エマニュエル・トッドさんの著作を読んだ。
2021年11月20日発行であるが、中の論考は以前に発表されているものである。
目次を上げると、
Ⅰ 老人支配と日本の危機
Ⅱ アングロサクソンのダイナミクス
Ⅲ 「ドイツ帝国」と化したEU
Ⅳ 「家族」という日本の病
と分けられ、その中にまた2~3の論考があります。
トッドさんの考察は、専門の「家族構造」から読み解くことが多いです。
「絶対核家族」=親の遺言で相続者を指名、子供は早くから親元を離れる、結婚すると独立・・・英米
「平等主義核家族」=平等に分割相続、結婚すると独立・・・フランス、スペイン、イタリア
「直系家族」=長子相続、親子関係は権威主義的、兄弟間は不平等・・・日本、ドイツ、韓国
「共同体家族」=男の子供全員が、結婚後も親の家に住み続ける・・・ユーラシア大陸中央部、中国、
ロシア、北インド、トルコ、イラン
このうち最も新しいのが「共同体家族」、最も原始的なのが「核家族」だそうです。
「家族」を重視することで、日本の優れた社会の基礎が築かれた。
日本の「少子化」は「直系家族の病」、日本の強みは、「直系家族」が重視する「世代間継承」
「技術・資本の蓄積」「教育水準の高さ」「勤勉さ」「社会的規律」にある。
ただその「完璧さ」が日本の長所であるとともに、短所に反転することがある。
だから、今後移民を受け入れるなど"不完全さ"や”無秩序”をも受け入れることも必要ではないか、
と述べています。
論考の中には、「少子化」のほかに「核」の問題、「移民」の問題、「民主主義」、「日本の天皇・女性」
などもあり、これからの日本を考える上での参考になる意見がありました。
家族構造でみると、ドイツが日本と同様だというのは、ちょっと意外な気がしました。
また、中国、ロシア、トルコ、イランが同じ最も新しい家族構造の「共同体家族」に分類されるというのも、意外な気がしました。
とても興味深い本みたいですね。
どの項目も日本が抱える”今そこにある危機”ですよね。