桑山十兵衛の第5作。
博突打ち三之助の祟り
足尾銅山異聞・足の字四文銭
末恐ろしい悪党
憎まれ口が命取り
津宮河岸で迎えた初雪
見えぬ手がかり
勢至堂宿三人の生き残り
花輪茂十郎の特技
の8編である。
桑山十兵衛は妻に先立たられ独り身であったが、前回の作品の中で、房州の白旗村の「登勢」と結婚している。
関東取締役出役は、通常十人いて、一人ないし二人が江戸に常駐、裏方の仕事をしていた。
結婚を機会に長い休暇をもらおうとしていたところ、老齢、古株の加賀美徳蔵が、廻村に回ってもいいということで、
加賀美の代役で江戸常駐することになった。
ということで江戸常駐をしていたが、そこにまた事件が起こり十兵衛は公事方勘定奉行の手伝いをすることになった。
その事件の犯人を追いながら、西へ東へ、そのうちに佐原で十兵衛は命を狙われることになる。
誰に狙われたのか?
それを考えていると、前回に会津藩への探索の帰りに狙われた勢至堂峠のことが思い出される。
その時、襲ってきた賊のうち3人に逃げられていた。
その3人に、十兵衛襲撃を頼んだものは?
そこに花輪茂十郎の特技が役立った。
なかなかに、理解が難しい。手が込んでいるのだ。
江戸時代に起きた大名の改廃や南北町奉行所の事件が元ネタになっているとみたが、よく調べている。
そして、現代とまた変わらない男たち、女たちの欲望の渦である。
裏で暗躍している連中も同じである。
十兵衛の活躍にスッとするところもある時代小説である。