遮(さえぎ)り二人の為に月は身を隠した。






お互いに感じる体温が心地(ここち)良く、身体(からだ)を寄せ合う。シエルは何時(いつ)しか泣き止み、セバスチャンの胸元から顔を離すがセバスチャンはシエルを両腕で抱きしめたまま。

「僕にそんなに、仕えたいのなら悪魔で執事として仕えろ。」

「イエスマイロード。」

シエルを見つめセバスチャンは微笑み返し両腕を離す、寝室の扉(とびら)が五回ノックされるとシエルはセバスチャンの肩越しに見える寝室の扉(とびら)に視線を向ける。

「僕達の他に、誰か居るのか────?? 」

「はい、坊ちゃんを此処(ここ)まで、追い掛けて来たメイリンです。それと、私の顔見知りが会いに来まして、坊ちゃんの許可を戴(いただ)いてないので、早急に帰らそうとしましたが好き勝手にまくし立てまして、居候(いそうろう)を決め込んだ輩(やから)が一匹です。」

「居候(いそうろう)?? ソーマとアグニでは在(あ)るまいし。 セバスチャンお前が、手を焼いたとはな。」

くくっと苦笑いをするシエルの問い掛けに、セバスチャンは溜め息をつく。

「執事を何(なん)たるかも、知らないのにファントムハイヴ家の執事に就(つ)きたがり、大変困り果てました。」

「ほぉ、面白い僕が見てみたい。構わない、部屋に入れ。」



聞き慣れた懐かしい、メイリンの声が扉(とびら)向こう側から聞こえた。



「坊ちゃん、失礼致しますだ。」



寝室の扉(とびら)を開け、一礼をしてメイリンに付き添うもう一つの細身の燕尾服の影─────



細身の男で黒に青みを帯びた髪は長く腰まであり、背の高さも年齢もセバスチャンとそう変わらない精悍(せいかん)な顔つきで目を見張る美貌(びぼう)の男をシエルは注意深く見た。

セバスチャンの傍に近寄り隣にフレイアは、腰を降(お)ろし膝まずきシエルを見つめ挨拶をする。

「初めまして、シエル様。私はセバスチャンに臨時(りんじ)で執事として雇用(こよう)されたフレイアと申します。」

その声は低く良く通る声であるが、威圧感はない美声である。深く頭(こうべ)を下げシエルに挨拶を済ませた。


メイリンは見慣れたメイド服を着ていたが、眼鏡をしておらず泪(なみだ)目でシエルを見つめ微笑(ほほえん)んだ。




黒執事 StarRingSilver 白薔薇の揺り籠  エピソード26