インビクタス/負けざる者たち (2009)

2010-03-12 07:51:46 | Weblog
インビクタス/負けざる者たち (2009)
Invictus

U.S. Release Date: 2009

■監督:クリント・イーストウッド
■原作:ジョン・カーリン
■キャスト:モーガン・フリーマン/マット・デイモン
■音楽:カイル・イーストウッド
■字幕:松浦美奈
■お勧め度:★★

 「「チェンジリング」「グラン・トリノ」の巨匠クリント・イーストウッド監督が、アパルトヘイト(人種隔離政策)後の南アフリカで開催されたラグビーワールドカップを巡る感動の実話を映画化したヒューマン・ドラマ。アパルトヘイト撤廃後も人種間対立が残る中、国民が一つにまとまる大きな転機となった自国開催のラグビーW杯での奇跡の初優勝までの道のりを、ネルソン・マンデラ大統領と代表チーム・キャプテンを務めたフランソワ・ピナール選手との間に芽生える絆を軸に描き出す。主演はモーガン・フリーマンとマット・デイモン。
 1990年、アパルトヘイトに反対し27年間も投獄されていたネルソン・マンデラがついに釈放される。そして1994年、初めて全国民が参加した総選挙が実施され、ネルソン・マンデラは南アフリカ初の黒人大統領に就任する。しかしアパルトヘイト撤廃後も、白人と黒人の人種対立と経済格差は依然として解消されず、国家はいまだ分断状態にあった。マンデラ大統領にとって国民の統合こそが悲願であり、自ら寛容の精神で範を示し、国民に和解と融和を呼びかける。そして、翌95年に南アフリカで初開催されるラグビーW杯を国民融和の絶好のチャンスと捉える。彼は、長らく国際試合から閉め出され弱小化していた代表チームのキャプテン、フランソワを官邸に招き、国を一つにまとめるためにW杯での優勝が欠かせないと訴えかける。戸惑いつつも、大統領の不屈の信念に心打たれたフランソワは、やがて誰もが不可能と考えた優勝目指してチームを引っ張っていくのだが…。」(allcinema.net/より。)

巨匠が放つ久々の駄作。という目で見れば面白いが。実話の映画化といえばしょうがないのだろうが、だったら作るなと言いたい。テーマが多すぎる。マンデラ大統領を描くのが主だろうが、それにラグビーチーム、主将の家族、特に反マンデラ派の父親、マンデラ大統領のシークレットサービス、南ア国民と国造り。これらが「平等」に描かれている。バイキング式に観るなら面白いだろうが、中途半端。それにアパルトヘイトの実態は描かれないが、10年前までの事を覚えているだろうか。アパルトヘイトがどういうものだったかを調べてから観るなら、それなりの説得力はあっただろうが、そうでない場合はマンデラ大統領の信念にしても、分からないだろう。おそらくはアパルトヘイト時代の南アフリカは英国系の白人が支配していて、それでラグビーになったのだろうが、絶対多数の黒人たちが、そのラグビーやW杯に熱狂する理由が分からない。マンデラ大統領の宣伝活動の産物としてしか描かれない。それに実際の黒人の子供たちはサッカー好き。アメフトは違うにしても、サッカー好きがラグビーに興味持つだろうか。両方とも興味無いので分からないが。でもまあ、ラグビーを国民統合の手段と象徴に選んだのは効果的だが。これから逆算的に国民をラグビー好きにしたような。真実を描くという点では「硫黄島」シリーズでかなりいい線いったし、隠された真実を暴くような所もあったが、本作では単に事実を描いただけ。一番、分からないのは弱小ラグビーチームがどうやってW杯で優勝するまでに至ったか。特に選手を入れ替えた事もないし、極端な特訓もしていない。決勝戦のオールブラックス(ニュージーランド)戦では巨漢のフォワード(と言うのか知らないが)を止めることで成功するが、弱小チームにできた事がなんで実力では上だったイングランドにできなかったのだろうか。ラグビーは計算よりも根性にしても、国民の支持だけで強くなれるのだろうか。「東洋の魔女」は、半端じゃないシゴキで東京五輪で優勝した。一番の見所はシークレットサービスだろう。たいした、というか全く事件らしきものは起きないが、むしろそれだからこそ見所。良く言えば巨匠のバランス感覚の良さ。これはクリント・イーストウッド監督の良さでもある。しかしこれだけだとちょっと。

いわゆる後進国が五輪やらで成長するのはパターンにしても、1990年に釈放で95年にW杯。この5年間に南アで起きた出来事やらを描いた方が面白かったのじゃないだろうか。南アの場合はアパルトヘイトという隔離政策を採っていて、世界中から非難されてマンデラ大統領に託した感じだが、託したのは多数派の黒人だけじゃなくて支配層の白人も同じだったはず。本音的にはアパルトヘイト継続支持だっただろう白人たちが、どういういきさつや心理変化でマンデラ大統領に託すことになったのか、この点がむしろ知りたかった。これが描かれないためにマンデラ大統領の偉大さが分からない。クリント・イーストウッド監督は月並みパターンや流行は嫌う性格だが、むしろマンデラ大統領をヒーロー化して描いた方が面白かったような。監督のミスキャスト。

ヒアリング度:★
感動度:★
二度以上見たい度:★
劇場で見たい度:★★
ビデオ/DVDで欲しい度:
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★★
ムカつく度:
考えさせられる度:
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)