しばらくぶりに司馬さんの本を読んだ。
司馬さんは今年が生誕100年であるという。1923年の生まれだ。
そして亡くなったのが、1996年2月12日で、同日は「菜の花忌」と呼ばれている。72歳だった。
この小説は、1965年に新聞連載に載り、同年単行本として発行された。
今までこの本は知らなかったが、たまたま古本屋で見つけ購入した。
内容は、関ケ原の戦いの前夜、東北の地での伊達氏と上杉氏の国境での争いを描いたもので、
史実ではないと思うが、戦国乱世の男の生きざまを描いた作品である。
解説によると、石原裕次郎さんの依頼で原作として書かれたようで、その後石原プロの手で映画化もされたようである。
最初に読み始めたときは、時代は分かったが史実ではないのでわかりにくく、あまり読むのにのめりこめなかったが、
中盤以降、城を取りに行くあたりから、主人公や取り巻く人たちの話など、時代を生きている人たちの心情なども
わかるようになり、面白くなっていった。
主人公は、車 藤佐(くるま とうざ) 佐竹家出身の侍、会津にあった上杉方の味方をして、
上杉の臣、中条佐内とともに、城取りに行く。
迎えるは、伊達側、西国浪人、赤座刑部(あかざ ぎょうぶ)、この男が差し図して作っている城を奪おうとする。
その間に、赤座を監督する伊達側の目付、遠藤三四郎という武士もいる。遠藤は西国浪人の赤座を疑っている。
赤座は城も作れ、軍略家でもある、技能に秀でた浪人である。
地元武士団の血縁で結ばれた主従関係を重んずる遠藤には、伊達家の家風には合わないと思っている。
そこに城を造られる土地の村の農民や巫女などがからみ、状況が点々と変わる中で、城取りが行われてゆくという話であった。
クライマックスに近づくにつれ、戦国乱世に生きた男の生きざまが見事に現れてきて、今とは違う「男の美意識」が見えるようであった。