火天の城 (2009)

2009-10-03 05:42:36 | Weblog
火天の城 (2009)

U.S. Release Date:

■監督:田中光敏
■原作:山本兼一
■キャスト:西田敏行/大竹しのぶ/寺島進/福田沙紀/椎名桔平/水野美紀/夏八木勲/熊谷真実/緒形直人
■音楽:岩代太郎
■字幕:
■お勧め度:★★★★(★)

 「山本兼一の同名小説を西田敏行主演で映画化した時代劇エンタテインメント。織田信長に登用され、安土城築城を任された名もなき宮大工が職人の誇りを懸けて挑む一大プロジェクトの全貌を、家族や門下の仲間たちとの人間模様を絡めてドラマティックに描き出す。監督は「化粧師 KEWAISHI」「精霊流し」の田中光敏。
 天正四年(1576年)、熱田の宮番匠、岡部又右衛門は、ある日突然織田信長から安土城の築城を命じられる。しかしその後、城造りを指揮する総棟梁になるには、名だたる番匠たちとの指図(図面)争いに勝たなければならない事態に。信長は巨大な吹き抜けという前代未聞の注文を出していたが、指図争いの席で、又右衛門だけがただ一人、確固とした信念のもと、その要望をはねつける。当然のごとく激昂する信長を前にしてもその信念は揺るがず、ついには信長を納得させ総棟梁の座を勝ち取る又右衛門だったが…。」(allcinema.net/より。)

内容的には安土城築城をドキュメンタリーっぽく描いた作品ながら、さすが映画会社(東映)を思わせる重厚なタッチと、特に先週の「カムイ外伝」(松竹)と比べると役者の層の厚さが感じられる。誰がどの役に適役かという事より、主演の西田敏行にしてもその他にしても候補は数名は居たのじゃないかという、これはあくまでも印象で、役者の層の厚さというのがそうした印象になったように思う。実際の出演者の中では悪役が持ち味の寺島進が西田敏行頭領の一番弟子みたいな役柄で、変な感じだし似合って無いが、他のスタッフが巧キャスト過ぎるきらいがあるので、それを相殺する、バランスを取るための起用かもしれない。そのキャストで一番、目立つのが大竹しのぶで、すごくいい歳の取り方をして西田敏行の妻役、あるいは娘(福田沙紀)の母親役として、助演というより共演に近い感じで出ていて見所。若い頃は変な女か、そのような役ばかりだったような気がするが、ちょっと探しても居ないようないい女優になった。役者の使い方が巧い。寺島進はミスキャストっぽいにしてもそれなりの役をこなしているし、夏八木勲と緒形直人にも同じことが言える。これも助演というより共演っぽく、その他にも、ほとんどチョイ役ながら熊谷真実が、はるか昔の「マー姉ちゃん」当時そのままのような感じで出ていて懐かしいし、圧巻なのは水野美紀の起用と役所。大工集団の中にいるただの女のような描き方をしておいて、実は、これはバラした方がいいだろう、刺客のくノ一(くのいち)だった。城作りを淡々と描いた作品の中で、彼女が出るアクションシーンがひどく印象に残る。これも巧さだろう。テレビ局の作品が良くなったと言っても、この役者の層の厚さという印象と、役者の使い方の巧さに関しては、いまだに松坂慶子をカレンダーの1月にしている松竹と比べても、東映は一枚、上だし、ここらへんがテレビ局では真似というか追随できない部分だろう。何を言っているかというと、今やテレビ局対映画会社というのが映画界の構図で、「洋画」という言葉すら消え去ろうとしている。それに時代劇に関してはやはり東映の実力はあるだろう。役者の層の厚さに加えて京都撮影所を持っているし、衣装に関しても惚れ惚れするほど見る価値がある。着こなしにしても、これは本人なのか衣装係りなのか分からないが、番長格のお志麻さんに劣らない。作品のテーマとしては、たとえ神業的な技量を持った頭領でも、部下その他の助けがなければ何も出来ないし、そうした仲間を作るのが技量の一つで、そうした型での協力関係なしには国造りは出来ないという事だろうが、これは作品構成上の建て前だろう。この頃でも今でも「国を造る」というのは国の言いなりになるという事で、本作品では信長の野望のための城作りに加担させられた一般民衆という事になる。その事でどんな悲劇が起きてもなんら同情する余地は無いだろう。という意味での「建て前」で、これはこれで作品構成上、入れざるを得なかっただろう。むしろこの事が良かったかもしれない。役者が生きる、目立つという点で。その事を知っているかのような配役。これもさすが映画会社と言えるだろう。もう言いたく無いがネタ切れヤキ回りでアクションを見せるだけの洋画に比べると、内容的にも題材の選び方にしても、アクションの使い方にしても、今はむしろ洋画を観る方が、恐くて勇気が要るような事になってしまった。もう一つはテレビ局の作品が良くなった理由の一つに細かい部分に気を使ってそれが作品自体とインテグレートするようになったという事だが、これは両刃の刃で、作品の出来を良くする反面、作品としてのスケール感を損ない、役者や演技から目を逸らす結果になる時がある。東映が観ていたのは、まさにそうしたテレビ局作品だろう。結果的に役者や演技が生きるという事になる。これはテレビ局にも分かるのじゃないか。そうすれば更に相乗効果で素晴らしい作品が出来ることは期待できる。はっきり言ってそれほど感動する部分は無いはずなのに、なぜかやたら感動する。最初のテロップで安土城はこれだけの苦労をして建てたにも係わらずたった3年で焼失した事が書いてあるが、これも諸行無常か。だから人物や、その描き方が生きてくるとも言える。


ヒアリング度:
感動度:★★★★★
二度以上見たい度:★★★★
劇場で見たい度:★★★★★
ビデオ/DVDで欲しい度:★★★★
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★
ムカつく度:
考えさせられる度:★★★
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)