スノープリンス 禁じられた恋のメロディ (2009)

2009-12-19 09:56:01 | Weblog
スノープリンス 禁じられた恋のメロディ (2009)

U.S. Release Date:

■監督:松岡錠司
■キャスト:森本慎太郎/桑島真里乃/チビ/香川照之/檀れい/中村嘉葎雄/岸恵子/浅野忠信
■音楽:山梨鐐平/「月の光(Clair de Lune)」(ドビュッシー)
■字幕:
■お勧め度:★★★★(★)

 「「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」の松岡錠司監督、「おくりびと」の小山薫堂脚本で贈る切ないピュア・ストーリー。昭和初期の北国を舞台に、淡い恋の芽生えた身分違いの少年少女が辿る美しくも悲しい運命を綴る。主演はジャニーズJr.の森本慎太郎と「ちりとてちん」の桑島真里乃。昭和11年、雪深い北国の寒村。10歳の草太は両親を早くに亡くし、祖父との2人暮らし。貧しいために学校にも通えない草太だったが、大好きな絵に夢を託し、健気で素直な少年に育っていた。そんな草太と仲良しなのが町一番のお金持ちの家に生まれた幼なじみの少女、早代。彼女の父は2人が一緒に遊ぶことを快く思わず、草太に会うことを禁じられる早代だったが…。」(allcinema.net/より。)

とりあえず、解説の「両親を早くに亡くし」は間違い。

これってラブストーリーでもなければ悲劇でもないんじゃないだろうか。たしかに草太は悲しい運命を辿るにしても、幼いながらも精一杯生き、自分なりの人生をまっとうした姿を描いたように思う。たしかにこの子は父親に捨てられたとも言えるが、それはサーカスの団員である父親が息子を巻き込みたくなかったという事があるし、父親には草太の実際の境遇は分からない。それに捨てた代りに草太には、草太なりの人生の生き方を教えてもいる。

メインのテーマは雪かもしれない。エンドタイトル部分以外は雪景色で、雪の冷たさ、過酷さ、しかし時として暖かさを描いて、そうしたものに勝ったり負けたりしながら自分の人生を歩んだ草太を描いたような。最後にしても悲劇とか悲しさよりは、草太なりの素晴らしい人生を歩んだ事が印象に残る。人間の友達には恵まれなかったものの、犬のチビと、早代との出会いと付き合いがあったし、祖父の教えを忠実に守って生きた草太は、純粋無垢のピュアな少年として描かれる。草太と早代の関係というのは「僕の初恋をキミに捧ぐ」の幼い頃の関係と同じで、幼馴染み。草太の早代に対する気持ちというのは恋や愛以前のものだろう。むしろ早代が草太を好きだった事は間違いない。こういう関係に描いたのも、この年頃の少年が恋心を抱くかどうかという問題は別にして、恋とか愛を、ある意味で取り去って「雪」というものを描きたかったのじゃないだろうか。そうでなければ全編、雪景色にする必要は無いし不自然だっただろう。そして一番、重点を置いたのは雪の暖かさだろう。この点はしかし雪自体ではなく、人物に投影して描いているように感じられる。かなり難しいテーマを描いたように感じられるが、観ててものすごくいい感じがするのは、ピュアさと暖かさを描いたからだろう。草太は絵が好きで、絵の具になる土を探しに行き、父親に教えられた通り、自分が一番、描きたかったものを描く。それはピアノを弾く早代と、自分が出会った人々全部。草太にとって早代の父親は悪者っぽい人間ながら、この絵には早代の父親も描かれている。これはどんな事があっても人を憎んだり恨んだりするなという祖父の教えがあったにしても、教えを守るというより純粋無垢の草太にしてみれば、そもそも人を憎むとかは出来なかったのじゃないだろうか。というように考えると、作品が描きたかったのは、いわゆる生善説に元づく人の生き方。これがあるせいで、実際は悲劇的な作品ながら、むしろ逆の印象を受けるし、それが狙いだったのじゃないか。というのはあくまでも推測にすぎないが、テレビ局(朝日)作品でこれだけ深いテーマを効果的に描けたのは、これだけでも感動もの。同じように雪を題材にしてノーベル文学賞を取った下らない作品があって、原作の人物とは似ても似つかない松坂慶子を起用した駄作があったが、テーマの深さと作品の出来からすれば「おくりびと」とも月とスッポンだろう。しかしこれの主題歌はひどい。ドビュッシーの「月の光」というピアノ曲をメインテーマにして、最後にフルバージョンを流すが、ここでやめとけばいいものを、ムードぶちこわし。ジャニーズ事務所の横やりか。テレビ局作品としてはしょうがないか。暖かいといっても見る限り寒いことは間違いないので、観るなら映画館の暖房は期待しない方がいいだろう。


ヒアリング度:
感動度:★★★★★
二度以上見たい度:★★★★
劇場で見たい度:★★★★
ビデオ/DVDで欲しい度:★★
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★★
ムカつく度:
考えさせられる度:★★★★
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)