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現地視察に訪れ、一般作業員の前で怒鳴り散らす姿…「指導者の資質を考えざるを得なかった」

2021年03月11日 21時05分43秒 | 全般
以下は今日の産経新聞に、10年前 菅元首相の危機管理、と題して掲載された阿比留瑠比の論文である。
彼は現役の記者として当代最高の一人である。
東日本大震災の発生とそれに伴う東京電力福島第1原発事故から11日で10年になることを契機に、当時の首相である菅直人・立憲民主党最高顧問が、出番だとばかりに発信を強めている。
その軽佻なはしゃぎぶりは、何の責任も反省も感じていないことをあらわにしている。
自画自賛に値するか 
菅氏は2月22日の衆院予算委員会で、次のように菅義偉首相をただした。  
「新型コロナウイルス問題と原発事故問題は、危機管理とか緊急事態という面で見ると、共通の面もある」 
「(コロナ危機の)最悪のシナリオが菅政権、菅首相には見えない。そこが非常に大きな問題だ」 
菅氏はこのところ、菅首相への「助言」だとして盛んに「今必要なのは最悪の事態を想定した対応だ」と主張しており、東京新聞のインタビューでは「菅政権の危機管理能力は非常に疑問だ」と語っている。 
民主党政権の危機管理は素睛らしかったが、現政権はダメだと言いたいようだが、果たして自画自賛に値するような内容だったか。  
「菅氏は原発事故時、原子力災害対策法に定められ、対応に必要な原子力緊急事態宣言を出すのを遅らせておいてよく言う」
自民党思鎮がこう指摘するように、菅氏は宣言発出を「技術的事項」(政府事故調査委員会報告書)の細かい説明を求めて後回しにし、避難指示などの実施が遅滞する原因をつくった。
この点は国会事故調査委員会の報告書も明確にしている。  
「すぐに回答することが困難な事故発生原因を繰り返し尋ねたり、与野党党首会獄の出席を優先させた」 
菅氏は震災前年の平成22年10月の原子力総合防災訓練では、中部電力浜岡原発で原子炉冷却ができない状況が生じたという設定で、自ら宣言を出す訓練を行っていた。
にもかかわらず、後に国会でその件を追及されると「(訓練テーマは)詳しくは記憶していない」と答える始末だった。 
「泥縄」「混乱助長」 
それだけでなく、安全保障会議設置法で「諮らなければならない」と規定される「重大緊急事態」に該当するのを無視し、安保会議も開かなかった。 
首都圏で混乱を招いた東電の計画停電に関しても、当初は東電社長が発表する予定だったが、菅氏が「私が発表したい」と言い出したために調整に手間取り、周知は2時間も遅れて通勤・帰宅難民を増やした。 
首相官邸から福島第1原発への現場介入についても、4つの事故調はそれぞれ次のように批判している。 
「無用な混乱と事故がさらに発展するリスクを高めた可能性も否定できない。場当たり的で泥縄的な危機管理」(民間)  
「現場対応の重要な時間を無駄にしただけでなく、指揮命令系統の混乱を拡大させた」(国会)  
「現場を混乱させ、重要判断の機会を失し、判断を誤る結果を生むことにつながりかねず、弊害の方が大きい」(政府)  
「官邸の政府首脳から、現場実態からかけ離れた具体的な要求が直接、間接になされた。緊急事態対応の中で無用の混乱を助長させた」(東電) 
原発事故で政府の現地対策本部長を務めた池田元久経済産業副大臣(当時)の覚書も、菅氏が現地視察に訪れ、一般作業員の前で怒鳴り散らす姿をこう記している。  
「指導者の資質を考えざるを得なかった」 
きりがないが、こんなありさまだった菅(かん)氏に危機管埋を説かれた菅(すが)首相の胸中はいかばかりだったか。
美辞麗句が風評生む
また、菅氏は「最悪の事態」を想定したと繰り返し目慢しているが、その姿勢にも疑問が残る。  
「最悪の事態になったとき東日本はっぶれる」「10年、20年住めないのかということになる」 
菅氏が首相時代にこんな風評を垂れ流し、科学的根拠なく避難地域を広げたことが、いまなお残る福島産食品への偏見や不買、被災者の故郷喪失につなかってはいないか。 震災の年の5月初め、全村避難を強いられることになった福島県飯舘村を取材した際、菅野典雄村長(当時)は語っていた。  
「菅首相が『(避難区域設定は)やりすぎるぐらいやってちょうどいい』と言っていたと何人もから聞いた。それでどういうことが起きるかも考えてほしい」 
村の幹部も「結局は菅政権の保身だ。命は大切だという美辞麗句の下で、政府は村民に何十倍、何百倍のリスクを負わせている」と述べていた。 
コロナ対応でも、過度に国民の恐怖と不安があおられ、行き過ぎた自粛で多くの犠牲者が生まれている部分もあるだろう。
菅氏の主張は、政治家の責任回避にしか聞こえない。
(論説委員兼政治部編集委員)





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