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大機小機 キャッシュ・イズ・キング…日経新聞8月11日17面より

2011年08月11日 10時55分11秒 | 日記
パナソニックの創業者、松下幸之助さんの大切な教えの一つに「経営はお金だ」という考え方がある。一時的に投資などで減ることはあっても、最終的にお金がたまっていかない経営はどこかおかしいというものである。

こういうエピソードを聞いたことがある。決算を締めた翌日、幸之助さんが突然、大金庫がある財務部の部屋に入ってきて「私のカネを見せてくれ」と言った。

財務部長は金庫を開けて銀行預金や手形、現金などの有り高を冷や汗をかきながら説明したそうだ。翌期からは決算が締まると利益よりまず「お金」の残高の報告をしたという。

経営学のテキストなどでは 「経営とは将来キャッシュフロー(現金収支)の創出である」と定義されている。キャッシュフロー経営とは結局、幸之助さんのいう「お金が大事」の経営に他ならない。

2008年のりーマン・ショツク以降、企業経営の価値観は「キャツシュ・イズ・キング」に大きく変化してきた。お金を生み出す事業を育てるには現状を常に改革し、ビジネスモデルを効果あるものに変革していく必要がある。

その戦略の根本にあるのが、貸借対照表(バランスシート=BS)を軸にした経営である。経営革新は損益計算書(PL)からは生まれてこない。PLから生まれるのは改善にすぎず、抜本的に企業体質を変化させるには、トップが主導しBSの構造を変えていくことが不可欠である。

たとえば、棚卸し資産を劇的に削減しようと目指すとき、単に月末の在庫残高を少なくするだけでは無理である。

生産工程での最初のインプットから最終商品のアウトプットまで、全ての部門で合理化、効率化を進め、リードタイムを全体で縮める必要がある。

消費者に届くまでの流通在庫や物流への取り組みも忘れてはならない。そうした過程で抜本的な経営革新は生まれてくるものである。

ずっと営業や技術をやってきた人が海外の現地法人に経営者として出向する機会も増えている。グローバル経営での人材育成に欠かせないステップである。そうした経験をして帰国した人たちが一様に言うのは、やはりバランスシートが理解できないと経営はできないという点である。

いかなる事業、いかなる地域においても、経営理念とともにバランスシート中心の経営は、いつの時代も普遍の要諦である。     

(五月)

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